SuchmosのYONCEが所属、という前置きも不要になってきたバンドHedigan’s。彼らが2024年11月にリリースし、高い評価を得た1stアルバム『Chance』がCD化された。結成後初のライブになった〈EPOCHS 〜Music & Art Collective〜〉での記念すべき演奏をディスク2に収め、タワレコメンにも選出されている。

そのリリースにあわせて、河西“YONCE”洋介(ボーカル/ギター)、栗田将治(ギター)、栗田祐輔(キーボード)、大内岳(ドラムス)の4人に話を聞いた(ベースの本村拓磨は体調不良のため欠席)。傑作『Chance』について、そして2025年1月25日から始まったリリースツアーについて多角的に、じっくりと語ってもらった。

Hedigan’s 『Chance』 F.C.L.S.(2024)

 

Hedigan’sで集まる日は休日に近い

――みなさんはほかのバンドやプロジェクトでも活動されていますが、それらと比較して相対的に見えてくるHedigan’sのおもしろさや変さってありますか?

河西“YONCE”洋介「音楽への取り組みに関して大きな差はないと思います。ただ、よりリラックスした集まりだと思いますね。ストイックに没頭してぶっ通しでやるより、茶飲み話をしながら制作するとか」

大内岳「休憩の長さはトップクラス(笑)」

YONCE「それが、力が入りすぎていないものづくりに反映されている気がしますね」

大内「本番と練習の区分けがないというか。戦略を立てるより遊びの中でアイデアをぶつけあって、おもしろいものを組み立ていく。Hedigan’sで集まる日は休日に近い(笑)。今日を乗り切れば明日はHedigan’sだ、みたいな。あと、埼玉県本庄のStudio Digを拠点に活動していることが特色で、足を伸ばして身近すぎない現場に行くことが気持ちの切り替えとしても好きです」

栗田祐輔「コンセプトやゴールを設定していないのは大きいね。どこまでが悪ふざけで、どこからが作品なのか境目がないというか。〈わちゃわちゃやっているうちにおもしろいものができたらいい。できなかったらしょうがないね〉みたいな。それで今のところうまくいってるのがすごいと思います。よくこのやり方でまとまった作品になっているなって(笑)」

栗田将治「俺と祐輔はHedigan’s以外にバンドを一個しか組んだことがないので、そのGliderとのちがいになるんですけど、Gliderは目的を持たないと何も始まらないんですね」

祐輔「お題が必要なんだよね」

将治「でもHedigan’sは、〈何も曲を持ってきてないけど、どうしよう?〉という感じでもなんとかなる」

大内「お題を各々が持ってくるからね」

祐輔「お茶を飲んで会話したりタバコを吸ったりしているところから、シームレスに作品作りになっていく。机に向かっている感じがしないというか」

YONCE「見えない心の姿勢に形があるとしたら、そういうことだよね。それぞれがおもちゃを持ってきて〈今日はこれをやりたい〉とか、やりたいことがなくてもタバコを吸って話しているうちに〈そういえば、これをやりたかったんだ!〉って思い出すとか」

将治「Gliderは2人でキャッチボールを何回もして曲を仕上げるけど、Hedigan’sはデモを作る感じでそのまま納品できちゃう」

祐輔「Hedigan’sはずっとコミュニケーションをしているんです。しかも互いの利害とかを考慮したものじゃなくて、適当で快適なコミュニケーションや他愛のないことをしていて苦じゃない5人なんですよ。それが、プレッシャーや何かに追われることなくできている理由かな。遊んでいるだけなんですよね」

大内「ついにエンジニアのテリー(伊藤広起)がコントロールルームから出てきて、〈今日はやらないの……?〉と言われた日があったね(笑)」

 

ザ・クラッシュにザ・フー、偉大なる先達にお参り

――Hedigan’sのコミュニケーションについて気になっていたのですが、音楽の話や聴いているものの共有はするんですか?

