三浦大知が、東京・天王洲で開催された国内最大級のアートとカルチャーの祭典〈MEET YOUR ART FESTIVAL 2024「NEW ERA」〉に出演した。この日、三浦は森山未來らとのトークセッションに加え、2018年リリースのアルバム『球体』のライブパフォーマンスを披露。秋めく天王洲を舞台に繰り広げられた1時間ほどのステージからは、『球体』という作品/プロジェクトの無限の可能性が感じられた。

三浦大知 『球体』 SONIC GROOVE(2018)

 

夕暮れすら演出の一部に感じた『球体』のパフォーマンス

まず、今回のパフォーマンスと通常のライブとで大きく異なる点が2つ。1つは三浦がパフォーマンスするステージが〈船上〉だということ。建築家の隈研吾が監修した船上スペース〈T-LOTUS M〉を舞台に、三浦とDJ DAISHIZENの2人で『球体』の世界を作り上げていく。

ホールやアリーナのような会場であれば、オーディエンスの多くは演者を見下ろす形になる。ライブハウスであっても多少顔を上げる程度ではあるが、天王洲運河に浮かぶT-LOTUS Mをステージとした『球体』のパフォーマンスは、観客が常に見上げる状態で鑑賞することになるのだ。

そしてもう1つが、野外での公演でしか体験できないリアルな時間経過による演出効果だ。開演時刻の17:00はまだ空に青色が残っていたが、徐々に日が暮れ、終演時には夜にいたる。至極あたり前の日照変化がそのまま演出の一部となる光景は、こうした環境でなければ味わうことができない。

そうした特殊な状況下で行われた『球体』のパフォーマンスだが、実際にアルバムに収録された17の楽曲から8曲が披露された。アルバム同様、波の音と船の汽笛から始まる“序詞”からライブは幕を開ける。キーボードを弾き語る三浦の後ろには、夕暮れ間近の天王洲の空が広がっている。

短いMCを挟んだのち、水の音とアンビエントな音色が仄暗い水中を連想させるスロウチューン“淡水魚”へ。楽曲序盤の音数が少ないパートでは、少し耳を澄ますとT-LOTUS Mの下を流れる天王洲運河の波音が聴こえてくる。力強いビートへと切り替わる後半から、いよいよコンセプチュアルプロジェクトとしての『球体』の奥深くへと潜っていくことになる。

過ぎ去った夏の日の記憶をフラッシュバックさせる“テレパシー”では、アコースティックギターのアルペジオと三浦のボーカルが優しく絡み合う。空は雲ひとつない快晴ではあったが、三浦の類稀なる表現力によって雷鳴の轟く夕立の光景が脳内に広がる。

そしてアルバムの曲順どおり“飛行船”がパフォーマンスされる頃には、辺りは夕闇に包まれ始める。まるで図ったかのように(実際に計算されていたであろう)ライティングが映える時間帯を迎えた中での“飛行船”で、三浦は大きく躍動する。豊かなメロディーと壮大なサウンドスケープ、堰を切ったように激しさが増すダンスにオーディエンスはただただ息を呑む。