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METライブビューイング「フィデリオ」――ルネ・パーぺ25年ぶりのロッコ
ベートーヴェンが作曲に苦労、9年の歳月をかけて完成した唯一のオペラ「フィデリオ」が4月25日、METライブビューイングに初めて登場する。ドイツの演出家、ユルゲン・フリム(1941―2023)の手がけた2000年10月13日初演のプロダクションの再演だが、奇を衒わず物語を詳細まで描き尽くす手法はいまだ、賞味期限を過ぎていない。今回の再演は初演時にロッコを演じたドレスデン生まれの名バス歌手、ルネ・パーぺ(1964年生まれ)が再び同じ役を演じることでも大きな注目を集めた。
パーぺはドレスデン十字架合唱団(少年合唱団)から一貫して歌の道を歩み、東西に分かれていたドイツの再統一が実現した1990年以降、ザルツブルク音楽祭やバイロイト音楽祭など〈西側〉の舞台に進出し、瞬く間にトップクラスのキャリアを築いた。METでは先ず1992年6月、スペイン・セビリアのマエストランザ劇場でのツアー公演「フィデリオ「で評価を固め、1995年2月の「魔笛「でニューヨークの本拠にデビューした。以後、「ドン・ジョヴァンニ」「ローエングリン」「ニュルンンベルクのマイスタージンガー」「トリスタンとイゾルデ」「ニーベルングの指環(リング)4部作」「パルジファル」などのドイツ歌劇、ヴェルディの『ドン・カルロ」「マクベス」、フランス歌劇の「サムソンとデリラ」「ファウスト」、さらにロシア語の「ボリス・ゴドゥノフ」まで、膨大なレパートリーでコンスタントに出演を続けてきた。
だが「フィデリオ」のロッコは2度目、25年ぶりの出演だ。指揮はジェイムズ・レヴァインからフィンランド女性のスザンナ・マルッキ、レオノーレ(フィデリオ)はカリータ・マッティラからリーゼ・ダーヴィドセン、フロレスタンはベン・ヘップナーからデイヴィッド・バット・フィリップに替わった中、初演キャストのパーペの健在は嬉しい。
2025年3月15日の上演を収録したライブビューイングの幕あい、テノール歌手ベン・ブリスのインタヴューでパーぺは「ロッコ役のキャラクター、フリム演出は25年前と同じながら、私の年齢がようやく役柄に追いつきました。要求水準の高い作品を、最良の仲間たちとともに奏で られるのは最高です」と語った。「ベートーヴェンの基本は交響曲の作曲家であり、歌いにくい箇所もありますが、それこそ、まさにベートーヴェン。私たちは交響曲と深く結びついたベートーヴェンの音楽に立ち向かっているのです」
INFORMATION
MET ライブビューイング ベートーヴェン《フィデリオ》

上映期間:2025年4月25日(金)~2025年5月1日(木) ※東劇のみ2025年5月8日(木)まで
指揮:スザンナ・マルッキ
演出:ユルゲン・フリム
出演:リーゼ・ダーヴィドセン、イン・ファン、デイヴィッド・バット・フィリップ、 マグヌス・ディートリヒ、トマシュ・コニエチュニ、ルネ・パーペ、スティーヴン・ミリング ほか
MET上演日:2025年3月15日
上映予定時間:2時間56分(休憩1回)
上映館:東劇・新宿ピカデリーほか全国21館
https://www.shochiku.co.jp/met/program/6004/