将治「車で最近聴いているものやおすすめを流したり、スタジオのロビーでしゃべりながらYouTubeを見たりしますね」

YONCE「話題の一個ぐらいの感じでね。これをやりたいんだ!って強固に提案することはなくて。意図的じゃなく、会話に出てくるものが自然とグラデーションをもって反映されていくと思います」

大内「アレンジが決まらない時、ちょっと一回ザ・クラッシュを聴いてみてもいい?と助けを求めることはありますね」

YONCE「お寺や神社みたいに参拝する時もあるね」

大内「偉大なる先達たちにお参りしてね。一旦ザ・フーを聴いて落ち着こうか、みたいな」

祐輔「音楽の話もするけど、すぐ逸れて関係ない話になるんですよ。で、雑談になっても、曲作りはしなきゃいけないから音楽の話に戻るんですけど、寄り道していたところの変な雑草やゴミが一緒にくっついてきて(笑)。だから、ただの会話が音楽に反映されるのがいいなと思います」

YONCE「そうだね。ライブ映像を見て〈キース・ムーンの動きってやばい!〉という話からただのおもしろい話に逸れて、ひとしきり爆笑してからやっとザ・フーに戻ったり」

大内「変な人の動画をたくさん見て、〈キース・ムーンがまともに見えてきたな~〉みたいな(笑)」

YONCE「珍獣を見る、みたいなことをしていますね」

大内「車を出してご飯を食べに行ったり、温泉に行ったり、実際に神社に行ったり、遠出して休憩するバンドかもしれない。それが確実に影響を与えていますね」

 

偶然Hedigan’sを聴いても好きになる自信がある

――アルバムをリリースしてしばらく経ちましたが、感想は届いていますか? リスナーの反応は気にしない、という方もいるかもしれませんが。

大内「僕はエゴサをさせていただきました(笑)。感想が一律じゃなくておもしろいですね。ものすごいロックアルバムだ!って聴いてくれている人もいれば、リラックスしてのほほんと聴ける作品として捉えている人もいて」

YONCE「たまたま曲を並べてみたら曲ごとにバリエーションがあって、ジャンルに当てはめた時にそれぞれが別ジャンルに割り振られた曲たちになってくれたなって。感想がバラバラになったのは狙いどおりだし、喜ばしいと思います。

そのうえで、良質な歌ものができたことが嬉しいですね。たとえば、姉貴に〈いい曲だね〉と言われることとかも嬉しかった」

将治「バンドをやっている友だちが〈いいね〉って言ってくれるのが嬉しいよね。SNSの感想はテンション感が文字だとわからないから真に受けないようにしているけど、一人の音楽好きリスナーの目線になった時、ラジオやシャッフルでたまたまHedigan’sを聴いたら好きになる自信がある(笑)。すっげえいいアルバムだなって」

大内「音楽活動をしばらく辞めていた仲間が〈めっちゃよかった。また曲を書きたくなった〉と連絡をくれたんです。それがいちばん嬉しかったですね」

祐輔「自分は、昔ピンとこなかったもののよさが、ある日わかったり、リリース当時はめっちゃ聴いていたけど飽きて聴かなくなったり、その日の気分で聴きたいものが変わったりするんです。なので、聴きたい時に聴いてくれればいいと思っています」

YONCE「作っている時に一喜一憂することはあるけど、出来上がって世に出たら、俺らがどう聴いてほしいかってあまり意味がないからね」

祐輔「自分がリスナーとしてそうだから、誠実な態度をリスナーに求めてもしょうがないと思う」

YONCE「めっちゃ同感。好意的な言葉を投げかけてくれるのはもちろん嬉しいけど、貶す人がいてもいいし、今は貶している人がいつかいいと思ってくれたら嬉しい。これ、何も言ってないことと一緒かな(笑)」

 

〈Hedigan’sの普通〉ができたアルバム

――『Chance』はEP『2000JPY』に続く2作目ですが、演奏やテリーさんとの録音、プロダクションの面で変わったことはありますか?

