30年以上も音楽的なカタルシスを提示し続けてきたレジェンドの気概はここにあり――エナジー全開の獰猛なサウンドが現代の混沌と不確実性を生々しく映し出す!
メタル、ハードコア、パンクなど世界中のあらゆるエクストリーム・ミュージックに影響を与えたコンヴァージの大傑作『Jane Doe』(2001年)。彼らはその一枚でカオティック・ハードコアという新ジャンルを打ち立て、世界中の激重愛好家を興奮させた。その衝撃に触発されたかのように後の世代からはノックド・ルーズやコード・オレンジといった先鋭バンドが登場し、ラウド・シーンを活性化させている。ちなみに後者のデビュー作『Love Is Love // Return To Dust』(2012年)はコンヴァージのカート・バロー(ギター)がプロデュースしていた。

そんななか、本家本元のコンヴァージが待望の11作目となるニュー・アルバム『Love Is Not Enough』を完成させた。名盤『Jane Doe』から約25年の歳月が流れても、彼らのテンションは少しも下がっておらず、新作にも最前線で闘い続けるバンドの気迫が漲っている。振り返れば前作にあたる2021年の『Bloodmoon: I』は、これまでの作風とは大きく異なるアプローチだった。アメリカン・ゴシックの女性シンガーであるチェルシー・ウルフに加え、そのバンド・メンバーにあたるベン・チザム、さらにケイヴ・インのスティーヴ・ブロドスキーを迎えた7人体制により、新たな表現領域にトライ。従来のコンヴァージらしい激越曲もあったが、「もっと壮大なものを作りたかった」とジェイコブ・バノン(ヴォーカル)が発言する通り、長尺曲を軸にアコギ、ピアノ、シンセサイザーなどを導入した奥深き曲調で勝負。その方向性はファンの間で賛否を分けたかもしれないが、既存の形式にとらわれないプログレがかった雄大な音像は十分に刺激的であった。
そのコラボ作に対し、新作『Love Is Not Enough』はコンヴァージのメンバー4人だけで作られた一枚である。昨年11月に出た先行シングル“Love Is Not Enough”を聴き、まごうかたなきコンヴァージ・サウンドに震えた人も多いはず。贅肉を削ぎ落としたプリミティヴなハードコアは〈らしさ〉全開だった。小細工やギミックはなし、剥き身の歌声と演奏で聴き手に襲いかかってくる。前作の反動もあるのか、本能に従った生々しいグルーヴが大暴れしているのだ。そのシングル曲はアルバムのオープニングに据えられていて、作品全体の色合いを象徴する一曲と言っても差し支えないだろう。また、今年1月に出たセカンド・シングル“We Were Never The Same”は作中のラストに置かれ、アルバムをサンドイッチしている状態だ。
アルバム前半は先述の表題曲に倣うように、ザクザク刻むリフと重厚なグルーヴを核にしたスピーディーな楽曲が並ぶ。“Distract And Divide”はド頭からフルスロットルで飛ばす激越ハードコア・チューン。ジェイコブによる血管ブチ切れシャウトは鬼気迫る緊張感を孕んでいる。ベン・コラー(ドラムス)のスティック捌きから幕を開ける“To Feel Something”は不穏なリズム・ワークが耳に残り、一筋縄では行かないサウンドメイクも興味深い。
アルバムのおへそにあたる“Beyond Repair”はシネマティックなインタールード。これもコンヴァージらしいおどろおどろしい雰囲気を放ち、アルバム後半への橋渡し的な役割を果たす。後半はミッドテンポの曲を増やして前半との差別化を図っているようだ。ドゥーム・メタルとハードコアを融合させたスラッジコア風の“Force Meets Presence”もかっこいいが、ポスト・ロック的な静けさのなかで時折嵐を巻き起こす“Gilded Cage”もアルバムの流れで強いフックになっている。
『Love Is Not Enough』収録曲の根底には怒りや悲しみ、不満が渦巻いている。まるでいまの世の中をそのまま反映したようなリアルな音像だ。それこそがハードコアの原点であり、彼らが本作でやりたかったことに違いない。
コンヴァージの作品を一部紹介。
左から、2001年作『Jane Doe』(Equal Vision)、2012年作『All We Love We Leave Behind』、2017年作『The Dusk In Us』(共にEpitaph)
左から、コンヴァージ&チェルシー・ウルフの2021年作『Bloodmoon: I』(Epitaph)、コンヴァージとコーアレスのスプリット盤『Live At CBGB's』、ジェイコブ・バノンが在籍するアンブラ・ヴァテイの2024年作『Light Of Death』(共にDeathwish)