ムーンライダーズを超えるムーンライダーズがここにある
〈鈴木慶一とムーンライダース〉という名義で、日本のロック史に残る傑作『火の玉ボーイ』が世に出たのが76年。今年でムーンライダーズはデビュー50周年という大きな節目を迎えた。その記念すべき年に届けられる新作『e.d morrison』は、常に変化し続けてきたムーンライダーズらしく新しい試みを盛り込みつつ、彼らの歴史も詰まっている。
まず本作で注目すべきは、近年、彼らのレコーディングやライヴをサポートしてきた澤部渡(スカート)、佐藤優介(想像力の血)が、初めてバンドに曲を提供していること。バンドメンバー5人と彼ら2人が1曲ずつ曲を書き、亡くなったオリジナル・メンバーの岡田徹、かしぶち哲郎のデモをレコーディング。さらに全員でセッションして作り上げた曲を加えて全10曲という構成だ。
ヴォーカルとコーラスの掛け合いがドラマティックに展開する“俺たち死に神、ヴォランティアーズ”。老人の憂鬱を飄々と歌い上げるソウル・ナンバー“美しき老い”。ボブ・ディラン風のフォーキーな曲に歌心が宿る“鞄の中の男”など、楽曲の幅広さやヒネクレ具合はさすが。トラッド風の爽やかな曲がシュールな世界に突然変異する組曲“Suite 腕に夕日 肩に枯れ木”もムーンライダーズの真骨頂だ。さらに岡田のモダンなポップ・センスが炸裂する“トンネルの向こうはNothing”や、かしぶちの艶やかなメロディーが甦る組曲“Suite シャンデリア”にファンは感涙間違いなし。若手2人の楽曲も違和感なく溶け込んでいて、プログレとノベルティ・ソングが融合したような佐藤の曲“快楽の椅子”には鈴木慶一の遺伝子を感じさせる。
これまで彼らは周年ごとにバンドを定義し直すようなアルバムを発表してきたが、今回もムーンライダーズらしさを問いかけながら、若い血が入ることで新しい何かが芽生えている。アルバム・タイトル『e.d morrison』とは、バンド・メンバー全員で共作する時の名義でムーンライダーズのアナグラム。ある意味、セルフタイトルとも言える本作は、7人編成のムーンライダーズが誕生したことを告げているようで、ここから新たな物語が始まる。
