
調子が悪くても憂鬱でも心臓は動いている
――あと、“心臓に吠える”、“私の詩”と2曲の新曲が収録されています。まず“心臓に吠える”は今作の中でもヘヴィな仕上がりですが、これはライブ映えを意識して?
「その通りですね、かなり意識しました。ライブでやったときの肌感として簡潔に終わりたいから、アレンジに時間がかかりましたね」
――後半にはシャウト風に歌詞を歌うパートも出てきますね。
「僕がシャウトする理由は……メタルでもいろんなシャウトがあるじゃないですか。ダミ声で歌うところは歌詞の内容とリンクしてますからね。
改めて初期の音源を聴いても、シャウトはまったく同じ声なんですよね。DEZERTの過去と今を繋ぐトンネルが僕のダミ声だと思っているんですよ。僕はダミ声でも何を言っているのか、ギリわかる歌い方を心がけてますからね」
――〈眩しいステージ〉という歌詞の描写もライブの絵が浮かんできますが、武道館で伝えたいメッセージがこの曲に込められているのかなと。
「今回の新曲は久しぶりに自分に対して歌いました。2018年以降、自分と他人の架け橋として曲を出してきたけど、結構パーソナルなことを放り出す、という感じで2曲作りました。この4年間で橋を架けてきたから、ここでは自分の思いを吐き出そうと」
――対・自分にベクトルが向いた理由は?
「武道館でライブをやることに最後まで反対したのが僕なんです。まだできる力はないだろうと。でも覚悟を決める、次に進むという意味で、自分と向き合おうと。客観的に自分を見て、自分に何を言えばいいのか。自己暗示を含めた曲を作ろうと。改めて自分を受け入れるために曲を作りました。それにお客さんが共感してくれたらいいなと」
――この曲で受け入れた自分とは?
「1行目(〈ほら生きてみましょうか〉)が僕的にはしっくり来るんですよ。憂鬱だけど、それに対して不満はないから、今日も頑張ろうと思える。調子が悪いときにも一度憂鬱を受け入れて、休もうが何をしようが……心臓は動いてますからね」
――歌詞の前半では〈ああ 求めちゃいけない 何も重ねたりしない〉と歌詞にありますが、後半では〈似た鼓動が重なって〉という歌詞があり、心に葛藤を抱えながらも前に進もうとするメッセージを感じます。
「それしかないですよね。10代の頃に沸き上がるパッションのような感情はもう歌えないから」
――リアルで説得力があって、良い歌詞だと思います。
DEZERT史上一番の歌モノ
――そして、“私の詩”も名曲だなと。アコギ、ピアノ、ストリングスを入れてますが、余計なものを削ぎ落としたバラードです。
「元ネタはずっとあったんですよ。僕が歌いたいことリストの中の3つ目に“私の詩”があったんです。自分の中で完結編みたいな曲だったから、時間がかかりましたね。
曲調とアレンジはDEZERT史上一番の歌モノにしようと。外部からアイデアを取り入れたから、アレンジも結構変わりました」
――この曲における千秋さんの歌声も素晴らしいです!
「ありがとうございます。歌は練習しました(笑)。キー的には歌いやすいんですけど、難しくて。
“ミザリィレインボウ”は技術がなかったから、まっすぐ歌ったんですよ。でもあれから3年が経ち、こういう日本語を使ったら、こういう風に聴こえるとか……それが体に染み込んできた中でカーブやスライダーを投げてみようと。声を歪ませたり、歌声も変えようと意識しました」
――繊細な感情のヒダまで感じられる歌声です。武道館で披露した際にスマホのライトが灯る景色が脳裏に浮かびますね。
「おっ! メモらせてもらいます(笑)。歌うのが楽しみですね」
――〈貴方が生きるから私は生まれてきたんだよ/残酷な世界で希望が壊れても/この場所があるから/今日も生きてます〉の歌詞は、DEZERTの音楽やライブが聴き手にとって光溢れる場所になればいい、という解釈もできます。
「結果そうなればいいなと。これは自分に向けたラブレターという気持ちで歌いましたからね。だけど、そういう風に感じてくれたら音楽冥利に尽きるというか、一番嬉しいことですね。コロナ禍が終わって、曝け出しているバンドではあるから。
その着地点として、武道館では素晴らしい音楽と演出と場所が用意されているので、今からどう表現しようか、楽しみではありますね」