夜明けのメロディーを紡いで始まった彼らのアルバム・ディスコグラフィーは、ここで終わりを迎える。そして、ダークな電子音が奏でる避けられない終わりの先にあるものとは……
もっとも誠実に作ったアルバム
「これが最後のアルバムになる」――4年ぶりとなるオリジナル・アルバム『The Inevitable End』のリリース・アナウンスと共に届けられた、ロイクソップからの声明に戸惑いを感じた人も多いだろう。〈避けられない終わり〉を意味するタイトル通り、トルビョルン・ブラントンとスヴェイン・ベルゲの2人は、この作品で〈アルバムを通じて音楽を届ける手法〉に何かしらの到達点を見い出し、区切りを付けることとしたのだ。ただし、決して活動休止や解散するわけではないので、誤解のないよう。
「2001年に『Melody A.M.』をリリースしてから『The Inevitable End』に至るまで、僕らは幸いなことにアルバムを通して自分たちの伝えたいことを表現できた。でも、そのサイクルに〈避けられない終わり〉を感じたんだ。今後は10数曲かけて世界を描くのではなく、もっと少ない曲数でそれを表現していきたくなったんだよね」(トルビョルン・ブラントン:以下同)。

デビュー以来、時代の流れとは無関係に自分たちの望む音楽を探求し続けてきた彼ら。アルバム制作からの引退宣言は、新たな世界に踏み出すための必要なプロセスなのかもしれない。しかし、ここに完成した新作は華々しい未来や希望を描いたものではなく、哀しみやダークな気分を表現しているという。
「どうしてダークな内容になったのかって? インスピレーションの要因となった出来事が何なのか、実はよくわからないんだ。というか、過去を振り返ってみても、自分たちの音楽がどういうことにインスパイアされて作られたのか、明確な答えを出すことができないんだよ。すべてのものが交ざり合い、それがロイクソップのインスピレーションとなる。ライヴで観客の嬉しそうな顔を見た時──例えばそういう良いことからインスピレーションを受ける時もあるし、悲しみ、疑い、痛みなども音楽を作るきっかけとなる題材だ。作るにあたって〈これをしなくちゃいけない〉という衝動しかないんだよ」。
衝動に導かれ、追求したダークな音世界。ダウンテンポやエレクトロニカ、ニューウェイヴィーなダンス・ポップなど曲調はさまざまだが、どれも「人間の持つ温かみを加えること」を大切にしたとトルビョルンは説明する。
「〈ダークだけど、多くの人に受け入れてもらえる音楽はないか!?〉ということを追求した。ここで示す〈ダーク〉とは肉体的な恐怖ではなく、精神的な痛みや悲しみのことだね。それを伝えるために、僕らは丁寧に慎重に作業したよ。これまででもっとも誠実に取り組んだ作品なんじゃないかなって思うね」。
意味のある構成
本作には、今年の春に話題を呼んだユニット、ロイクソップ&ロビンでコラボレーションし、いまや盟友と言って差し支えないロビンをはじめ、ウェールズを拠点に活躍するライアン・ジェイムズ(エレクトロ・デュオ、マン・ウィズアウト・カントリーの片割れ)、パフォーマンス集団のイレプレッシブルズを束ねるジェイミー・マクダーモット、過去にビョークのバック・コーラスなども担当した同郷ノルウェーのスザンヌ・サンドフォーがゲスト・ヴォーカリストとして参加。また、冒頭と本編のラストを飾る楽曲では、トルビョルンとスヴェインみずからの声をヴォコーダー加工している。
「ヴォコーダーを通じて自分たちの感情を示すことができるようになったんだ。特に“Thank You”には、従来の〈ヴォーカル〉と呼ばれる要素を一切含んでいない。使用しているのはヴォコーダー加工された言葉の断片のみだよ。それでも、誰かがリスナーのために直接歌いかけているように聴こえると思う。ヴォコーダーは大抵、ギミックやエフェクトのように使われるけど、ここではそれを独特かつソウルフルな〈声〉として扱った。これを成功させるには、ある種の見識が必要になってくると思う。僕たちにはそういう見識や成熟度も備わっていると信じているよ。ギミックとして使うのではなく、表現の手段として使えていると思うし、真の表現のために使用しているんだ」。
ヴォコーダー・ヴォイスを用いた曲が、最初と最後に収録されている結果だろうか、アルバムの曲順にはストーリー性を感じることができる。
「うん。曲から曲の流れがストーリーや進展を暗示しているんだ。〈進展〉とは人生における進展や感情の進展だね。ワクワクする感情、元気いっぱいの感情、深い愛情、疑いの念、過剰なこと、喪失感、悲しみ、そういったものを経て最終的に何かしらの結論に至る。だけど、そのストーリーを具体的に僕たちがリスナーに対して説明するのは違うと思うな。だって、それはリスナーが決めることだからね。強いて付け加えるとすれば、このアルバムを最初から最後まで聴くと、ある種の旅に参加できるような構成になっている……ってことかな。意味のある構成だよ」。
痛みや悲しみというダークな感情をベースに、聴き手ひとりひとりに異なる風景を見せてくれる『The Inevitable End』。初作『Melody A.M.』収録の“Eple”や、2009年作『Junior』に収録された“Happy Up Here”に代表されるような、明るくて派手な印象のトラックはないが、心の隙間にそっと忍び込む親しみやすさが全体に流れていて、じっくり聴きたくなる内容だ。そんな新作をリリースした後、2人はどのような活動を展開していくのだろうか。
「〈こういう音楽があってもいいのに〉という思いが音作りの起点になっていて、その姿勢は今後も変わらないと思う。ただ、将来もしかしたらソフト・メタル・バンドに転身するかもね。酷いタトゥーをいっぱい入れた、偽ギャングスター風なさ」。
▼関連作品
左から、マン・ウィズアウト・カントリーの2013年作『Foe』(Lost Balloon)、イレプレッシブルズの2010年作『Mirror Mirror』(Co-op)、スザンヌ・サンドフォーの2013年作『The Silicone Veil』(EMI Norway)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ
