Kit Downes, Norma Winstone
©Elmar Petzold / ECM Records

英国を代表するヴォーカリスト6年ぶりの最新作は、ECM次世代を担うピアニストとのデュオ作!

 今回、ピアニストのキット・ダウンズとのデュエットでECMから新作『Outpost Of Dreams』を発表するノーマ・ウィンストンは、イギリスのジャズ・シンガー兼作詞家として紹介されるが、ひとくちに〈ジャズ〉と言っても、彼女はもともとアヴァンギャルドな要素がかなり強いスタイルを持っている。初リーダー作の『Edge Of Time』(1972年)ではすでに、ホーン主体のラージ・アンサンブルを従えて、歌はもちろん、管楽器のようなスキャットのソロを取ったり、アブストラクトなヴォイス・エフェクトを取り入れたりして、自身の声を素材にした様々な表現を試みている。そして、このアルバムに収録された“Songs For A Child”の、ニュアンスに富んだ微弱な声やファルセットなどを駆使したきわめて繊細なアプローチは、『Outpost Of Dreams』に直接通じるものが感じられる。

NORMA WINSTONE, KIT DOWNES 『Outpost Of Dreams』 ECM/ユニバーサル(2024)

 ウィンストンはその後、夫でもあるテイラーとの『‎Like Song, Like Weather』(1999年)や、恐ろしく鋭敏な耳の持ち主のフレッド・ハーシュとの『Songs & Lullabies』(2003年)など、機会あるごとにヴォイスとピアノによるきわめて繊細な世界を深めてきた。近年のデュオ活動の相手は主にニッキ・アイルズが務めていたが、アイルズの都合がつかなかった時に代役を務めたのがダウンズだったという。幼時からチェロやピアノを習い、教会で歌うようになってからオルガンに興味を持ち、メシアンが大好きというダウンズは、『Obsidian』(2018年)や『Dreamlife Of Debris』(2019年)といったECM作品で、オルガンやピアノによる微妙な陰影に富む音楽創りを行ってきた。そんなウィンストンとダウンズが組んだこの『Outpost Of Dreams』は、互いのフレーズのやり取りから、ダイナミクスのコントロールに至るまで、微に入り細に入り息の合った演奏が堪能できる作品となっている。

 


LIVE INFORMATION
ノーマ・ウィンストン&キット・ダウンズ日本ツアー2024

2024年11月23日(土)東京・渋谷 美竹サロン
開場/開演:19:00/19:30

2024年11月24日(日)東京・渋谷 美竹サロン
開場/開演:19:00/19:30

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