〈FUJI ROCK FESTIVAL ’25〉で初来日公演をおこなうカトリエル&パコ・アモロソ(CA7RIEL & Paco Amoroso)。近年、国際的に注目を集めるようになったアルゼンチン発のヒップホップデュオだ。2024年10月に公開されたNPRミュージック〈Tiny Desk Concerts〉でのライブ動画が話題になっており、フジロック出演決定を機にここ日本でも注目を集めつつある。そんな2人に惚れ込んだミュージシャン/ライターKotetsu Shoichiroに、彼らのことを紹介してもらった。 *Mikiki編集部
陽性の狂気や毒気あるラップでキャラ立ち抜群なデュオ
〈FUJI ROCK FESTIVAL ’25〉のラインナップが発表された。フレッド・アゲインとヴルフペック、ヴァンパイア・ウィークエンドを筆頭に、今年も豪華な来日アクトがずらりと並んでおり、例年以上の盛り上がりとなりそうだ。韓国からはBalming TigerやHYUKO、インドネシアからThe Panturas、西アフリカ・ニジェールのエムドゥ・モクターと、国際色豊かなラインナップもフジロックならではと言えるだろう。
そんな中、初来日アーティストの中でも注目すべき存在が、2日目に出演するカトリエル&パコ・アモロソだ。アルゼンチンの首都ブエノスアイレス出身のラッパー2人組で、日本ではまだあまり知られていないものの、昨年から一気に南米以外でもその名が知られ始めた気鋭のコンビである。
サブカルコミックから飛び出してきたようなキャッチーなビジュアル、テクニカルな音楽性とセックスやドラッグにまつわるオブセッシブな歌詞、そして甘いボーカル……陽性の狂気を感じさせる世界観は、タイラー・ザ・クリエイターのヘッズにも刺さるかも知れない。2人が並んだ時のシルエットは、日本のラッパーで言えばどんぐりずやNeibissのようでもあり(彼らに比べると、カトリエルのファッションはもっとワイルドだが)、キャラ立ちもインパクト充分だ。
南米音楽マニアに限らず、毒っ気のあるコミカルなラップや歌心のあるメロウなヒップホップが好きならば、絶対に聴いて損はしない音楽性のこの2人。これまでの経歴をざっとさらってみよう。
ミクスチャーからヒップホップに転向した同級生2人
カトリエルことカトリエル・ゲレイロ(Catriel Guerreiro)、そしてパコ・アモロソことウリセス・ゲリエーロ(Ulises Guerriero)はどちらも1993年生まれの31歳。小学校からの同級生であった2人は、2010年に仲間たちとアストール・イ・ラス・フローレス・デ・マルテ(Astor Y Las Flores De Marte)というバンドを結成。ギタリストの父を持ち、自身もパンテラやスティーヴ・ヴァイをカバーしていたカトリエルの技巧派なギターが映えるミクスチャーバンドであった。ウリセスは幼少期はバイオリンを学んでいたが、バンドではドラムを担当。
アンダーグラウンドではなく、より華々しい成功を求めたカトリエルは、バンドの活動からラッパーに転向し〈CA7RIEL〉として再出発する。そして自宅にスタジオを設け、2015年に最初のEP『×CVE7E×』をリリース。その後、カトリエルのライブにウリセスも参加することで自然とカトリエル&パコ・アモロソとしてのキャリアが始まった。
ラッパーのラリ・エスポジット(Lali Espósito)やデュキ(Duki)、プロデューサーのビサラップ(Bizarrap)などとの共作を経て、じわじわと国内のヒップホップシーンで存在感を示し始める。
2019年にリリースした“OUKE”は、アルゼンチンの人気俳優エステバン・ラモットがMVに参加した(リリックでも〈エステバンとマリファナを吸ってる〉と歌われる)ことも話題となり、国内でヒットを記録。この曲に限らず、彼らのMVはいずれも映画のワンシーンのように凝った演出と、バッドトリップを笑い飛ばすような不条理なギャグセンスに溢れていて、いずれも素晴らしい。