オーストラリア・ビクトリア州を拠点に活動するネオシティポップアーティスト、ジュン・パーカーが、新作EP『色褪せたフォトグラフ(Faded Photograph)』を配信リリースした。本作は〈CASSETTE WEEK JAPAN 2025〉の開催に合わせて、2025年10月13日にカセットで先行リリースされている。
昭和的ロマンとセンチメンタリズム、そして80年代ブラックコンテンポラリーのグルーヴが交差する表題曲“色褪せたフォトグラフ”をはじめ、コロナ禍の国境閉鎖中、オーストラリアの田舎を車で旅しながら生まれた切ないファンクバラード“Omoide Beaver”など、ソングライターとしてのジュン・パーカーが新たなステージへ踏み出したことを示す4曲を収録している。
本作のアートワークを手がけたのは、都市の風景を静かに切り取るイラストレーター・坂内拓。ジュン・パーカーの音楽に寄り添うそのミニマルな世界観は、どのようにして生まれたのか。今回はジュン・パーカーと坂内による対談が実現。2人の作品づくりの背景をはじめ、坂内が影響を受けたイギリス滞在時代の経験、そして創作における音楽の存在とその影響についても、じっくりと語られている。

イギリス文化から影響を受けたイラストレーター坂内拓
――まず今回どのようにコラボレーションが実現したのでしょうか?
ジュン・パーカー「Pinterestで今作に合う世界観のイラストレーターを探していて、坂内さんのイラストを見つけたんです」
――坂内さんがオファーを受けた理由はありますか?
坂内拓「制作中は音楽をかけることも多くて、曲を聴いて作品の方向が決まることもあるくらい音楽には助けてもらっています。なので、ミュージシャンの方からのオファーは前向きな気持ちでお受けすることが多いです。今回もジュンさんから連絡をもらった時はとても嬉しかったです」
――普段どのような音楽を聴いていますか?
坂内「元々は、ザ・ポーグスやザ・スミス、ザ・パステルズなどUK寄りの音楽が好きでした。好きな映画や音楽をテーマに展示をしたこともあります。映画のサントラから好きになる曲も多いです。
制作中は、ハウディやオーキッド・マンティス、フォグ・レイクといったアーティストたちのゆったりした曲や、日本だと池間由布子さんや寺尾紗穂さんなどの作品もよく流しています」
――イギリスの音楽がお好きなんですね。
坂内「音楽のみならず、イギリスの存在自体、自分の中では大きいですね。それこそ、大学在学中から何度もイギリスを訪れました。ザ・スミスが誕生したマンチェスターやザ・パステルズの出身地グラスゴーにも、とにかく行けば何かがある気がして列車を乗り継いで行ってみたり(笑)。当時のマンチェスターは今のように観光地ではなく、駅を降りると目の前にある工場から黒い煙が濛々と立っていて、〈こんなところから早く抜け出したい〉とモリッシーが感じていたような殺風景な景色が広がっていたのが印象的でした。大学を卒業した後も、本来なら就職活動をすべきでしたが、働く覚悟ができず、またイギリスに渡って3ヶ月程滞在しました」

ジュン「3ヶ月もいたんですね。どこに滞在していたんですか?」
坂内「ブライトンの隣駅、プレストンパークに滞在していました。ブライトンは映画『さらば青春の光』の舞台でもあったので、ずっとあこがれていたんです。実際に訪れて、映画のシーンを真似て海岸で走ったりしました。
週末になるとカーブーツといって、フリーマーケットのようなものがあちこちで開かれていて、新聞に載っている開催情報をチェックして巡っていました。日本のフリーマーケットは比較的きれいなもの、まだ使えるものを売っている印象ですが、イギリスでは使い古したフォークやお皿、アンティークがほとんどで、破れた箇所を縫って売っている服なんかもあるんです。でも、〈次の人につないでいこう〉という姿勢があるのがいいなと思って」