チャーリーxcxは女性アーティストとしてすごくインスパイアしてくれる
――今夏〈Boiler Room & Charli xcx presents: PARTYGIRL Ibiza〉に出演したことも大きな出来事だったと思います。そしてチャーリーxcx(ジョージ・ダニエルの婚約者でもある)のアルバム『BRAT』は今夏を象徴する作品となりました。個人的に『BRAT』は人々が何かに夢中になることを全面的に肯定する作品だと感じましたが、あなたはどのような作品として受け取りましたか? また、『Dreamstate』と『BRAT』を比較するとしたらあなたはどのように説明しますか?
「面白い質問ですね。チャーリーはパワフルで先見の明ある素晴らしいアーティストです。それに女性アーティストとしてもすごくインスパイアしてくれる存在。彼女が世界にもたらしてきたものの深さや大きさにようやく世間が気づき始めたんだと思う。
イビサのパーティーも、(The xxの)ロミーだったりシャイガールだったりたくさんの女性アーティストが来ていて、女性たちの持つエネルギーを象徴していたんじゃないかな。もちろんそういった変化は世界にはまだまだ足りないと思うけどね。
『BRAT』は私たちがどこにいるのか、音楽が人々に何ができるのかを示す意味でも明確なヴィジョンを持っていると思います。それに音響的には彼女のこれまでの作品の中で最も共感していて。彼女が個人的に関わってきたであろう、クラブやレイヴ、エレクトロニックミュージックのシーンからの影響を感じるんです。個人的にはこのアルバムのそういった多くのサウンドプロダクション、そして正直さやテーマが好き。みんなそうだと思うけどね(笑)。本当にクール。正直であろうとしている、という意味では『Dreamstate』にも近い面があると思います」
――今年5月に行われた〈BONOBO PRESENTS OUTLIER TOKYO〉でのDJは朝に向かう時間帯(午前3時スタート)をエネルギッシュに盛り上げていましたね。DJでのパフォーマンス、あるいはライブでのパフォーマンスはスタジオワークにどのように作用していますか?
「良い質問! というのも自分は『Dreamstate』を作るまでライブやDJのことと曲作りを離して考えていたんです。なぜならライブでプレイするためだけにアルバムを作っているわけではないから。それにライブのことばかり考えるとBPM 140の曲ばかりできてしまうからね(笑)。
でも今回のアルバムのタイトルトラックでは作っているときに初めてライブのことをイメージしました。制作中にアシッドのような、ノイズのようなものからトランス感があって、ライブでプレイしている姿が思い浮かんで。ただ、曲そのものや曲の流れを優先している点では変わっていないです」
――ライブではAbleton Live(DAWソフト)を使用し、制作ではLogic(DAWソフト)、ラップトップ、SH-09(Rolandのシンセサイザー)、そしてDark Time(16ステップアナログシーケンサー)のみを使用していると2022年のインタビューでは答えていました。今作で機材に変化はありましたか?
「ほんの少しだけ。私は機材が音楽を作るとは思ってないんです。重要なのはそれを使って何をするか。だからそれほど多くのものが必要だとは感じていないんだけど、PRO-1やProphetなどを使ったりもしました。あといくつかソフトシンセを使うこともあったけど、そのときは必ずアナログシンセも使うようにしています。ライブでAbletonを使ったりDAWにLogicを使っている点は変わっていないです。でも、スタジオで様々な人とコラボするときは当然新しいものが入ってくる。その変化はいつも素敵です」
――アルバムリリース後もさまざまな国、会場でのライブの予定があります。どのようなステージになりそうですか?
「(取材時点で)パフォーマンスの最後の仕上げをしているところなんです。これまでと地続きのものになると思うけど......。まずステージが始まると『Dreamstate』に歓迎されるような感じ。つまり自分が知っていることや自分をこれまで圧迫していたものを手放さなければいけないってことです。そして私たちは共に旅に出ます。そこでは陶酔感と大きな勇敢さが光のように舞っていて、感情的な浮き沈みがあり、自分自身の脆く弱い部分に触れることになる......。全体としては上がって、一瞬下がって、再び上がっていくようなものになると思います」
――前回はDJでのパフォーマンスだったので次の来日公演はライブセットが観れることを祈っています。
「私もそれを願っています。本当に! 前回日本に行ったときは2日間しかいられなかったからとても悲しくて。今ツアーでもっと他の場所に行くにはどうしたらいいか考えているところなんです。それに『Dreamstate』はライブでピークに達する作品な気がしています」
RELEASE INFORMATION
リリース日:2024年10月18日(金)
品番:POCS-23052
価格:2,860円(税込)
日本盤はボーナストラック(1曲)、解説、歌詞・対訳付
配信リンク:https://lnkfi.re/dolkXnzT
TRACKLIST
1. Dark Angel
2. Dreamstate
3. Love You Got
4. Higher
5. Rise
6. Ballad (In The End)
7. Sunshine
8. Air
9. Time To
10. Trust & Desire
11. Time To (demo) *日本盤ボーナストラック
PROFILE: KELLY LEE OWENS
ケリー・リー・オーウェンスは看護師からミュージシャンに転身した英ウェールズ出身のプロデューサー/シンガー。2017年にドリーミーで繊細なボーカルとエレクトロを融合させたデビュー作『Kelly Lee Owens』をリリース。その後、セイント・ヴィンセント、マウント・キンビーのリミックスを手掛け、ビョークとジョン・ホプキンスの作品へ参加。2020年には2ndアルバム『Inner Song』をリリース。1stアルバム、2ndアルバム、共にピッチフォーク、ガーディアン、ローリング・ストーンから高い評価を受け、NMEは『Inner Song』を〈完璧なアレンジ、深夜に内省するために作られたエモーショナルでありながら陶酔的なコレクションで、ケリー・リー・オーウェンスは今年最も美しいレコードのひとつを作った〉と評価した。2022年には3rdアルバム『LP8』をリリース。2023年にはデペッシュ・モードのUS/メキシコ・ツアーをサポート、更にFIFA女子ワールドカップ2023のテーマ曲のひとつを作曲/プロデュースしている。2024年5月にはボノボが主宰するクラブイベント〈OUTLIER〉にて初来日を果たす。The 1975のジョージ・ダニエルがダーティ・ヒットと共に立ち上げたエレクトロミュージックにフォーカスした新レーベル、dh2と契約し、新アルバム『Dreamstate』を2024年10月にリリースする。