終わりでいいと思えるほどの音楽を作りたい――真摯な気持ちを原動力にするバンドがみずからの大切なものを正直に、等身大で曝け出した新作『メジャーな音楽』を完成!!
全国各地でライヴを精力的に展開中の終活クラブが、満を持してメジャー初のアルバム、その名も『メジャーな音楽』を完成させた。本作からはキャッチーでダンサブルなロック、そこに潜ませたユーモアなど、従来のチャーム・ポイントはもちろん、いい意味でのシリアスさ、もがき苦しんで生み出した真摯さなども垣間見える。
「インディーズの頃では書けなかった曲がたくさん書けたアルバムですね。というのも、活動するうちに〈メジャーとはなんだ?〉と思うようになって。広めてくれるスタッフが増えたぶん、もっと多くの人に刺さる曲にしたいじゃないですか。で、リファレンスありきで作ったり、最近のトレンドを取り入れたりしてみたんですけど、二番煎じ感が気持ち悪くて上手くいかず……。考えすぎたがゆえに曲がまったく出来ない経験もしました。でも、思い立ってやってみては悩むこの積み重ねが、僕らにとっての〈メジャーな音楽〉になっていくんだろうなと感じてます」(少年あああああ、ヴォーカル/ギター:以下同)。
現状や先行きを考えずにいられないのは、〈人生を最高に終わらせたい〉バンドだからこそ。加えて“劇伴”の〈ずっと好きだった漫画が打ち切りになってしまう〉との一節を聴けば汲み取れるように、彼らはマイノリティー的な気質がやや強く、マジョリティー的な立場を味わう機会も含むメジャーの環境で葛藤するのは必然だったのかもしれない。
「マジョリティーにはなりたいんですけど、性格的に無理なんですよ(笑)。がんばって多数派に馴染もうとしている少数派気質の人に、終活クラブの音楽が届けばいいなと思います。ただ、アルバムを聴いて感じるのが、マイノリティーだろうと絶対に諦めてないんですよね。そこが自分たちらしい」。
アッパーで勢いのある“インターネットやめたい”、現在進行形の恋愛を初めて歌った“恋”、詩的で寂寥感を湛えた“幽霊”。アルバムに先駆けて配信したこの3曲から、バンドの意識は大きく変わったという。
「〈踊れる〉〈楽しい〉部分しか魅力が伝わってない気がしたんです。なので、配信シングルを通して終活クラブの円を広げたいなと意識していました。同時に、歌詞が少し正直になったと思います。メディアに顔を見せてないこともあり、ミステリアスでいようとしたこともあったけど、背伸びはダメだなって。人間性を以前より隠さなくなったかな。“インターネットやめたい”は制作の苦悩だけじゃなく、〈架空請求を父親が払った〉とかのエピソードもすべて僕の実話ですから(笑)。そして、この曲のギター・ソロの入りは全ギタリストがやりたいものだと思うので、ぜひ聴いてください。あと“恋”は大きな挑戦でしたね。バンドの状況を変えたいなら振り切らないと意味がないし、たとえばタイアップとかをいただいたときに、意向に合った曲を書けない自分にはなりたくなかった。これまで拒絶していたラヴソングを、恋に落ちたら口ずさんじゃう主人公を描いていたり、めっちゃオタクっぽい曲ですが、アレンジャーとして迎えたthe band apartの木暮栄一さんにテンポ速めのポップな仕上がりにしてもらえて、最高の出来になりました。“幽霊”は、普段は忘れている出来事って幽霊みたいに心に残ってるなと感じたのがきっかけ。バンドのコンセプトにもなってる〈やさしいおばけ〉をイメージしつつ、ピアノやストリングスも散りばめました」。
ディストピア感のあるシンセ・リフが轟く“地球破壊のマーチ”やボカロ系プロデューサーのnamitapeがアレンジを手掛けた4つ打ちEDM“エキチカダンスフロア”など、ほかにも強力なナンバーが並ぶ『メジャーな音楽』。なかでも、タイトル曲と最終曲の“無名芸術”は決意表明のような響きを持つ。
「お客さんと一緒にライヴを作るのと同じように、僕らを好きでいてくれる人と一緒に書いたような感覚の曲はもっとも自信を持って出せる。そうやって大切なものを改めて示したかったのが“メジャーな音楽”。たとえ悩み苦しんだとしても、夢に向かって足掻き続けていくことを誓ったのが“無名芸術”です。それが終活クラブのあるべき姿なんじゃないかと思う。終わったら1曲目の“劇伴”に戻りたくなる構成も気に入ってますね」。
11月からは東名阪CLUB QUATTROツアーがスタートと、確固たる意志でメジャー・フィールドを突き進む終活クラブ。今後の躍進も楽しみだ。
木暮栄一の参加作を一部紹介。
左から、the band apartの2022年作『Ninja of Four』(asian gothic label)、KOGREY DONUTSの2021年作『NIKKI』(HKWDI Soundz)
終活クラブの作品。
左から、2024年のEP『ハイパー005』『終活新布教盤』(共にバップ)、2024年作『終活のてびき』 、2023年のEP『終活大布教盤』、2022年作『終活のススメ』(すべてKIZUNA)