マルコス・ヴァーリ『Previsão Do Tempo』がクリアブルーヴァイナル/180g重量盤で2026年4月22日(水)からタワーレコード限定販売される(店頭では4月17日(金)に先行発売)。収録曲がサンプリングされるなど、ヒップホップ文脈を含め常に再評価されつづけている本作。オリジナル盤がプレミア化していることもあり、初の帯付き日本盤アナログとなる今回のレコードはぜひ手に入れたい一枚だ。そんな『Previsão Do Tempo』が名盤である理由を、ブラジル音楽に造詣が深い音楽プロデューサー/選曲家の中原仁に解説してもらった。 *Mikiki編集部
アジムスが参加、シカゴ音響派にも影響を与えた名盤〈プールのマルコス〉
1964年、21歳でファーストアルバムを発表し、1965年に自作の“Samba De Verão(サマー・サンバ)”がヒット、ボサノヴァ第2世代の若きスターとなったマルコス・ヴァーリ。渡米してUSAでも活動したが、60年代末に帰国後はボサノヴァを卒業し、シンガーソングライター&キーボードプレイヤーとして、エレクトリックサウンドも取り入れ、ポップな音楽性にシフトしていった。
ジャケット写真から〈プールのマルコス〉とも呼ばれる『Previsão Do Tempo』は1973年のアルバム。タイトルは〈天気予報〉を意味する。
最大の聴きどころは、多くの曲でジョゼ・ホベルト・ベルトラミ(キーボード)、アレックス・マリェイロス(ベース)、イヴァン・“ママォン”・コンチ(ドラムス)と共演しているところだ。この3人は間もなく、アジムスのバンド名でデビュー、ブラジルジャズファンクのパイオニアバンドとなった。存命のオリジナルメンバーはアレックス1人だけとなったが、アジムスは今も健在で昨年、ニューアルバムをリリースした。
マルコスとベルトラミがエレキピアノ、オルガン、アナログシンセサイザーなどを弾く。当時はシンセの発展途上期だったが、2人は多様な鍵盤を弾き分け、音を埋めすぎず間を生かしながら、サウンドを彩色した。90年代にロンドンのクラブシーンで〈発掘〉されリバイバルヒットした“Mentira(うそ)”、マルコスがジョアン・ドナート、エウミール・デオダートとの3人で共作した“Não Tem Nada Não(なんにもないよ)”といったファンキーな曲もあるが、全体にミディアムテンポ以下のメロウでレイドバックした曲が多い。インストゥルメンタルのタイトル曲などはアルバムジャケットどおり、揺蕩う感覚が全開だ。
ザ・ハイ・ラマズやステレオラヴやトータスなどに影響を与えたと言われる、このアルバムの独特の音像を、スティーヴィー・ワンダーの『Innervisions』、マーヴィン・ゲイの『Let’s Get It On』、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの『Fresh』、ハービー・ハンコックの『Head Hunters』といった、同じ73年にリリースされたソウルミュージックやクロスオーバージャズ(フュージョン)の名盤と聴き比べるのも面白いと思う。
