
家庭に仕事に、トリスタン・ディスコ解散の裏話
大熊「トリスタンは盛り上がっていくかと思ってたけど、あっという間に消えちゃった。2年で終わったの?」
園原「巣山のドラムは俺が録り溜めてたから、それを使って勝手にダブを作って、それでアルバムができるようにしてた。それを使ったのが(次のユニットの)スパナ。あと、他にも適当に作ったな……」
大熊「トリスタンはどういう風に終わったの? 上田さんが北海道に帰ることになったから?」
園原「それでトリスタンの名前で最後にキッチンから作品(『Demonstration Takes』1982年)を出して、並行して白石と俺はMLDをやるようになった」
――なので、トリスタンは1983年頃になるとスパナ、つまりよりポップなユニットになったんですよね。
巣山「自然消滅じゃないけど、急にフェイドアウトしちゃって」
園原「ほら、巣山がいよいよ結婚しようと思ってた時期で、あまりにも俺に呼び出されて休みをつぶされちゃうから奥さんに怒られたんだよ」
巣山「うちの奥さんの裏工作があったらしい。直接行ったこともあったんでしょ?」
園原「俺にクレームが入っちゃった。食えるわけじゃないのに、あんたらいつまでも何をやってるのって(笑)。……ってことは終わりじゃん。それを本人には言いにくいし、〈分かった、巣山は自由にするから〉と奥さんに言って。それも意識して最後にドラムを録り溜めてくれたのかも。
そういうわけでトリスタンは消えた。俺も〈いい加減働きなさい〉と言われて仕事を始めたから、しばらく音楽を離れたんじゃないかな」
大熊「ところで田島はどうしてるかな?」
園原「芦川聡さん※を継いでアール・ヴィヴァンの店長になったのは知ってる」
大熊「最初にトリスタンのリハをやった時、彼はチョッパーが好きで音数が多すぎて、〈もうちょっと減らしてくれ、じゃないと俺が弾く隙間ないじゃん(笑)〉と話したのを覚えてる」
園原「〈この曲がいい〉とか〈このコードがどう〉とかは話さないけど、互いの演奏の噛み合わせやアレンジの話はすごくしてた。リズムパターンや音の雰囲気とか、その辺について一番言い合える仲だった。
サックスの山崎さんが入ってきたのは覚えてる?」
大熊「あまり覚えてないな」
園原「大塚のスタジオペンタ1号店に練習で通ってたのは覚えてるでしょ? あそこでトリスタンのリハをやってた時、隣の部屋でサックスを吹いてた奴が声を掛けてきたんだよ。〈おたくら、かっこいい音出してるね。ファンク?〉って。当時、マイルス(・デイヴィス)みたいにトランペットにディレイをかけてみたいと思ってたところにサックス野郎が来たから、〈うちらのサウンドでサックスを吹いてみる気ない?〉と聞いたら、〈やってみたいですね〉と言ってくれて」
大熊「改めてCDを聴いたらちゃんと吹けてるし、曲によっては(トラン)ペットも入ってるよね」
園原「ライブの時? じゃあ、トランペットも連れて来たんだ」
巣山「だから、うるさい(笑)」
園原「それをダブで誤魔化してる。この曲は吹くなって言っても吹いてたりするから」
巣山「みんな〈やりたいやりたい〉って感じだったからね。もうちょっと練れば面白くなっただろうけど」
園原「あと面白かったのは、大熊がセッティングしてくれたのか知らないけど、横須賀のドブ板だっけ……?」
大熊「ああ、潰れたディスコで1ヵ月やったイベントね」
園原「それに出演した時は吉祥寺のライブをやった後で、こなれててかっこよかった」
巣山「めちゃくちゃファンキーな感じでやったね」
園原「上田君の出鱈目ボーカルも手慣れてきててね」
大熊「そのライブは覚えてないけど、同じ頃そこに解散直前の絶対零度でも出た。多分そこのイベントをやってる人たちがいろんなバンドをチェックして、声を掛けてたんだと思う」
園原「思い出したけど、マングースに広瀬が歌っていた“すでに”って曲があったんだよね。〈すーでーにっ〉と歌い始めて、いきなりドラムが始まる。あれは(町田の)つくし野スタジオってところで録った」
巣山「徹夜でやったね」
園原「夜中は安いからって。かわいそうなのが、巣山は当時スネア1個で練習してたんだよな(笑)」
巣山「ドラムセットがなかったから(笑)」
園原「合宿所でハイハットとスネア1個だけで表現して、ツェッペリンを3人でやってた。
それをカセットで録ったのを友達のお兄ちゃんに聴かせたら〈おまえらめちゃくちゃかっこいいじゃん、自分たちのオリジナルをやれよ〉と言ってくれたんだよね。で、田舎に帰った時、弟の方に〈東京でバンドやってる〉と言ったら〈兄ちゃんは今東京に行ってる〉と言うから、その兄貴に連絡して来てもらって録音した。本格的な録音だから、ハイハットとかもきれいに録ってくれてる」
大熊「マルチトラックで録ったの?」
園原「確かそう。8トラかな。ちゃんとハイハットやベードラだけにマイクを立てて録るなんて初めてだった」