「きりひと讃歌」全集版で削除された60頁を完全収録! 「名鑑」には未収録 「伴俊作まかり通る」全話一挙掲載!

 〈マンガの神様〉手塚治虫は漫画家であり医師免許を持ち〈医者でなければ描けない〉と言われる医師ものの作品を描いています。「ブラック・ジャック」がその代表作。そんな医師ものの最高傑作と言われるのが今回刊行の「きりひと讃歌 オリジナル版」。

手塚治虫 『きりひと讃歌 オリジナル版』 立東舎(2024)

 1970年4月10日号から1971年12月25日号まで「ビッグコミック」に連載。雑誌掲載時のオリジナルのままを雑誌サイズで収録。かつて単行本化の際の大幅な構成変更やネーム変更も雑誌通りとし、各話の扉・2色刷りに加えカラー挿画も余さず掲載。全集版では削除された60ページも完全収録。連載時の勢いが体験できる決定版たる書籍化。豪華函入りの装丁。ストーリーは若く有望な医師・小山内桐人が人間が獣になってしまう奇病〈モンモウ病〉解明のために立ち向かうも波乱万丈な運命に翻弄されていく物語。山崎豊子著「白い巨塔」でも描かれたピラミッド型の医局制度・権力闘争と人間の根源的な差別問題を主軸とし、人の尊厳、愛情、そして希望を描いた手塚作品の中でも群を抜いてシリアス度が強烈でダークで深い読後感を残す大名作。最果タヒさんの寄稿文も素晴らしい。読み直して感じたのは黒手塚作品はやはり最高で現代でも変わらない人間のエゴという病も奥深く見据えて描いていることに深く感動。しかしなんて重い作品だ!

手塚治虫 『手塚治虫キャラクター名鑑』 玄光社(2024)

 「手塚治虫キャラクター名鑑」は作品に登場するキャラクターたちを俳優に見立て、ハリウッドの〈スターシステム〉に基づいた発想で、ある作品で主人公だったキャラが別の作品では敵役や脇役で登場することもあるため、そんな各キャラの劇中名場面を紹介。後頭部に蝋燭を立てた姿で知られるアセチレン・ランプ(どことなく山﨑努・似)が「アドルフに告ぐ」にも出てることやハム・エッグが「どろろ」にも出てるなんて情報も! そしてなんと名脇役〈ヒゲオヤジ〉(本名:伴俊作)の名を冠した唯一の作品でありこれまで単行本未収録で幻の作品と言われた「伴俊作まかり通る」を全話一挙掲載。ほか未公開の原稿やネームなど貴重な画稿をふんだんに収録しているのも特筆すべきポイント!