未だに衰えないレコードの人気ぶり。タワーレコード渋谷店6階のTOWER VINYL SHIBUYAも、引き続き海外からの来店客を中心に賑わっている。2024年末にお届けしたコラムでは、データと取材から外国人観光客に人気な同フロアについて掘り下げた。今回は、2025年3~9月のデータを集計したTOWER VINYLのランキングをもとに〈外国人に人気の中古レコード〉というテーマで考察する。 *Mikiki編集部

TOWER VINYLで何を探していますか?
タワーレコード渋谷店のYouTubeチャンネル〈タワレコシブヤ ミュージックトーク〉では、〈VINYL HEAVEN at TOWER RECORDS SHIBUYA ~What Are You Diggin’ For?~〉という動画が3本公開されている。TOWER VINYL SHIBUYAを訪れた外国人観光客たちに「何を探していますか?」とインタビューしたものだ。
〈vol. 1〉では、1組目に登場するオーストラリア人のカップルがニルヴァーナ、ゴリラズ、コナン・グレイ、エイミー・ワインハウスのレコードを探していると言い、2組目のフランス人男性は高中正義『ALL OF ME』とNujabes『Metaphorical Music』を友人のために買った……といった具合いだ。多様な国籍の来店客がそれぞれ異なるジャンルやアーティストのレコードを掘っていて、実に興味深いのでぜひ見てほしい。
TOWER VINYLの印象を聞かれると、どの来店客も品揃えが豊富であることと値段が安いこと(もちろん、円安の影響が大きいはず)の2つを答えている。さらにプロのスタッフが見極めたがゆえの盤のコンディションのよさ、また海外でも知られている日本独自のレコード文化〈帯〉も、彼らが日本のレコード店に足を運ぶ理由だ。動画の〈vol. 1〉の最後で「ここはレコード天国(vinyl heaven)」という発言があるとおり、1フロア丸々レコードで埋め尽くされたTOWER VINYLの広いスペースは、海外から来たアナログ好きにとってまさに天国なのだろう。
地元のレコード店に行っても欲しいものが手に入らないと言う者がいれば、モルディブ在住者は故郷にレコード店がそもそもないと語る。全ジャンル、新旧のレコードがいつでも簡単に購入できるTOWER VINYLは、他国にはない日本ならではの売り場になっているのだ。今回は、そんなTOWER VINYLでどんなレコードが売れているのか、データをもとに分析してみたい。

データから見る、国と時代を超えた定番レコード
下の表は、2025年3~9月にTOWER VINYLで売れた中古レコードの中から、海外からの観光客が購入したものをランキング化したものだ。
1. Michael Jackson『Thriller』
2. YMO『SOLID STATE SURVIVOR』
3. 山下達郎『FOR YOU』
4. Eagles『Hotel California』
5. The Beatles『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』
6. 杏里『Timely!!』
7. Pink Floyd『The Dark Side Of The Moon』
8. TOTO『TOTO IV』
9. 高中正義『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』
10. The Beatles『Let It Be』
11. 松田聖子『SQUALL』
12. 山下達郎『RIDE ON TIME』
13. Fleetwood Mac『Rumours』
14. The Beatles『Abbey Road』
15. Led Zeppelin『Led Zeppelin IV』
16. Billy Joel『52nd Street』
17. YMO『YELLOW MAGIC ORCHESTRA』
18. 安全地帯『安全地帯IV』
19. Madonna『Like A Virgin』
20. Madonna『True Blue』
21. 中森明菜『CRIMSON』
22. The Beatles『1962-1966』
23. ABBA『Arrival』
24. The Beatles『Revolver』
25. The Beatles『1967-1970』
26. Led Zeppelin『Led Zeppelin II』
27. Bruce Springsteen『Born In The U.S.A.』
28. 高中正義『T-WAVE』
29. The Beatles『The Beatles (White Album)』
30. Michael Jackson『Bad』
31. Sade『Promise』
32. 山下達郎『POCKET MUSIC』
33. 安全地帯『安全地帯II』
34. 安全地帯『安全地帯III〜抱きしめたい』
35. 竹内まりや『LOVE SONGS』
36. 高中正義『JOLLY JIVE』
37. The Beatles『Rubber Soul』
38. The Beatles『A Collection Of Beatles Oldies』
39. 竹内まりや『UNIVERSITY STREET』
40. 杏里『COOOL』
41. 高中正義『alone』
42. Michael Jackson『Off The Wall』
43. Pink Floyd『Atom Heart Mother』
44. The Beatles『Magical Mystery Tour』
45. Pink Floyd『The Wall』
46. 高中正義『夏・全・開』
47. Wham!『Make It Big』
48. ABBA『The Album』
49. 菊池桃子『OCEAN SIDE』
50. Queen『A Day At The Races』
洋楽のポップ/ロックの名盤の間に邦楽の作品が多く挟まっている、とてもユニークなリストだと思う。
まず洋楽については、ザ・ビートルズ、イーグルス、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリン、フリートウッド・マックなど、1960~1970年代のロックバンドによる名盤が多数ランクインしている。それから、マイケル・ジャクソン、マドンナ、アバ、ワム!といった1980年代にヒットを飛ばしたポップアクトの作品も多い。これらは英米の著名アーティストのレコードだが、国と時代を超えていつまでも色褪せないタイムレスな定番になっているということだろう。