
〈手放す〉ことで得られた変化と進化
――ということは2人の作業の時間も増えていると思うのですが、互いの変化を感じる部分はありました? 例えば根津さんの歌詞はいかがでしょう?
井上「“violet”の歌詞の書き方は今までと違う気がします。あと“liquid”や“siren”などは、良い意味で圧をかけすぎない、入れ込み過ぎないライトな聴き心地をテーマにしたので、短い言葉やリフレインでまとめたり、ボーカルの処理も生々しくしすぎずぼかしたいと伝えていたんです。その上で、抽象的だけど芯の通った歌詞にしてくれた。
特に“liquid”は持ち味を活かしながら新しいものが書けている気がしますね。数行の歌詞なんですけど気に入っています」
根津「井上くんが良いと言ってくれた曲は気負わずに書けたと思います。トラックを聴いて最初に出てきたイメージでハマるものが出せましたね。良い意味で手放すのが上手くなってきた感覚があって」
井上「手放す感覚、わかるよ」
根津「これまではガチガチに固めていたんです。セカンドは特に意固地になっていた。それは自分を守るためだったと思うんですけど、自分の世界で書き上げなきゃ、自分自身を強固にしなきゃと思っていて、苦しかったし、時間が掛かったんです。でも今回は肩の力を抜いてできた。
歌詞を提供する経験も活きているかもしれません。大比良瑞希ちゃんに歌詞を書いたことが楽しかったんですよね。自分のメロディーに歌詞をつけるよりスムーズに書けたり、広がっていく感覚があった。
そういったことを経て、今回は久々に楽しかったですね。制作って苦しいものなんですけど、今回は書いていく楽しさや自由さがあって。
井上くんは、もちろんトラックメイクに挑戦したことが大きい出来事だと思うんですけど、MIDIをやるようになってスピードが格段に上がりましたね。今までは200テイクとか録り直していることがザラにあって、それに引いちゃうこともあって(笑)。もちろん否定しているわけじゃないんですけど、スピードアップしたのは成長だと思います」
井上「それは僕が手放せるようになったことの一つかも。今までは自分がプロデューサーで、最後の出口でクオリティーコントロールする意識が強く、視野が狭くなっていて。結果、作品のクオリティーが上がったわけでもなかったかなと。
Gimくんとのコライトを経験して、他者と価値観を共存させて作る良さを知ることができたのも大きいです。昔は音色も含め全部いじられたくなかったけど、今は曲が良くなればOKというか。
まあ、MIDIに関しては力技も多いんですけど。クオンタイズは信用できなくて、ノートを一個ずつズラしたり、Excelの計算を電卓で計算し直すおじいちゃんのようなことをしていました(笑)。少しずつ進歩しています」
ライフワークとして音楽を積み上げていく正念場
――リリースツアーのファイナルは恵比寿LIQUIDROOMで行われます。当初の目標の一つでもあった場所でのライブはコロナ禍の直前に成功させていますが、現在の心境はその頃と違いますか?
井上「今の方が地力、本質を試されているというか。前回は目標と言っていたことや、世間的には新人だったのもあり、チケットはソールドアウトしたけど、実力が追いついていたかはわかりません。それに、そこから規模を大きくしていく活動をしなかったから、それはなぜなのか、答えを自分たちで出さなきゃいけない。
あと5年か10年か短く走って辞めるわけではなく、ライフワークとして音楽を積み上げていく中で2回目のLIQUIDROOM公演をどうやるのか、いろんな人が見ていると思っています。LIQUIDROOMに戻ってくる意味を探してそれを見せなきゃいけない。今の方が背負うものは大きいかも」
根津「今回のツアーはめちゃくちゃ緊張しています(笑)。アルバムのリリースが久々だし、新曲もいっぱいあるから。それにみんなアルバムを聴いて来てくれるわけじゃないですか。だからこそ期待を超えたいんですよね」
井上「サード(2021年作『seek』)のツアーとそのファイナルがすごく美しいものだったんです。もうこれ以上は出ません、くらいの。だからこそあれを超える意義のある内容の濃いものをやりたい、というかやらなきゃいけない。
アルバムのツアーは作品とその世界観をライブに落とし込んでどう具現化するか、総合力が試される場だと思います。前回のLIQUIDROOM公演から4年半ぶり、リリースツアーは3年ぶり、その間にどれだけ積み上げて内容を充実させられたか。やっぱり怖いですね、もちろん楽しみだけど。昔の方が呑気だったな(笑)」
根津「LIQUIDROOMはいつまで経っても私にとってすごく特別です。好きなアーティストの公演を観に行ったし、自分が立てるなんて思っていなかった場所なんですね。楽しみな気持ちもありつつ、最後の曲で泣いちゃうイメージが離れなくて、このままだと泣いて歌えなくなりそう」
井上「〈絶対ステージで泣きたくない〉って昔から言ってるよね」
根津「泣くとステージを私物化してしまう気がして。そうなったら嫌だから泣きたくない。でも最近は堪えられなくなってきてる(笑)」
井上「加齢と共にね(笑)」
根津「でも楽しみかな。ツアーを終えた先、みんなの力を借りて、次に何をやりたいかが掴めるといいな」

RELEASE INFORMATION
■ストリーミング&ダウンロード
リリース日:2024年9月11日(水)
配信リンク:https://linkco.re/6tZZsECg
■CD
リリース日:2024年10月9日(水)
品番:NWSC-003
価格:3,080円(税込)
TRACKLIST
1. violet
2. screen
3. summer magic feat. Peggy Doll
4. siren
5. escape
6. liquid
7. fruit
8. daybreak
9. metro
10. keep (outro)
LIVE INFORMATION
“liquid city” release tour 2024
2024年10月7日(月)大阪・心斎橋 Music Club JANUS
2024年10月17日(木)愛知・名古屋 今池 Tokuzo
2024年10月20日(日)福岡・天神大名 ROOMS
2024年10月24日(木)東京・恵比寿 LIQUIDROOM
■チケット一般発売中
e+:https://eplus.jp/showmore/
ローチケ:https://l-tike.com/showmore/
ぴあ:https://w.pia.jp/t/showmore-t/
PROFILE: showmore
ボーカリスト・根津まなみとキーボーディスト/プロデューサー・井上惇志の2人によるユニット。バンド時代を経て2017年9月より現体制で再始動し、直後にリリースした楽曲“circus”がノンプロモーションにもかかわらず話題となる。2018年5月に1stアルバム『overnight』、2019年12月に2ndアルバム『too close to know』、2021年10月に3rdアルバム『seek』をリリース。独自の詩世界と歌唱、ジャズやR&Bをべースに様々な音楽を取り込んで表現する唯一無二のポップネスで独自の立ち位置を確立する。