YONCE「開けた曲が増えました。僕が詞を書いて弾き語りしたものを粉々にしていく感じで作ったのが『2000JPY』だったんですけど、今回は自分の詞に将治や祐輔が曲をつけてくれたり、〈せーの〉で演奏して肉体的な要素を増やしてみたり。変化としては、開かれた作り方をした空気の作品になったということですね」

将治「前作の制作では、どういうバンドなのか、どういうものを作るのか、誰もわかっていなかったんです。けど今回は、ライブをたくさんやって各々の持ち味やかっこいい部分がわかってきたから、まずはそれを自然にやってみるところからスタートして。

録音の仕方も、EPの時は遠回りしすぎていたから(笑)。テリーもEPの時は大変だったと思う。作ったものを剥がしたり壊したりして、作って壊してを繰り返してたから」

YONCE「今回は、曲の輪郭が見えているところから〈何を着せてあげよう?〉〈どういう色にしてあげよう?〉と考えた時間が長かったかな。バンドのスタイルが見えてきたからスムーズでしたね」

大内「ただ、Studio Digに一定期間みんなを閉じ込めて作ることとか、変わっていない部分も多いんじゃないかな」

将治「まったくちがうやり方をしてもおもしろそうだしね。今回はいちばん素直でシンプルな作り方をしたのかな」

YONCE「〈Hedigan’sの普通〉みたいなことができたアルバムかも。大喜利的にお題に打ち返すやり方も楽しいだろうし、何でもありだね。宅録的なEPと合奏が増えたアルバムとで好対照だけど、どっちが優れているわけでもないから、両方できることを見てもらえるいい2枚になった気がする」

 

プロデューサー不在でもバラバラにならないチームワーク

――ロックバンドとしてのラフさを大切にされているように感じますが、録音作品に定着させるのは難しくないですか?

YONCE「むしろプロユースな質感やクオリティの録りや演奏って、俺らにはできないことなんですね。〈ロックバンド然としていなきゃ〉〈このやり方ならロックバンドっぽくなる〉みたいなことは意識していなかったというか。単純に得意なことをやっただけですね」

将治「一生懸命やっただけで、ラフなものを作ろうぜ!というテンションでもなかった」

大内「もちろんガチで演奏しているからね(笑)。ただ録り方やクリックを出すかどうか、楽器の組み方はしっかりと決めて。9割まで作り上げたあと残り1割の仕上げに時間をかけたり、そういう場面はありましたね」

将治「YONCEの歌のパワーがとにかくすごくて一回バーッと歌ってたら、いいじゃん!と素直に思っちゃうんですよね。そういう意味でラフだったかもしれない。ギターも何回も弾き直すことはしていないし」

YONCE「歌も楽器もあまり追い込みすぎていないね」

大内「スタジオワークで特筆すべきなのは、祐輔と本村のいいテイクを選ぶ力がすさまじくて。客観的に見て〈ここがこう光っている〉というのを見つけるのが得意なんですね。特に祐輔の歌のテイク選びは神がかっていました」

祐輔「自分で自分のよさってわからないんですよね。YONCEの歌のすごさはYONCEより俺の方がわかっているし、岳のドラムや将治のギターもそう。

そもそも演奏力や説得力があるから、こういうやり方でもグダグダにならず、プロデューサーがいなくてもバラバラにならずまとめられるんです。締め切りを守って形になっているのは、そういう力があるからだと思います」

大内「チームワークですね」

 

〈作詞・作曲・編曲Hedigan’s〉である理由

――チームワークといえば、みなさんはメインの楽器以外も色々と弾いていますよね。

祐輔「それはたしかにHedigan’sの特徴ですね。岳はドラマーっぽいドラマーじゃないし、俺も形式上はキーボーディストってことになっているけど自分のことをキーボーディストだと思っていなくて。俺がキーボードを弾いていない曲もあるし、そういうことにこだわらず曲がよくなればいい。そういう部分はすごく似ていますね」

YONCE「個々よりグループ単位としてのアイデンティティが強くて、曲に対してこの集まりで何ができるかを考えるほうが楽しいんです。俺のギターすげえだろ!みたいなのが匂いすぎちゃう作品を好んで聴かないというか、みんなトータルで心地よい音楽のほうが好きなんですよ。〈ジョー・ストラマーという個人がすごいんじゃなくて、ザ・クラッシュという4人がすごいんだ〉という思考が共通している。曲への貢献の気持ちが強いのかも」

