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偶然を装った必然

 こうしたカトのラッパー活動が軌道に乗ると、アストールは自然消滅。しかしカトは、ケンドリック・ラマーやダニー・ブラウンを愛聴していたパコをステージに招き、次第に二人の絶妙なコンビネーションが話題になった。これを受けて、2018年にはカトリエル&パコ・アモロソ名義で初の楽曲“Piola”を発表。トラップ・ビートにメロウなウワモノを乗せたスタイルは、この時点で確立していた。

 その後、COVID-19の影響もあり、二人はソロ活動に専念するが、カトはセカンド・ソロ・アルバム『EL DISKO』でラテン・グラミーにノミネート、パコのシングル“Las Vegas Strip”と“Mi Deseo”はいずれも100万回再生突破と、それぞれが成功。2022年にはタッグとしての活動を再開し、2024年、ジャスティン・ティンバーレイクなどを手掛けたフェデリコ・ヴィンドヴァーらをプロデューサーに迎えたファースト・アルバム『BAÑO MARÍA』(日本語で〈湯煎〉の意)を発表。ラテン・ポップ、フュージョン、EDM、ハウス、ロックなど、二人が吸収してきたあらゆる音楽が、まさに煮汁のように滲み出た野心作だった。

 同作はプログラミング主体だったものの、ツアーではかつてのバンド仲間であるベーシスト、フェリペ・ブランディらを招集。身銭を切って実現させた生演奏主体のライヴで、幅広いリスナーからの支持も獲得する。そして、そこで培われたグルーヴを武器に、2週間の特訓を経て挑んだのが、〈Tiny Disk Concert〉のパフォーマンスであり、その成果をスタジオで再構築してみせたのが、生演奏の度合いが増したオーガニックかつシックな『PAPOTA』というわけだ。

 笑いと哀愁、ラフさと技巧、ヒップホップとロック、そして熱き友情。あらゆる矛盾と魅力を抱えたこのデュオにはスターに必要な〈華〉がある。だがその華の裏には積み重ねた時間がある。カトパコは、偶然を装った必然で、いま世界の耳をさらっているのだ。

カトリエル&パコ・アモロソの客演曲を収録したナティ・ペルソの2024年作『Grasa』(5020)

カトリエルの客演曲を収録した作品を紹介。
左から、A.N.I.M.A.L.の2022年作『Intimo Y Extremo - 30 Anos』、ラリの2022年作『Lali』、バーヴィの2021年作『Cinema』(すべてSony)、ヴィック・ミララスの2021年作『Crucidramas』(Warner)