(左から)バンバ、音山大亮、さなえ

SUPER BEAVER、マカロニえんぴつ、sumika等が所属する音楽事務所、murffin discsが主催するオーディション〈murffin discsオーディション〉の準グランプリを獲得したことをきっかけにデビューを飾った3人組ポップスバンド、pachae(パチェ)。音山大亮(ボーカル&ギター)がDTMで作り上げる一癖も二癖もある楽曲は決して一筋縄ではいかないが、それをバンバ(ギター)、さなえ(キーボード)という超絶技巧的な演奏テクニックを持つメンバーによる緻密なアンサンブルでポップに聴かせる。

そんなpachaeにとって初のタイアップソングとなる放送中のTVアニメ「妻、小学生になる。」のオープニング主題歌“アイノリユニオン”は、シティポップ感溢れるアンサンブルに音山のハイトーンボイスが入ってくるイントロからしてインパクト大。アグレッシブに攻めた展開の中で特に耳を奪うのはサンバに突入する間奏だ。しかしながら、あくまでもフレンドリーなポップスなのがpachaeならでは。

〈愛とは何か?〉という普遍的なテーマに真っ向から取り組んだ“アイノリユニオン”のリリースを機にインタビューした。

pachae 『アイノリユニオン』 ユニバーサルシグマ(2024)

 

すべては“なんでだろう”から始まった

――音山さんは大学時代にジャズやフュージョンをやっていたそうですが、そもそも最初にハマったアーティストは誰なんでしょう?

音山大亮「小学生の時に、テツandトモさんの“なんでだろう”にハマりました。音楽的な影響も未だに受けていると思いますし、世の中に対して〈なんでやろう〉って思うことが多いですし。“なんでだろう”を最初にしっかり歌った時は、アコギを演奏しながら歌いました。それは高校生の時だったんですけど。すべては“なんでだろう”から始まってます」

――アコギをやろうと思ったきっかけは何だったんですか?

音山「ずっとピアノをやってたんですが、親から突然〈ピアノが弾けるんやったらギターも弾けるやろ〉って謎なことを言われてアコギを買ってくれたんですよ。でも2秒で諦めました」

――早いですね(笑)。

音山「思ってたより早かったですね。10秒は持つかなと思ったけど、ほんまに2秒でした」

――ご両親も音楽をやっているんですか?

音山「父はずっとドラムをやってて、母はピアノをやってたと思います。音楽一家っていうほどじゃないんですけど。全く内気じゃないのに自分の趣味を少しも息子に話さない両親なのでよく知らないんですよ。

ギターを2秒で諦めた後、再開したのは高3でしたね。高1の時は部員2人のテニス部で、先輩がいないと壁打ちをするしかなくて、〈放課後に1人で壁打ちしてる俺、プロになれそうやな。エモ〉って思いながらやってたら、フェンス越しに〈なあ! ピアノ弾けるやつってお前!?〉って叫んできたやつに誘われたんです。そこで初めて〈軽音〉という言葉や〈バンド〉という概念を知ったくらい何も知りませんでした。

それで軽音部に入ってバンドを組んだんですけど、ギターがいなくなって他に弾く人がいなかったのでエレキギターを買って練習し始めました。曲作りはその前にピアノで始めてたんですけど、軽音部ではコピーばかりやっていましたね。最初にコピーしたのはサカナクションでした」

バンバ「難易度高!」

さなえ「いきなり結構難しいところにいったね(笑)」

音山「サカナクションの“僕と花”をコピーしたんですが、オリジナルの演奏を100点とした場合、僕の演奏は1点ぐらいでしたね。めっちゃ練習したんですけど。その後、鉄板のONE OK ROCKやMAN WITH A MISSIONをコピーして、高3の時はKANA-BOONの“ないものねだり”がめっちゃ流行ったんですけど、誰が一番先にコピーするか競争みたいな感じになって僕のバンドが最速を勝ち取りました」

――一番影響を受けていると思うのは誰ですか?

音山「“なんでだろう”。ほんまに雑食なタイプやと思っています。ベーシックは歌謡曲全般で、歌やアレンジはすべてのアーティストに影響を受けてるくらい特定できなくて。ボカロとか複雑な曲が好きではありますね」

――さなえさんが影響を受けているアーティストというと?

さなえ「アース・ウインド&ファイアーやパット・メセニー、ライル・メイズ、チック・コリアがずっと好きですね。ピアノとエレクトーンを幼少期からやり始めたんですが、エレクトーンで自分で作る曲もパット・メセニーとライル・メイズの影響が強い曲が多かったです」

――バンバさんはどうですか?

バンバ「僕は小学2年生の時にYouTubeでandymoriの“革命”か“City Lights”のMVを見た時にバチコーン!って感覚になって音楽人生が始まりました。そこから海外のアーティストも含めていろいろな音楽を聴くようになりましたね」

――andymoriのどこに惹かれたんでしょう?

バンバ「……全部ですね。(藤原)寛さんのベースラインも変だし、小山田壮平さんの声もめっちゃいいし、全部です」

――ギターをやろうと思ったのは?

バンバ「音楽を聴いていく中で、ギターが弾けるとかっこよさそうやなって思って。それで〈簡単そうやな〉て思って調子に乗って弾いてみたら、音山と同じく2秒で辞めました(笑)」

音山「一度ギターを2秒で辞めてる人は結局うまくなるんですよ(笑)」

バンバ「その後、中学受験の時に勉強したくないって理由でギターをちゃんとやり始めて。高校で軽音部に入って今に至ります。軽音部ではオアシスやGOING UNDER GROUNDのカバーをやってました」