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〈新しい部屋〉へ引っ越して生まれた新曲たち

──何か私生活でも大きな変化が起きたのかなと考えてしまいます。

「いや、あまりないですけど……。まあ、引っ越しをしたことぐらいですかね(笑)。引っ越す前は、何か作ろうとしても曲調も暗い感じになってたんです。もっとたくさんの人に聴いてもらうためには明るい曲を作ったほうがいいんじゃないかと、今回から制作を担当してくれているスタッフさんにもアドバイスをもらって、それで環境を変えたくなって引っ越すことを決めたんです。実際、そこから新曲が増えてきたかもしれない」

──まさに、『Relax!』の1曲目“新しい部屋”が生まれるきっかけ。そして、今回のスタッフィングには、kiss the gamblerとしても思い切って制作環境の引っ越しをしたと感じます。

「スタッフさんから〈いろんな人と試してみるのもいいんじゃない?〉という提案もあり、話し合って決めました。そのスタッフさんと会ったのは2023年の9月で、このレーベル〈Hooman Records〉を立ち上げたのが今年の1月くらい。制作をするにあたっては〈どんなプロデューサー、アレンジャーとやってみたい?〉って聞かれてはいたんですけど、私があんまり詳しくなくて、スタッフさんから紹介されてお願いしました。今までプロデューサーって谷口さんしか知らなかったから(笑)」

──いやあ、鈴木正人さん(LITTLE CREATURES)をはじめ、石井マサユキさん(TICA)、Shingo Suzukiさん(Ovall)、佐藤洋介さん、韓国のプロデューサーSARAさんと、いつの間にこんな人脈ができてたんだろうと驚くほどの変化でした。

「飛び級みたいですよね(笑)」

──飛び級というより、曲が収まるべきところに収まったという快感もあります。経験値が高いみなさんだからこそ、kiss the gamblerの曲の活かし方をいろいろ試しているのも面白い。ここまで未知のサウンドプロデューサーたちに身を任せるのも初めての体験ですよね。

「そうですね。そもそも自分に何のジャンルが合うのかもわからなかったので」

 

kiss the gamblerが本当になりたい姿

──では、1曲ずつあらためて完成した実感を聞かせてください。まず“新しい部屋”。鈴木さんのアレンジはすごいですよね。クレジットを見ると、ほぼ全部の楽器を鈴木さんが演奏してるんですよね。

「私は何もしてないんです(笑)。ピアノすら弾いてない。あんなに難しいピアノはまだ弾けません。

鈴木さんには、私が大学生の頃によく聴いていたレジーナ・スペクターっぽい感じでアレンジをお願いしたんです。それが叶いました。今回の6曲は全部好きなんですけど、そのなかでもこの“新しい部屋”が、私の本当になりたい姿なのかなと今は思います」

──確かに、この曲は〈そう、これ!〉と思えてスカッとします。そして、2曲目“かっこよくなんかならなくていい”もキスギャンの真骨頂といえる歌詞です。資料にあった本人コメントで、〈流行りの音楽を分析して真似したり、バズらせなきゃとだけ思っていると、自分が書きたいものが何だかわからなくなってしまって、本当に苦しくなってしまうこともあるかと思います〉とズバリ書いてますが。

「私はそんなふうに苦しんだことはなかったんですけど、そう考えて悩んでいる友達に出会ったりして、辛そうだな、私だったら逃げちゃうだろうなと思ったりしたので。

あと、この曲はあえてギターでデモを作ってみたんです。コードを5つくらいしか知らないんですけど。ピアノだと思うように弾けちゃうから、〈ちょっと難しいコードでも使っておしゃれにしよう〉とかできるんですけど、ギターだとそれができないから、自分で曲作りを始めた頃みたいな曲ができるんです。同じコードが続いていてもギターだと成立する、とか。自分のハードルが下がるし、ピアノで作った曲よりも言葉も繰り返しが多い(笑)」

──次は3曲目“Winter of 96”。

「これは引っ越す前に作った曲なんです。引っ越す前の曲なので、内容はやっぱりちょっと暗い。

韓国のプロデューサー、SARAさんに参加してもらったきっかけは、彼女がboîte(ボアット)というバンドで来日したとき、私のライブを見に来てくれたことなんです。それで仲良くなって、私が韓国に行ったときには対バンもして。SARAさんのソロEP『Lurch』もめちゃめちゃよかったので、私もこんなふうにおしゃれになりたいと思ってお願いしました。

でも、最初にSARAさんが送ってくれたR&Bっぽいトラックに合わせて歌ってみたらちょっと私にはおしゃれすぎた感じがあったので、それをさらに佐藤洋介さんがUSインディーみたいな雰囲気にしてくれました」