90年代初頭、アンダーグラウンドな東京のクラブシーンにおいて、ミニマルで実験的なトラックとウィスパーボイスを組み合わせた音楽で異彩を放っていたPOiSON GiRL FRiEND。そのキャリア初期を代表する名盤『MELTING MOMENT』(1992年)のCDが、タワーレコード限定でリマスター再発される。
アンビエント、トリップホップ、フレンチポップス、そしてグラウンドビートまで――当時としては先鋭的なサウンドスケープは、今Z世代を中心に世界中のリスナーの心をとらえ、Pitchforkでの9.2点という高評価をはじめ、国境を越えた再評価の波を巻き起こしている。
リード曲“HARDLY EVER SMILE (without you)”のストリーミングヒット、海外ツアーでの熱狂的なリアクション、そして再発に込められたnOrikO自身の想い──〈若い魂〉で紡がれた音楽は、30年を経た今もなおまっすぐに届いている。そんな〈サッドネスとロマン〉の核心に、あらためて触れるべく、海外ツアー中だったnOrikOにメールインタビューを行った。
“HARDLY EVER SMILE (without you)”の普遍性
――『MELTING MOMENT』の再発が決まったとき、率直にどんなお気持ちでしたか? また、今あらためて振り返ってみて、このアルバムはご自身のキャリアの中でどんな位置付けにあると思いますか?
「率直に言うと、海外での販売ルートがないと、日本だけの発売は厳しいのではないかと思いました。でも、やはり嬉しいです。
私のようなアンダーグラウンドなアーティストが何故かメジャーデビューできてしまったことは奇跡に近いのです」
――収録曲“HARDLY EVER SMILE (without you)”がストリーミングでヒットし、『MELTING MOMENT』のレビューがPitchforkに掲載されるなど、海外を中心に特に高く評価されているのが本作です。歌詞についてなど、本作への海外ファンからの反応やコメントはどのようなものが寄せられていますか? またnOrikOさんご自身は、『MELTING MOMENT』への反響にどのように感じていますか?
「海外のファン層は、どの国でもみなさま、お若いです。私の音楽で人生が救われたというメッセージをよくいただきますし、自分が音楽を始めたきっかけになったという方たちも多いようです。私自身も80年代にザ・スミスの音楽を聴いて毎日泣いて暮らしていた時期もあったので、時代が変わっても思春期の感性は変わってはいないのでしょうね。
“HARDLY EVER SMILE (without you)”の再生回数が多いのは、あの曲は普遍的な詩、曲、アレンジで構成されていて、幅広い層にアピールするからだと思います。けれど、ああいう曲を好む層の多くは、似たような口当たりの良い曲を好むので、2曲目(“FACT 2”)を聴くと、全然違うじゃない!という感想を持つと思います。
コンサートに来てくれるようなコアなファンは“FACT 2”が好きで、アルバムでは『LOVE ME』の人気が高いようです」
―― “HARDLY EVER SMILE (without you)”は、海外の若い世代の間でも多く聴かれているようです。グラウンドビートを取り入れたこの曲が、時代を超えて支持されている理由はどこにあると思われますか? また、当時ご自身が感じていたグラウンドビートの魅力や革新性についても教えてください。
「ただただグラウンドビートの揺れとミニマル感が好きなのです。どこまでも変化なく永遠に続いていく感じが心地よいのではと思います。私自身あまりテクノポップの8ビートは通過していないので、自然に身体が反応しました」