将治「楽器の分担は自然な流れで決まることが多いかな。たとえば“ふしぎ”は自分のギターが元々あって、そこにYONCEが歌を乗せて、祐輔はグロッケン叩いて、岳ちゃんはパーカッションで……」

大内「何を叩くかも決めていなくて、机に並べて〈う~ん〉と考えて。そのまま本番(笑)」

将治「たまたま近くにあったものを演奏するとか」

大内「本村の近くにラッパが置いてあったから、とかね。録音はやり直せるので、いろんな遊びができますね」

YONCE「コーラスを録る時も〈この人の声だからおもしろくなる〉という発想だからね。ギターは将治がほとんど弾いているけど、〈俺が伴奏を弾いたほうがいいかも〉っていうのは曲によってあるし」

祐輔「プレイで参加しなくても参加していないことにならないバンドかも。たとえば、アンビエントなドローンの曲を作ったとして、岳がドラムを叩かなくても参加していないことにならないというか。みんなでアイデアを持ち寄って作るし、プレイヤーっぽくないというか、もっとちがうところに視点を置いているというか。だから、作詞・作曲・編曲のクレジットもHedigan’sにしているんです」

 

打ち合わせより「昨日何食べた?」

――“再生”に〈打ち合わせはもう十分だ 上手くやってもつまらないのさ〉という歌詞があって、Hedigan’sらしい姿勢だと思ったんですよね。

YONCE「本当にそうですね。計画について話すことはないし、打ち合わせより〈昨日何々を食べてさー〉みたいな話ばかりするから」

大内「こうしたらおもろいよね、という話が多いかも」

祐輔「計画性はなくて、すべてぶっつけ本番というか」

YONCE「楽しいし好きなことだから、結局、自然とちゃんとするし、ちゃんとしているほうが楽しい。それを言わないとできない時点で、その集まりには無理が生じていると思うな」

大内「逆にずっとガチで真面目だとも言える。傍から見たら、ものすごく真面目に音楽の話をしているように見えるかも(笑)」

 

ビートルズに影響を受けたバンドに受けた影響

――ザ・フーやザ・クラッシュの名前が挙がりましたが、個人的に気になるのは“サルスベリ”や“再生”などで聴けるビートルズの要素なんです。意識することはありますか?

YONCE「意識するかというと……微妙だよね?」

祐輔「たぶんしてない」

大内「溶け込みきってる(笑)」

祐輔「当たり前すぎて……」

大内「特に栗田兄弟ですね。Gliderはものすごくビートルズ・リスペクトを感じるバンドだし」

YONCE「そうだね。録音芸術の極みとしてビートルズを聴き込んでる2人だから、ネタや大喜利的に要素が出てくる。もちろんビートルズ以外の要素もあるし、2人はDJ感覚でパーツを切り取って作ることが得意で板についているんですよね」

将治「“マンション”のスライドギターはジョージ・ハリスンのイメージだったし、意識はしていたかも。“カーテンコール”は10年ぐらい前に作った曲で、コード進行は“Sexy Sadie”とかの影響はあるのかもしれません。影響は絶対にありますが、ただ“再生”はオマージュだとも思っていなかったですね」

祐輔「ビートルズっぽくしよう、という話はしていないですね」

YONCE「“カーテンコール”のデモはピアノの伴奏だったからね。RECしてみたらモータウンっぽいソウルナンバーになった」

大内「ソウルシンガーってけっこうビートルズやジョン・レノンの曲をカバーするじゃないですか。ビリー・プレストンのソロ作品とかダニー・ハサウェイの“Jelous Guy”とか。僕はそういう曲が好きで、その感じは出たかも」

YONCE「おもしろいね。ちょっとひねったビートルズ感はあるかも。あと“地球(仮)”は、ショーン・レノンが属していた90年代アメリカのオルタナシーンや界隈を意識していましたね」

大内「ドラムの音はまんまそうですね。テーム・インパラとかのサイケデリアにも通じる要素ですが」

祐輔「XTCとか、ビートルズの遺伝子的な音楽が会話に出ることは多いかも。ビートルズに影響を受けたバンドを参照するから、結果的にビートルズの影響なんですけど(笑)」

