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沈黙と静寂から、回復・再生へ

 6曲入りの最新EPにもとづく日本盤CD『Homebody』には、家族や友人のことを描いた曲が目につく。この新作にはフリーダ・トゥレイが過去数年間に経験した事柄が反映されていて、そのひとつは、EPの制作に入る前に彼女自身が突如として声帯の奇病を患ったことだ。こんなことから新作のテーマは、沈黙からの〈回復・再生〉となっている。

 「まさにその通りです。私は、人生の中で立ち止まらざるを得ない時期を過ごしました。自分の体が〈ちゃんと耳を傾けて〉と私に向かって叫んでいるような状態で、結果的に多くの面で完全な静止状態に追い込まれたのです。それはとても苦しいことでしたが、同時に信じられないほどの実りもありました。これまでにない形で、友情や家族と一緒の時間を大切に味わうことができたし、回復に集中することもできたから。そして私にとってこの新作を作ることは、精神的には――いつもと同じように――薬のようなものでした」

FRIDA TOURAY 『Homebody』 Edition/コアポート(2025)

 フリーダはガンビア人の血を引くスウェーデン人だが、現在はロンドンを拠点に音楽活動をしている。“Ode To Friend”は、ロンドンに来てから知り合った友人についての曲だ。

 「私はずっと友情についての曲を書きたいと思っていました。ロマンティックな男女の愛を描いた曲ではないけれど、真のラブソングのように感じられる形で。自分の家族や育った土地から離れたロンドンで15年間も暮らしていると、おのずと深いコミュニティを築きます。なぜならこの街は、時に本当にタフで孤独な場所だから。そんなロンドンで知り合った友人との間には、常にお互いの努力と献身を必要とします。私は〈あなたを愛し、感謝している。そしてあなたがそうしてくれるように、私もこの友情のためにエネルギーと努力を注ぐ〉というメッセージを友人に伝えたかった。この曲はロマンティックでありながら、現実的でもあります――ええ、ちょうどロンドンみたいに」

 フリーダの音楽はジャズ・ソウル系で、しかも彼女の歌には〈美しくソウルフルなメランコリア〉が息づいている。それは、彼女がスウェーデン人であることに関係しているようだ。

 「スウェーデンには豊かな音楽の歴史があり、私は子供の頃からそうした歌や音楽に自然と惹かれ、ノスタルジアとメランコリーが染み込んだ文化的なトーンを理解しながら育ちました。それは私が作曲や歌詞を書くときに通底している、赤い糸のようなもの。今もずっと自分の中に生き続けています」