©Genevieve Stevenson

フェアーグラウンド・アトラクションが復活! 松田“CHABE”岳二が魅力を語る!

 今年、34年ぶりに再結成したスコットランドのバンド、フェアーグラウンド・アトラクション。88年にたった1枚のアルバム『The First Of A Million Kisses(邦題:ファースト・キッス)』を発表して解散したが、ルーツ・ミュージックを取り入れたアコースティックな彼らの音楽は、時を超えて愛され続けてきた。そんな彼らが7月に来日ツアーを行い(全公演ソールドアウト!)、このたびニュー・アルバム『Beautiful Happening』を発表。彼らの不朽な魅力とは何なのか。10代の頃から大ファンだというCHABEこと松田岳二に話を訊いた。

FAIRGROUND ATTRACTION 『Beautiful Happening』 Raresong/ソニー(2024)

 

――CHABEさんは、どんなふうにフェアーグラウンド・アトラクションの音楽と出会ったのでしょうか。

「僕は88年に広島から上京して、都内の大学に通ってたんですけど、学校の帰りにはいつもタワーレコードに寄ってたんです。それである日、『ファースト・キッス』が入荷されていてジャケ買いしたんですよ。家で聴いて、いままで聴いてきた音楽とは全然違うと思いました。当時18歳だった僕には、すごくお洒落な音楽に思えたんです」

――88年といえばMTVカルチャー全盛期。生音だけでジャズやスキッフルといったルーツ・ミュージックの要素を含む音楽を聴かせるフェアーグラウンド・アトラクションは異色の存在でした。

「その頃、スカとかレゲエとか生音の音楽を聴きはじめていたんですけど、寝る前に聴くのは『ファースト・キッス』でした。毛布みたいに包み込んでくれる音楽なので、勝手に〈ブランケット・ミュージック〉と呼んでいました。アルバムに針を落とした瞬間の雰囲気が何とも言えないんですよ」

――〈ブランケット・ミュージック〉ですか。ぴったりの言葉ですね。

「ヴォーカルのエディ・リーダーの声が子守唄みたいに優しいんです。もちろん、ギタリストのマーク・ネヴィンが書く曲も好きで、バンドが解散した後も、エディのソロ作品と同様、マークが関わった曲も追いかけていました」

――89年に川崎のCLUB CITTA’で開催された初来日ライヴにも行かれたとか。

「はい。お客さんはお洒落な大人の方が多かったですね。1曲目にアルバムの最後のほうの曲“Allelujah”をやって、〈この曲からなんだ!〉と思ってドキドキしながら聴きました。2005年にエディが〈フジロック〉に出演したんですけど、次に出るのが僕がサポートしていたバンドだったんです。それで早めに楽屋に行って、エディに『ファースト・キッス』のレコードにサインしてもらったんですよ。そのとき、彼女から〈今日のライヴで何を聴きたい?〉って訊かれたんです。迷った挙句、〈初めて生で聴いた曲だから〉と“Allelujah”を挙げたら、そのあとのライヴでやってくれたんです!」

――うわあ、それは嬉しいですね。その後、エディはCHABEさんのバンド、CUBISMO GRAFICO FIVEの“SWEET BLINDNESS”(2008年)に参加されました。

「原曲はローラ・ニーロなんですけど、エディが歌ってくれるならこの曲にしようと最初から決めてました。歌入れ自体はすぐに終わったんですが、エディから〈サケを飲みながらやろうよ〉って言われ、お酒を買ってきたり、〈この曲知ってる?〉ってギターを弾いて歌ってくれたり、すごく楽しいレコーディングでした」

――同じくCHABEさんが率いていたバンド、LEARNERSの“Rhode Island Is Famous For You”(2015年)にもエディはヴォーカルで参加していますね。

「その曲はブロッサム・ディアリーのカヴァー。僕らのヴァージョンは『ファースト・キッス』を好きな人が聴いても気に入ってもらえるサウンドに仕上がったんじゃないかなと思います」

――新作『Beautiful Happening』を聴いて、どんな感想を持たれました?

「肩の力が入っていなくて、〈また4人で集まったんだから自分たちが好きな音楽をやろう〉っていう彼らの気持ちが伝わってきましたね。年齢を重ねてきたからこその味わいがあるし、ウクレレの音が耳に残る“Learning To Swim”みたいな可愛い曲も入っていて、とてもピュアなセカンド・アルバムだと思いました」

――ジャズ色が控えめになり、カントリーやフォークといったアメリカーナ色が濃くなった気もしました。

「そうですね。最近のアメリカの女性シンガーってジャジーだったり、フォーキーだったり、アコースティックなサウンドで聴かせる人が増えているじゃないですか。そういう音楽と重なるところもある気がしますね」

――当然、CHABEさんは先日の再結成ツアーには行かれたんですよね。

「5公演中4公演に行きました。初日の渋谷CLUB QUATTROでは、1曲目のイントロが始まった途端にお客さんが泣いて、それを見たエディが泣いたんです。名古屋公演ではマークが泣いてましたね。観客もバンドも感極まって泣く。もちろん、僕も号泣です(笑)。最近、僕の周りの若いDJで、彼らを後追いで好きになる人が多いんです。それは彼らの音楽がいつ聴いても優しいからだと思いますね。いつも側にいてくれる――そんな音楽なんです」

フェアーグラウンド・アトラクションの作品。
左から、88年作『The First Of A Million Kisses』、編集盤『Ay Fond Kiss』(共にRCA)

左から、LEARNERSの2016年作『Learners』(KiliKiliVilla)、エディ・リーダーの2018年作『Cavalier』(Reveal)

 


松田“CHABE”岳二
70年生まれ、広島県出身のミュージシャン。ソロ・プロジェクトのCUBISMO GRAFICO、バンド・スタイルのCUBISMO GRAFICO FIVE、堀江博久とのニール&イライザ、DJ、リミキサーとして活躍中。また、FRONTIER BACKYARD、LOW IQ 01のライヴ・バンドMASTERLOWなどのサポートも務める。2001年には、映画「ウォーターボーイズ」の音楽を手掛け、日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。昼間は原宿でkit galleryを主宰。夜は渋谷、下北沢などのクラブでのDJで現場を大切にした活動を展開。同時にさまざまなアーティストに楽曲を提供している。