YONCE「ビートルズが俺らのルーツかはわからないけど、ビートルズから派生した音楽がめちゃくちゃ好きなんですよね」

将治「ただ“再生”は、UKのビートルズじゃなくアメリカンポップやオールディーズのメロディやコード進行と日本の歌謡曲を意識したかも」

YONCE「『アメリカン・グラフィティ』的な40s、50sの時代の感じね」

 

井上真也がベースを弾いた“Mission Sofa”の秘話

――あと個人的に“Mission Sofa”がすごく好きで、レディオヘッド経由のジャズのような演奏ですよね。

祐輔「最初にYONCEから歌詞をもらって、その詞もエディットしながら曲をつけていき、みんなでいじくり倒して出来た曲です」

――井上真也さんがベースを弾いていらっしゃいますが、フレットレスですか?

大内「そうだった……ような?」

祐輔「誰もちゃんと見てない(笑)」

大内「うまいな~! これ弾けるんだ?と思って見ていました。本村から直々のオファーだったんです。Burgundyという別のバンドで一緒にやっていて、ベーシストどうし親交が深いんですけど、〈あのフレーズを弾くのは自分より真也くんのほうがいい〉と」

将治「でも、ソロは思いつきで弾いているよね」

祐輔「お題はもっちゃん(本村)がいろいろ言っていたけど」

大内「ジャコパスみたいに、とか」

将治「侍みたいだったね。〈お願いします〉ってオケを流して、最初は弾かなかったんです。何回か聴いて、弾きはじめたらすごく早かった」

大内「ガチのプロだからね。ただ〈スタジオに遊びに来ません?〉って騙すように誘って、来てもらってから〈この曲をお願いしたい感じなんですけど……〉ってドッキリみたいな依頼の仕方をしちゃった(笑)」

――井上さんの縦笛はなぜ入ったんですか?

大内「……なぜでしょうね?」

YONCE「たまたま持って来ていたから(笑)」

将治「あれこそ1テイクです」

YONCE「祐輔が書いた曲の世界にすごくマッチする笛のフレーズがいきなり一撃で出てきて、すごかったです」

 

初ライブでしかできなかった演奏

――『Chance』のCDはディスク2にライブ音源が収録されています。結成後初ライブになった〈EPOCHS 〜Music & Art Collective〜〉での演奏をあえて選んだ理由を知りたかったんです。

将治「資料的な意味で残しておいたのもあります」

大内「聴いてみたら〈こんなによかったか!〉って思うぐらいよかったんですよね。楽しかったもんな~」

将治「ライブを重ねると、なんだこれ? どうしよう?みたいな、何が起こっているのか自分たちでわかっていない最初の感覚を忘れがちなんですよね。ギターソロを弾けていなかったりするけど、でも今のほうがよくなっているかというと良し悪しじゃないなって」

――その時にしかできなかった演奏があると。

将治「そう。謎の緊張感とかね」

大内「やけに堂々とした無敵感もあって、作った曲を大きな場所で人前で演奏できた喜びをその時に覚えたんです。それが音に表れているかな」

YONCE「溜まりに溜まったものをようやく出せた感じもあるしね」

大内「ライブベスト的な選曲をする案もあったのですが、〈EPOCHS〉の演奏が全曲残っているとのことで聴いてみたら、CDに入れるならこれがもっとも意義があるんじゃないかと思って」

YONCE「〈こんな変遷を経て、今はこういうライブをしています〉と聴いてもらえるのはよかったと、あとから思いましたね。その意味でも、一発目のライブ音源の収録はすごく意義深いです」

 

Hedigan’sのライブは演奏する側が楽しんじゃう

――ライブこそが新骨頂、という楽しさもHedigan’sの一側面だと思うのですが、録音作品とのちがいをどう捉えていますか?

