©Johnny Millar

ザ・シックスティーン来日記念盤『パレストリーナ 音楽の貴公子』

 世界最高峰の合唱団ザ・シックスティーンが2025年11月、実に21年ぶりに来日する。

 結成45年を誇るザ・シックスティーンの最大の特徴は〈人間の声の力〉を高らかに謳う圧倒的な表現力にある。そんな特徴から彼らの主要なレパートリーであるルネサンス音楽の中でも特に表出力の強いビクトリアを得意とするザ・シックスティーンが、ルネサンス・ポリフォニーの王道であるパレストリーナの作品を生誕500年に向けて体系的に録音すると知った時、私はその意外性に驚いた。師弟関係にありながら対照的な作風を持つルネサンス後期の二人の大作曲家。それまであまりパレストリーナ作品を取り上げてこなかったザ・シックスティーンがどのようにパレストリーナを歌うのか。結果的に彼らは自分たちのアプローチを貫きながらパレストリーナを見事に表現した。

THE SIXTEEN 『パレストリーナ 音楽の貴公子』 CORO(2025)

 1枚のCDに、ミサ曲とモテットと“ソロモンの雅歌”を組み合わせるというシリーズを通した秀逸なプログラム。作曲における数多くの制約の中で、カトリックの教義に沿った敬虔さを表す教会音楽を完璧に作り上げたパレストリーナの作品の中にあって、マドリガーレ的書法を取り入れた“ソロモンの雅歌”は異彩を放っている。その官能性を前面に押し出す歌唱によって敬虔なミサ曲やモテットとの対照性を浮き彫りにし、多角的なパレストリーナ像を打ち立てているのである。まさに圧倒的な表現力・歌唱力を持つザ・シックスティーンならではの見事なアプローチだ。

 来日記念盤には、このパレストリーナの一連のシリーズからの曲目に加えて、来日公演曲目となるアルヴォ・ペルトとジェイムズ・マクミランというザ・シックスティーンとつながりのある現代教会音楽の巨匠の作品も収めているので、コンサートの予習には最適だ。

 ザ・シックスティーンの圧倒的歌唱と表現力をコンサート会場で直接体験できる格好の機会を逃す手はないだろう。

 


LIVE INFORMATION
2004年以来21年ぶりの来⽇公演。
美しいハーモニーに酔う⾄極の2時間!

2025年11月20日(木)東京オペラシティコンサートホール
開演:19:00

2025年11月21日(金)海老名市文化会館 120サロン(神奈川)
開演:17:00 マスタークラス

2025年11月22日(土)相模女子大学グリーンホール(神奈川)
開演:14:00

2025年11月23日(日)バロックザール(京都)
開演:15:00

2025年11月24日(月・祝)アクロス福岡
開演:15:00

■曲⽬
パレストリーナ:ミサ曲《兄弟たちよ、わたしは主から受けたことを》から「キリエ」「グローリア」
ペルト:主よ、平和を与えたまえ(2006)
パレストリーナ:《ソロモンの雅歌》から第16番 「わが愛する者よ、⽴って」
マクミラン:《ストラスクライドのモテット集》(2005~07)から「その⼿を差し伸べ」
パレストリーナ:《ソロモンの雅歌》から第18番「わたしは今起きて、町をまわり歩き」
パレストリーナ:⼤いに尊敬されるべきは
パレストリーナ:スターバト・マーテル
パレストリーナ:ミサ曲《ドレミファソラ》(ヘクサコルド・ミサ)から「クレド」
パレストリーナ:《ソロモンの雅歌》から第4番「わたしは⾃分のぶどう園を守らなかった」
マクミラン:《ストラスクライドのモテット集》(2005~07)から「とこしえの王として、主は御座をおく」
パレストリーナ:《ソロモンの雅歌》から第6番「あなたのほおは美しく飾られ」
ペルト:カエサルを讃えて(1997)
パレストリーナ:わたしたちはこれらの町が受けた苦難のことを聞き
パレストリーナ:ミサ曲《ドレミファソラ》(ヘクサコルド・ミサ)から「アニュス・デイI & II」

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