夜明けのメロディーを紡いで始まった彼らのアルバム・ディスコグラフィーは、ここで終わりを迎える。そして、ダークな電子音が奏でる避けられない終わりの先にあるものとは……

もっとも誠実に作ったアルバム

 「これが最後のアルバムになる」――4年ぶりとなるオリジナル・アルバム『The Inevitable End』のリリース・アナウンスと共に届けられた、ロイクソップからの声明に戸惑いを感じた人も多いだろう。〈避けられない終わり〉を意味するタイトル通り、トルビョルン・ブラントンとスヴェイン・ベルゲの2人は、この作品で〈アルバムを通じて音楽を届ける手法〉に何かしらの到達点を見い出し、区切りを付けることとしたのだ。ただし、決して活動休止や解散するわけではないので、誤解のないよう。

 「2001年に『Melody A.M.』をリリースしてから『The Inevitable End』に至るまで、僕らは幸いなことにアルバムを通して自分たちの伝えたいことを表現できた。でも、そのサイクルに〈避けられない終わり〉を感じたんだ。今後は10数曲かけて世界を描くのではなく、もっと少ない曲数でそれを表現していきたくなったんだよね」(トルビョルン・ブラントン:以下同)。

RÖYKSOPP『The Inevitable End』 Dog Triumph/BEAT(2014)

 デビュー以来、時代の流れとは無関係に自分たちの望む音楽を探求し続けてきた彼ら。アルバム制作からの引退宣言は、新たな世界に踏み出すための必要なプロセスなのかもしれない。しかし、ここに完成した新作は華々しい未来や希望を描いたものではなく、哀しみやダークな気分を表現しているという。

 「どうしてダークな内容になったのかって? インスピレーションの要因となった出来事が何なのか、実はよくわからないんだ。というか、過去を振り返ってみても、自分たちの音楽がどういうことにインスパイアされて作られたのか、明確な答えを出すことができないんだよ。すべてのものが交ざり合い、それがロイクソップのインスピレーションとなる。ライヴで観客の嬉しそうな顔を見た時──例えばそういう良いことからインスピレーションを受ける時もあるし、悲しみ、疑い、痛みなども音楽を作るきっかけとなる題材だ。作るにあたって〈これをしなくちゃいけない〉という衝動しかないんだよ」。

 衝動に導かれ、追求したダークな音世界。ダウンテンポやエレクトロニカ、ニューウェイヴィーなダンス・ポップなど曲調はさまざまだが、どれも「人間の持つ温かみを加えること」を大切にしたとトルビョルンは説明する。

 「〈ダークだけど、多くの人に受け入れてもらえる音楽はないか!?〉ということを追求した。ここで示す〈ダーク〉とは肉体的な恐怖ではなく、精神的な痛みや悲しみのことだね。それを伝えるために、僕らは丁寧に慎重に作業したよ。これまででもっとも誠実に取り組んだ作品なんじゃないかなって思うね」。