YONCE「別物だという自覚はもちろんあって、結局、音源を再現することを目指してもしょうがないんです。そのためにストレスを溜めてデリケートな演奏をしたところで、楽しさが目減りしちゃうので。だったら音源は一旦全部投げ置いて、俺たちが楽しく没頭できるライブにする、というのがまず念頭にあります。

ディティールを細かく決めないでやっているんですけど、〈ここをこうしよう〉と話すことは飽きないための工夫に近いですね」

大内「テンパリングしてちゃんと温まりつづけるための工夫ですね。僕はHedigan’sのライブがすごく好きです」

将治「ライブと音源は別物だけど、Hedigan’sってその境目すらないかも。たとえば〈今日はライブ〉〈今日はREC〉〈今日はリハ〉〈今日は無観客配信ライブ〉と日によってやっていることがちがっても、そこに持っていくチューニングは一緒」

大内「そうだね。Hedigan’sで演奏する、という意味では同じだから」

YONCE「たしかにライブだからって変わった意味があるわけじゃなくて、レコーディングしている時と同じ気持ちかもね」

将治「Hedigan’sのライブで思いっきりギターを弾いて頭を振っている時がいちばん気持ちいいかな(笑)」

大内「楽しんでもらおう、という気持ちはあまりないかもしれない(笑)。申し訳ないけど、こっちが楽しんじゃうから」

祐輔「パーティーみたいに開けたラフな楽しさとスリリングな没入感って、必ずしもかけ離れたものじゃないと思うんです。反比例していくものじゃなく、どっちもあるのがいいんですよね。Hedigan’sもそういうバンドにこれからなっていけたらいいなと」

YONCE「そうだね。突き放したことをしたいとも思わないし、お客さんと慣れ合って期待に応えることをしたいわけでもないし。友だちのイベントとかに行った時、楽しいと思う瞬間が多いのは、両方がいい塩梅で増幅しつづけていくライブだと思う。その視点は欠かさないようにしたいな。あと大事なのは、誰がどんな格好をして来てもいいこと。どんな気分で来てもらってもいい。こっちもそういう心構えでいるよって」

 

予定調和でなく、その場その時にしかない演奏を求めて

――12月の配信ライブ〈Warehouse Session〉でも録音作品と異なるアプローチが聴けて楽しかったです。1月から始まるツアーも『Chance』での姿とはちがうHedigan’sが見られますか?

大内「どうなりますかね……(笑)?」

YONCE「何も考えてない……」

将治「ライブを重ねると最初はおもしろがれたアイデアもマンネリ化しちゃうし、しかも俺らってブームの飽きが早いんだよね。曲をぐちゃぐちゃにしてかき回す演奏も、パターン化してくるとお決まりで予定調和なカオスになるし。もしかしたら、逆に音源どおりめちゃくちゃビシって演奏するほうがおもしろいかも」

祐輔「会場やコンディション、お客さんの雰囲気で演奏は変わるし、シチュエーションによっていろんな見せ方ができると思います。崩す崩さない、音源どおりにやるやらないじゃなく、そういうことにこだわるより、その場その場でいろんなことができたらいいな」

大内「曲に教わることが多いんですよね。ライブで〈この曲はこんな曲だったのか!〉という気づきがあるから」

YONCE「ライブってそういう側面がすごくあるよね。微妙なテンポのちがいとかでぜんぜん変わる」

祐輔「岳の気分でけっこう変わる気がする(笑)」

大内「それはそうかも」

YONCE「4カウントする人のテンション次第でね。それは一理ある」

大内「俺の調子次第なら気をつけよう(笑)」

YONCE「でも、それがおもしろいからね」

――当初は〈YONCEさんの新しいバンドだから見に来た〉というお客さんが多かったそうですが、アルバムがリリースされ、〈Hedigan’sというバンド〉としてライブを見に来る人が増え、ムードも変わってきたのではと思います。

YONCE「好みの問題だから、どんな興味を持って見に来てもらってもいいんです。今日は何が起こるかな?とか、今日の大内さんのコンディションはどうかな? テンポが速いかな?とか(笑)」

大内「俺、厳しく見られそうだな(笑)」

YONCE「俺らはそういうことをおもしろがれるから、来てくれる人も気楽に楽しんでほしいんです。客だ、演者だ、とお互い思わずにやれるのがいちばん楽しいと思います」

 

