東京発の3ピース・ロック・バンド、Dear Chambers。2017年の結成から精力的な活動を続け、特にこの数年はコロナ禍でのライヴ活動、2023年のレーベル移籍、ギタリストのKubotyをサウンド・プロデューサーに招いた制作など、数多くのターニングポイントを迎えている。
「25歳と23歳でこのバンドを始めたので、遅れを取っている劣等感がずっとあったんです。でもコロナ禍でライヴハウスを取り巻く状況が一気に変わって、音楽を心の底から求めている人だけがそこに残ったように感じられたんですよね。ライヴのたびに人の温かさや純粋さが身に染みて、シンプルに〈もっといい曲を作りたい〉と思うようになりました」(モリヤマリョウタ)。
「でも去年は自分たちのいいと思った新曲をライヴでやってもお客さんとうまくかみ合わなくて、メンバー間もギスギスしてしまって。そこからしっかりと言葉でコミュニケーションを取るようにしました」(しかぎしょうた)。
「バンドとしてどういう音楽をやるべきかを3人でじっくり噛み砕いて、今年の頭にいろんなものがフラットになって。そこからチームの皆さんともKubotyさんとも丁寧にコミュニケーションを取れるようになって、楽しみながらちゃんと音楽ができるようになりましたね」(秋吉ペレ)。
それを経て生まれたセカンド・フル・アルバム『NEW OLDIES』には、ライヴハウスで培ったバンドならではのフレッシュかつアグレッシヴな勢いだけでなく、モリヤマのルーツである90年代J-Popを彷彿とさせる豊かなメロディーも伸び伸びと活きた楽曲が揃っている。
「Kubotyさんから〈Dear Chambersは速い曲が多いけど、根はJ-Popだよね〉と言われて、自分の大好きな音楽の成分は自然と作った曲にも出てくるんだなと気づいたんですよね。聴く人によっては古くさいと感じるかもしれないけど、いま聴くと新しい気がする。だからタイトルを『NEW OLDIES』にしたんです」(モリヤマ)。
「ライヴハウスのいちばん後ろで観ている人にまでちゃんと届く音楽が作りたかったんです。音楽そのもので戦ってみたいというのはテーマでしたね」(秋吉)。
「最初は自分以外の人の作ったフレーズを叩くことに抵抗があったんですけど、こういう曲にはこういうアプローチをするとこんなに曲が良くなるんだなとすごく勉強になったんですよね。ライヴだけでなく音源でもしっかり伝わるサウンドにしたかったし、それが実現できたと思っています」(しかぎ)。
例えば“思い出せない幻”ではZARDの聴き心地の良さや伸びやかなメロディーを意識したそうだし、“宛先のないラヴレター”はWANDSを彷彿とさせる地に足の着いたギター・リフが象徴的だ。“ワンセルフ”はMVも含めてグリーン・デイへのリスペクトが素直に表れ、“あの月のまま”は夜道を歩きながらひとりで涙を流す感傷的なシチュエーションを映画のように繊細に表現する。“まだ見ぬ君へ”など、リスナーへの溢れんばかりの愛情をストレートに綴った楽曲も多い。
「いまの時代、お金と時間を割いてライヴハウスに来たり、CDを買う人たちは本当に物好きだと思うんです。俺らはそんな物好きが愛しくて仕方がないんですよね。だから〈あ、あの曲聴きたいな〉とスッと取り出せる、ずっと大事にしてもらえる音楽を作りたいし、ライヴハウスに来てくれる人を愛したい。『NEW OLDIES』でかっこよくバンドを続けていくためのスタート地点に立てたと思うし、ミュージシャンとして踏み出せた気がしているんです」(モリヤマ)。
モリヤマが18歳で作ったライヴの定番曲“幸せになってくれよ”の再録も収め、現在の生き様と美学、軌跡を余すことなく詰め込んだ『NEW OLDIES』。その制作を通してバンドの地盤を固めた彼らは、表現者としてさらに飛躍していくだろう。
Dear Chambers
モリヤマリョウタ(ヴォーカル/ギター)、しかぎしょうた(ドラムス/コーラス)、秋吉ペレ(ベース/コーラス)から成る東京のロック・バンド。各人の活動を経て2017年に結成され、2019年の『Goodbye to you』から2022年のフル・アルバム『you & me』までコンスタントに作品を重ねる。2023年にレーベルを移籍し、“環七ラプソディー”“オレンジロード”“Oh my BABY”といったシングルを経て、このたびセカンド・アルバム『NEW OLDIES』(KURAMAE RECORDS)をリリースしたばかり。