堂本剛によるクリエイティブプロジェクト.ENDRECHERI.が、新曲“雑味 feat. George Clinton”を配信リリースした。9月の〈Blue Note Jazz Festival in JAPAN 2024〉で初披露された同楽曲は、ジョージ・クリントンをゲストに迎えたことでも大きな話題となっているが、.ENDRECHERI./堂本剛のクリエイティビィティの本質が露わとなったナンバーとしても非常に重要な1曲と言える。

Pファンクに魅了された堂本が憧れの存在を迎えて制作した“雑味”について、初披露のステージを目撃していた音楽ジャーナリストの林剛に考察してもらった。 *Mikiki編集部

.ENDRECHERI. 『雑味 feat. George Clinton』 ソニー(2024)

 

“雑味”に込められたファンクが持つ臭みと主張

9月下旬、2日間にわたって東京・有明アリーナで行われた〈Blue Note Jazz Festival in JAPAN 2024〉。その初日となる9月21日のステージにトップバッターとして登場したのが.ENDRECHERI.だった。当日は3組目にジョージ・クリントン率いるパーラメント・ファンカデリックのステージも控えていた。.ENDRECHERI.は、ジョージ・クリントンを総帥とするPファンクへの憧れが募って堂本剛が立ち上げたプロジェクト。この日のステージは彼(ら)の晴れ舞台であると同時に、パーラメント・ファンカデリックのショウへ橋渡しをするフロントアクト的な役目も担っていた。

そのステージで「ジョージ・クリントンをフィーチャーした新曲を出します」と言って披露したのが、10月9日に配信リリースされた約1年ぶりの新曲“雑味 feat. George Clinton”。ステージ上でのジョージとの共演はなかったが、同じ日の同じ舞台でパーラメント・ファンカデリックがパフォーマンスを行う前にジョージを招いた新曲を発表する。お披露目の場として、これ以上のシチュエーションはないだろう。

堂本剛名義で2002年にソロデビューを果たし、2005年にENDLICHERI☆ENDLICHERI、2018年にENDRECHERIへとそれぞれ改名、昨年からは名前の前後にドットをつけて.ENDRECHERI.となった。ENDLICHERI☆ENDLICHERIから数えれば来年で20周年となるこの一連のプロジェクトにとってジョージをフィーチャーした新曲を出すというのは、ひとつの到達点と言っていい。

ライブのMCで堂本も話していたように、新曲でのジョージとの共演は、昨年5月、埼玉の秩父で行われた〈Love Supreme Jazz Festival 2023〉のバックヤードでジョージ本人から曲の制作を持ちかけられたことが発端だった。当日は初日のヘッドライナーとしてパーラメント・ファンカデリックが出演し、“Flash Light”で堂本がギターで飛び入り。事前告知なしでのパフォーマンスで、堂本はまるで最初からステージにいたような素振りで堂々たるギターソロを披露した。ジョージからは好きなようにやれと言われたようだが、そこでのプレイが御大との距離を縮めたであろうことは想像に難くない。

公式サイトによれば、“雑味”(=That’s me)とは〈ありのままに生きようというメッセージを込めた1曲〉だという。不純物といったネガティブな意味で使われることが多い〈雑味〉だが、Pファンクのルーズで猥雑な音楽性を表したものだとすれば、新曲のタイトルはファンクが持つ臭みと〈これが自分だ〉という主張を掛け合わせたものだと解釈できる。