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Miyako

人の耳と心に届く歌詞の伝え方

――2枚組の今作を通して聴いて、千秋さん自身はどんな感想を持ちました?

「音楽理論をわからないまま作曲していて、何となくギターを弾いて作っていたから、ほぼ全部同じコード進行なんですよ。2017年頃からはいろんなコードを使っているけど、昔はびっくりするくらい同じコード進行だから、そこは〈カワイイな、俺〉と思いました(笑)」

――とはいえ、曲調はバラエティに富んでいるし、ライブのセットリストのようなダイナミックな流れを作品から感じます。

「僕はヴィジュアル系は聴いてたけど、あまりヘヴィな音楽は聴いてこなくて。海外のメタル/ニューメタルを聴いてないんですよ。お姉ちゃんの影響でJ-POPを中心に聴いていたから、その影響も大きいのかなと」

――改めて、DEZERTが結成当時にやりたかった音楽は?

「当時のシーンでやってなさそうな曲……かといって、新しいものを突き詰めすぎたらお客さんが付いてこられないし、わかりやすさも必要でしたね。曲はめっちゃ緻密に考えていた気がします。

ヴィジュアル系って、ダークなイメージがあると思うけど、その当時ダークなバンドはアンダーグラウンドと呼ばれていたんですよ。目の周りを黒くしていたら、楽屋で笑われるみたいな。でもダーク系はいなかったから、逆にそこは空いてるなと。それでダークなものをやったら、ハマったという」

――それで初期はダークでヘヴィな楽曲が多いんですね。

「そうですね。当時のライブはMCもなく、一切喋らなくて……陽気な兄ちゃんだってことがバレるから(笑)」

――それから音楽に対する意識に変化も?

「いくつかターニングポイントはありますね。最初の4年は変わらず、1stアルバム(2014年作『「タイトルなし」』)を作ったときから悩み始めました。中指を立てることでお客さんが付いてきたわけですよ。でも僕的には社会に不満はなくて……もう吐き出すことがなかったから。かといって、ウソはつきたくない。恋愛ものを歌うことも微妙やったし……セルフプロデュースに苦労したのが2015年ぐらいかな」

――そこから見えてきたものは?

「歌詞の伝え方ですね。とある師匠から〈汚い言葉でごまかそうとしている〉、〈何を言っているのかわからない〉と言われて。どうしたらライブの爆音の中で人の耳に届き、心まで届くのかなと。何を歌っているのか、それをわかってもらうというゾーンに着地しました。まずはそこから始めようと」

――それで明るめの開けた曲調が増えてきた?

「それはあるかもしれないですね。3rdアルバム(2018年作『TODAY』)ぐらいからそうなりました。それまでは言葉選びを含めて、〈DEZERTっぽさとは何か?〉をすごく考えていたから」

 

再録しても本質は変わってない

――今回は全24曲中12曲、つまり半分は再録曲ですよね?

「昔の音源は前のギタリストが弾いてなくて、俺とSacchan(ベース)が弾いていたんですよ。別に録り直さなくてもよかったけど、せっかくだからやろうと。もともと1枚組にする予定だったのを僕らが2枚組にしたいと言ったんですよね。ベストはレコード会社としてはありがたいと思うんですよ、労力がかからないから。でもこれだけ録り直したら、2枚アルバムを作るのと同じ労力でした(笑)。ドラムレックだけはスムーズでしたね。でもボーカルとギターレックには時間がかかりました」

――ライブでやり込んだ曲たちを再録するのは簡単そうに思えますが、実際はそうではなかったと?

「昔の曲には昔の曲の良さがあるんですよ、そこを全く消す必要はないから。奥底に眠る昔の俺を引き出す作業にめっちゃ時間がかかりました。ギターのアレンジもそうですね。昔の良さを再確認する時間でもあったから。ここは尖っているな、このDEZERTらしさは色濃く出したいとか。細かな歌い回しを調整する作業もありましたからね」

――千秋さんが昔の曲でいいなと思うポイントは?

「女々しさですね。自分は昔の歌い方は好きじゃないけど、それを好きになってライブに来てくれた人もいるから、わざわざ消す必要はないかなと。だから、半分くらいは今の歌い方ではなく、昔の歌い方を思い出しました。それに時間がかかったんですよ」

――ボーカルは昔と今の美点をうまく混ぜて?

「はい、そのバランスは考えました。過去の作品に触れると、昔はここが良かったとか悪かったとか、いろんなベクトルを整理することができたから、メンバーみんな勉強になったと思います。再録してみて、本質は変わってない、という安心感もありました」

――再録曲は、原曲が好きだった人を置いていかないアレンジになってますね。

「実は昔の曲の再録はすべてを録り直したわけじゃないんですよ。昔の歌を残しているパートもあって……わからないですよね? 遊び心で昔のテイクも残しているから。そういう部分も楽しんでもらえたらなと。

あと、“遮光事実”は改めて曲のポテンシャルの高さを感じました。いろんな音楽をやってきたけど、ああいう曲を初期に出してるから、基本変わってないやん!って、安心感があったんですよ。昔から4つ打ちが好きで、“遮光事実”は自然と出てきたんです。改めて聴くと、アコースティックでも映える曲をわざわざヘヴィなサウンドに乗せているんですよね。そこにバンドの意思を感じて、歌っていてエモい気持ちになりました」