21世紀の大事件となる4人組が登場! 破壊衝動と無垢さに溢れたファーストEPの先に見据える、パンク革命の夢とは?

 「ドラムスの田中タケルと会った日のことはよく覚えています。早朝ピストンズのライヴで出会ったんですけど、俺、そこに行く前にズボンのお尻が破れて。知らないおばさんの家で縫ってもらったんですよ」(鎌形カヅキ/ヴォーカル)。

 と、強面のヴィジュアルからは想像しがたい(?)ハートフルなエピソードをいきなり披露してくれたのが、高円寺二万電圧などを中心に活動するハードコア・パンク・バンドの絆創攻(ばんそうこう)だ。2022年、カヅキが河合ユウマ(ギター)、安藤ジンタ(ベース)を誘い、そこにタケルが加わる形で結成され、2024年にファースト・シングル『東狂機関銃』、ファースト・アルバム『絆創攻』を配信で発表。衝動のままに音を鳴らす演奏、苛立ちからロマンまでピュアな感情を正直な言葉に託した歌詞がパンク・シーンで旋風を巻き起こしている。

 「親父が怒髪天をすごく好きで、なんとなく俺も聴くようになり、そこからスターリンやINUとかを発見したんです。〈こんなかっこいい音楽あったんや〉と夢中になりました」(カヅキ)。

 そんなパンクの恩人とも言える怒髪天の増子直純がこのたびKOGAからリリースされた初の全国流通盤『二十一世紀の大事件』に〈絆創攻は令和の希望の光かも知れねぇゾ!〉とコメントを寄せるのだから、世の中捨てたものじゃない。

 「制作にあたって、バラバラな4曲を入れたいねと話していました。スカっぽい“ルナティック”なんかは初めての挑戦。いまでも演奏はむずいっす」(河合ユウマ)。

 「ずっとスチャスチャ鳴っていて、歌詞が飛ぶとわからなくなる(笑)」(カヅキ)。

絆創攻 『二十一世紀ノ大事件』 KOGA(2025)

 そのほか「ニュースクールを意識した」(田中タケル)という“生きてる”、カヅキが「ライヴでフロアがめちゃくちゃになって楽しい」と話す“破壊衝動”が並ぶなか、特にキャッチーなのが1曲目の“少年ダイナマイト”。無垢さと破壊願望をプリミティヴなパンクに同居させている。

 「歌詞がストレートだったんで、わかりやすい曲をめざしました」(ユウマ)。

 『二十一世紀の大事件』に収められている汗や血にまみれたパンク・ボムはいまにも爆発しそうだ。カヅキは「なんかすげえことになるといいな」と語るが、NO FUTUREな彼らの描く未来とは?

 「あえて言うなら武道館かな」(カヅキ)。

 「パンクを聴く若者を増やして、パンクのシーンを盛り上げたいです」(ユウマ)。

 「生きていたら辛いことばっかだけど、パンクのライヴハウスででけぇ音を浴びて、酒を飲んで、暴れたら、嫌なことを忘れることができる。それは本当にいいことなんで」(カヅキ)。