歌えるメロディを求めて
――高中さんの曲は口ずさめるようにメロディアスで、その点で数あるインストフュージョンな中でも群を抜いていると思うのですが、それは意識的にやってこられた事なのでしょうか。
「僕は1stアルバムを出す時に歌おうと思ったんだけど、音程があまり良くないと言われてプロデューサーに却下されて、じゃあどうしようかと考えたわけ。ギターが主役なんだけどあまりジャズ的にテクニカルなソロばかり弾くんじゃなくて、歌メロのように弾けばいいんじゃないか、そして歌はアルバム1枚に2曲くらいにしようかと……。参考にしたサンタナのアルバムもインストの部分が多かったからね。
ただ、前例がなかったので、当時スーパーマーケットのBGMで流れていたような歌のない歌謡曲みたいにならずに、洋楽ロックファンも納得するようなインストを作るにはどうすればよいのか? そこは試行錯誤の連続だったね。だから、僕の曲は歌えるギターメロディなんだと思うよ」
――もう、海外からたくさんライブのオファーが入っているのですね。
「まだ詳しく発表していないけど、ほぼ決まっているのはアメリカ4都市、ロンドン、オーストラリアがシドニーとメルボルン、中国は前回は上海だけだったけど今回は北京にも行くよ」
編集中に声援を聴いてウルウルしちゃった
――Blu-rayになったLA公演の前に上海公演があったわけですが、その時の感想はいかがでしたか。
「中国は初めて行ったんだけど、上海は近代化された普通にナウい都市だった(笑)。前回の上海公演はそれこそ何十年ぶりかの海外公演だったので、大丈夫だろうか?という不安もあったんだけど、あそこで盛り上がったことで、その後に控えていたLA公演も大丈夫だと確信できた。そしてロサンゼルスでも大きな声援をもらえた。だからもう、ヨーロッパやオーストラリアへ行っても緊張しないし、楽しみだよ(笑)」
――LA公演は最初から映像化することに決めていたのですか。
「毎年、DVDやBlu-rayはリリースしてきたけど、アメリカでは撮ったことがないので今回は絶対に撮るべきだというのが僕の意見だった。でも、すごくお金がかかるのでクラウドファンディングという形でファンからお金を出してもらって実現することができた。だから、協力してくれたファンの名前がライナーに印刷してあるし、エンドロールでも流れてるよ」
――録音や撮影のスタッフは日本から同行したのですか。
「PAのスタッフは日本から連れてって、撮影のスタッフは日本からと現地の人との半々」
――録音もカメラワークも最高ですね。しかも、何よりもギターもボーカルもバンドの演奏も、これまでの集大成と言っていいくらいの完成度だったと思いました。
「そりゃ、よかった。まあ、それなりに進歩してるということで(笑)。じつはライブはずっと毎回、録音して、後で聴いて反省して、メンバーにも伝えて……それを何十年も続けてきた。まあ、それが趣味だからね(笑)。いい音が出てたら自分でも気持ちいいでしょ? 夜、寝る前に聴いて、あ~いい音出てるな~なんてニコニコしながら寝たいんだよ(笑)」
――会場はいかがでしたか?
「もちろん初めての会場なんだけど、やりやすかった。目一杯入れて3,000人弱なのかな。日比谷野音と同じくらいだと思う。お客さんの反応もよかった。一緒にメロディを歌ってる人、踊ってる人がいて、声援も大きかったしね。Blu-rayの編集をしているときに、お客さんの声が音声に入ってるのを聴いて、改めて〈こんなにウケてたんだ……〉って感激して、ウルウルしちゃったくらい(笑)」
――セットリストは何か工夫したのですか。
「スタッフがほとんど考えてくれていて、僕からのぜひ演りたいという曲も少し加えてもらってる。選曲に関しては、Spotifyで人気のあるアルバムや曲が分かるので、それを参考にしたりしてる。例えば、僕としてはちょっと恥ずかしいボーカル曲の“トーキョーレギー”がアメリカですごく人気があるからセットリストに加えよう、とかね」
――「夢はグラミー賞」というMCも、ついにアメリカで話しましたね。今年の国内ツアーの後、全米ツアーも控えてますから、グラミー賞もあながち夢ではなくて現実味を帯びてきたのでは?
「70年代当時からジョージ・ベンソンとかサンタナがグラミー賞をとってるのを見て、インストでも賞をとれるんだと分かったから、僕も冗談半分で言ってきたんだけどね(笑)。夢を見るのはタダだし、楽しいし、いいことだと思うよ。でも、本気でグラミー賞をとりたいなら新曲を作らないといけないね」