SuchmosのYONCEが所属、という前置きも不要になってきたバンドHedigan’s。彼らが2024年11月にリリースし、高い評価を得た1stアルバム『Chance』がCD化された。結成後初のライブになった〈EPOCHS 〜Music & Art Collective〜〉での記念すべき演奏をディスク2に収め、タワレコメンにも選出されている。

そのリリースにあわせて、河西“YONCE”洋介(ボーカル/ギター)、栗田将治(ギター)、栗田祐輔(キーボード)、大内岳(ドラムス)の4人に話を聞いた(ベースの本村拓磨は体調不良のため欠席)。傑作『Chance』について、そして2025年1月25日から始まったリリースツアーについて多角的に、じっくりと語ってもらった。

Hedigan’s 『Chance』 F.C.L.S.(2024)

 

Hedigan’sで集まる日は休日に近い

――みなさんはほかのバンドやプロジェクトでも活動されていますが、それらと比較して相対的に見えてくるHedigan’sのおもしろさや変さってありますか?

河西“YONCE”洋介「音楽への取り組みに関して大きな差はないと思います。ただ、よりリラックスした集まりだと思いますね。ストイックに没頭してぶっ通しでやるより、茶飲み話をしながら制作するとか」

大内岳「休憩の長さはトップクラス(笑)」

YONCE「それが、力が入りすぎていないものづくりに反映されている気がしますね」

大内「本番と練習の区分けがないというか。戦略を立てるより遊びの中でアイデアをぶつけあって、おもしろいものを組み立ていく。Hedigan’sで集まる日は休日に近い(笑)。今日を乗り切れば明日はHedigan’sだ、みたいな。あと、埼玉県本庄のStudio Digを拠点に活動していることが特色で、足を伸ばして身近すぎない現場に行くことが気持ちの切り替えとしても好きです」

栗田祐輔「コンセプトやゴールを設定していないのは大きいね。どこまでが悪ふざけで、どこからが作品なのか境目がないというか。〈わちゃわちゃやっているうちにおもしろいものができたらいい。できなかったらしょうがないね〉みたいな。それで今のところうまくいってるのがすごいと思います。よくこのやり方でまとまった作品になっているなって(笑)」

栗田将治「俺と祐輔はHedigan’s以外にバンドを一個しか組んだことがないので、そのGliderとのちがいになるんですけど、Gliderは目的を持たないと何も始まらないんですね」

祐輔「お題が必要なんだよね」

将治「でもHedigan’sは、〈何も曲を持ってきてないけど、どうしよう?〉という感じでもなんとかなる」

大内「お題を各々が持ってくるからね」

祐輔「お茶を飲んで会話したりタバコを吸ったりしているところから、シームレスに作品作りになっていく。机に向かっている感じがしないというか」

YONCE「見えない心の姿勢に形があるとしたら、そういうことだよね。それぞれがおもちゃを持ってきて〈今日はこれをやりたい〉とか、やりたいことがなくてもタバコを吸って話しているうちに〈そういえば、これをやりたかったんだ!〉って思い出すとか」

将治「Gliderは2人でキャッチボールを何回もして曲を仕上げるけど、Hedigan’sはデモを作る感じでそのまま納品できちゃう」

祐輔「Hedigan’sはずっとコミュニケーションをしているんです。しかも互いの利害とかを考慮したものじゃなくて、適当で快適なコミュニケーションや他愛のないことをしていて苦じゃない5人なんですよ。それが、プレッシャーや何かに追われることなくできている理由かな。遊んでいるだけなんですよね」

大内「ついにエンジニアのテリー(伊藤広起)がコントロールルームから出てきて、〈今日はやらないの……?〉と言われた日があったね(笑)」