守りたいのは今あるフォーマットより5人の関係性

――クリックや同期でキメキメに演奏するバンドが多い昨今ですが、Hedigan’sはまったくそうではないと。

祐輔「それもやってみたいね(笑)。みんなイヤホンしてラップトップの前に立って」

将治「宙吊りになってギターを弾いたり(笑)」

大内「バスドラを踏むたび光るようにしようかな(笑)。生っぽさや人間のエラーは必須ではないんですよね。それは今あるから武器になっているだけで、やり方はそれだけじゃない。

でも、同じことにならないようにはしたい。いいと言われたものを焼き直すより、やったことがないことをどんどんしていきたい」

将治「たとえば、声が出なくなったら出せるキーの中でどれだけいい歌を歌うかとか、手が動かなくなったらその状態で弾けるギターを弾くとか、そういうことはおもしろいけどね」

YONCE「自分の今の姿形でできるおもしろいことをやる、ということだよね。音楽じゃなくなるかもしれないし。何年も続いて音楽に飽きて、コントライブをするとか。コピバンにやらせて、俺らはそれを見るだけとか(笑)」

大内「二代目Hedigan’s襲名記念公演(笑)」

将治「ベンチャーズとかそうだよね」

祐輔「フォー・フレッシュメンとかもね」

大内「それぐらい守りたいものは、今あるフォーマットより5人の関係性なんです」

YONCE「有機的な集まりである、ということですね」

大内「うん。人生が上向きになるので、Hedigan’sは続けていきたいです」

 


LIVE INFORMATION
Hedigan’s “TOUR Chance” 2025

2025年1月25日(土)神奈川・横浜BAYHALL ※終了
2025年2月1日(土)福岡・BEAT STATION
2025年2月9日(日)埼玉・熊谷 HR
2025年2月11日(火・祝)宮城・仙台 Darwin
2025年2月15日(土)愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
2025年2月16日(日)大阪・心斎橋 BIG CAT
2025年2月23日(日)北海道・札幌 cube garden
2025年3月2日(日)東京・新宿 Zepp Shinjuku

■チケットオフィシャル一般発売
受付URL:https://lit.link/hedigans
スタンディング:前売り 5,500円/当日 6,000円(ドリンク代別)
U-18チケット:3,500円
※U-18チケット注意事項
・当日券なし
・入場時に生年月日の確認を実施しますので、必ず身分証をご持参ください
・身分証を忘れた場合、チケット代の差額2,000円をその場で頂きます

主催:HOT STUFF PROMOTION/BEA/NORTH ROAD MUSIC/JAILHOUSE/清水音泉/WESS
企画制作:SPACE SHOWER MUSIC/BIAS & RELAX adv.

■問い合わせ先
東京・神奈川・埼玉:HOT STUFF PROMOTION/TEL 050-5211-6077(平日12:00〜18:00)
福岡:BEA/TEL 092-712-4221(平日12:00~16:00)
宮城:NORTH ROAD MUSIC/TEL 022-256-1000(平日11:00~16:00)
愛知:JAILHOUSE/TEL 052-936-6041(平日11:00〜19:00)
大阪:清水音泉/TEL 06-6357-3666(平日 12:00~17:00)
北海道:WESS/Mail info@wess.co.jp

 

RELEASE INFORMATION

Hedigan’s 『Chance』 F.C.L.S.(2024)

■CD
リリース日:2025年1月15日(水)
品番:KSCL 3566~7
価格:3,950円(税込)

TRACKLIST
DISC 1
1. 地球(仮)
2. マンション
3. その後…
4. グレー
5. 再生
6. Mission Sofa feat. 井上真也
7. But It Goes On
8. O’share
9. カーテンコール
10. ふしぎ

DISC 2
Live at SPACE SHOWER MUSIC Presents “EPOCHS Music & Art Collective 2023” 
1. 夏テリー
2. LOVE (XL)
3. サルスベリ
4. 説教くさいおっさんのルンバ
5. 敗北の作法
6. 論理はロンリー