藤井 風が新曲“Feelin’ Go(o)d”を配信リリースした。藤井自身のコメントによれば、同楽曲は〈本当なら去年の夏とかにリリースされてたかもしれなかった曲〉だそうで、およそ1年の保存期間を経て世に放たれたことになる。

そんな“Feelin’ Go(o)d”を深く聴き解くため、ライターのノイ村に楽曲解説を依頼。再びタッグを組んだA.G.クックの特性、そして藤井 風の歌声が見事にマッチした新曲の魅力に迫ってもらった。 *Mikiki編集部

藤井 風 『Feelin’ Go(o)d』 HEHN/ユニバーサル(2024)

 

A.G.クックと作り上げた独特な心地よさ

7月26日、藤井 風がニューシングル“Feelin’ Go(o)d”をリリースした。8月24日(土)と25日(日)に神奈川・日産スタジアムにて開催される単独公演と同名のタイトルを冠した本楽曲は、英ロンドンを拠点とするA.G.クックをプロデューサーに迎えて制作されたものであり、両者のタッグは昨年の“花”以来となる。

今年3月にリリースされた“満ちてゆく”では、ゆっくりと丁寧に雄大なサウンドスケープを描いていたのに対して、“Feelin’ Go(o)d”は再生した瞬間から夢見心地な印象を想起させ、最後まで空中をゆったりと漂いながら、優しさと幸福感に包みこまれるような仕上がりになっているのが特徴的だ。

リリックにおいても、〈もう何も語るこた無いのさ/感じたいだけ〉という言葉が示すように、愛というテーマに正面から向き合った“満ちてゆく”を経て、ただ愛だけを感じて漠然と世界を漂う感覚をそのまま描いているようにも感じられる。音と言葉の両面において、ゆったりとした心地よさ、まさに〈Feelin’ Good〉(あるいは超越的な感覚≒〈Feelin’ God〉)なムードが追求されているというわけだ。

そうした浮遊感や心地よい手触りを実現するにあたって、プロデューサーのA.G.クックが藤井に与えた影響は少なくないだろう。2024年を代表するアルバムとなり、アメリカ大統領選に影響を与えていることでも話題のチャーリー・XCX『BRAT』ではメインプロデューサーを務め、宇多田ヒカルのオールタイムベスト『SCIENCE FICTION』収録の“Addicted To You”と“光”の再録版にも参加、自身も約4年ぶりとなるソロアルバム『Britpop』を5月にリリースするなど多方面で活躍中のA.G.クックだが、その確かな技術は“Feelin’ Go(o)d”にもしっかりと反映されているように感じられる。

楽曲の細部に注目すると、独特の質感を持つリズムトラックや、キラキラと輝くように鳴り響く上モノのメロディ、美しいレイヤーを紡ぎ上げるシンセサイザーに細かなエフェクトなど、トラックを構成する一つひとつの要素は、実は機械的な印象を与えるものが多いということに気付く。だが、そうした要素を巧みにミックスし、音像が整えられることによって、リズムはまるで心臓の鼓動のように、シンセサイザーは天へと向かっていく感覚を表現しているかのように感じられるのだ。