新種のヘヴィミュージックをここに打ち立てた。米カオティックハードコアの雄、コンヴァージが初のコラボアルバム『Bloodmoon: I』を堂々完成! 今作はコンヴァージのメンバー4人に加え、ダークな歌姫チェルシー・ウルフ、彼女のバンドメンバーであり、曲作りのパートナーを務めるベン・チザム、さらにケイヴ・インのスティーヴ・ブロドスキーを含む総勢7人体制で作り上げた画期的な一枚である。ジェイコブ・バノン、チェルシー・ウルフ、スティーヴ・ブロドスキーのボーカリスト3人がそれぞれお互いのために歌詞を書き合い、心と心を融合させた先に何が見えるのか。そんな大胆なチャレンジを試みた今作は、メンバー自身の想像をも超えた未知のヘヴィネスに足を突っ込んでいる。
一筋縄ではいかない破格のコラボ作について、ジェイコブはZoom取材で今作の魅力をたっぷり語ってくれた。
CONVERGE 『Bloodmoon: I』 Epitaph/Silent Trade(2021)
唯一無二のアルバムが出来た
――2019年2月に日本で開催された〈leave them all behind〉でのライブを観に行きました。大阪、名古屋、東京2デイズの計4公演が行われ、僕はニューロシス、コンヴァージ、ENDON、Self Deconstructionが出演した2月16日の公演に足を運んだんですね。前回のツアーを振り返っていかがでしたか?
「ライブは楽しかったよ。ただ、僕たちにとってはちょっとチャレンジだった。ドラマーのベン・コラーがツアーに行く直前に腕を折ってしまったからね。それで一緒に演奏したことがない、友人のユーライアン・ハックニーにツアーで急遽叩いてもらったんだ。彼は素晴らしい演奏をしてくれて、日本のツアーはもちろん、オーストラリア公演でも演奏してくれたんだ。ライブはとても素晴らしかったし、僕らも演奏を楽しんだよ」
――オーディエンスの反応はいかがでした?
「日本のオーディエンスはいつも敬意を払ってくれるし、ヘヴィミュージック全般に対して情熱的だね。僕らは日本を愛しているから、演奏したり、旅行に行ったりする場所としても好きな国の一つだよ」
――そして、今作を聴かせてもらいましたが、内容的には様々な感情や映像を喚起させられる、表情豊かにして奥深いヘヴィミュージックとなりましたね。作り終えた今の感触は?
「とても良いよ。このクリエイティブな作業を終わらせて、ついに世界とシェアできることに興奮しているんだ。
僕らはみんな唯一無二のものが出来たと思っている。〈唯一無二〉というのは、つまり僕らが過去にやったこととは全く違うという意味であり、作った本人たちにとっても驚くべきものだったということ。というのも、すごく流動的でオーガニックなコラボレーションのプロセスだったからね。まったく予想のつかない特別なものが出来て、僕ら全員にとってもエキサイティングな制作になったんだ」
4ピースのコンヴァージよりもっと壮大な音楽を作りたかった
――プレスリリースには〈典型的な4人組のコンヴァージの音楽よりも、もっと壮大なものを作りたかった〉と書かれていました。〈壮大なもの〉とはもう少し具体的に言うと?
「そうだな。コンヴァージ以外のメンバー3人と演奏することで、自分の能力をもっと高めることができるんだ。ただ、僕らはすでにコンヴァージとして4ピースでできることを知っているし、他のメンバー3人のことを演奏者としても、ボーカリストとしても、リリシストとしても知っている。だから、本当にユニークで過去にやっていないものを僕ら全員で作ることはものすごく挑戦的なことだった。今回の作業は流動的だったから、コンヴァージのメンバー全員も生き生きしていたよ」
――なるほど。ちなみに〈壮大なサウンド〉を掲げたアーティストで好きな作品を挙げると?
「僕はちょうどクラシックロックのレコードに立ち返っていたんだ。レッド・ツェッペリンやピンク・フロイドのレコードにね。彼らのアルバムは3、4分の曲が入っているような、ありがちなレコードではないんだ。レッド・ツェッペリンや、ピンク・フロイド、イエスのようなプログレッシブロックバンドの音楽には特に没入できる。ザ・フーもそういう要素を持っているバンドだよね。オーケストラやビッグな編成で作品を作っているし、ありがちな曲の構造ではない、より大きなアイデアを表現しているから、すごくインスパイアされるんだ。そういう意味で今回は自分のルーツに立ち返ったところはあるかもしれない」
――例えばレッド・ツェッペリンとピンク・フロイドであなたが好きなアルバムというと?
「レッド・ツェッペリンだと、『Houses Of The Holy(邦題:聖なる館)』(73年)なんだ。なぜなら、あの作品は異なるサウンドや曲がたくさん入ったバラエティー豊かなアルバムだからね。あと、音楽のエナジーを運んでくれるジャケットもすごく印象的だしね。僕は異なるものどうしが一緒になって結びつき合っているような作品が好きなんだ。
ピンク・フロイドに関してはどれもお気に入りなんだけど、『Bloodmoon』のビジュアル面で明確にオマージュしているのは『The Piper At The Gates Of Dawn(邦題:夜明けの口笛吹き)』(67年)で、特別なレコードだよ。『Meddle(邦題:おせっかい)』(71年)も僕にとって本当に大きなアルバムで、よく聴いているんだ」
――レッド・ツェッペリンの『Houses Of The Holy』は、彼らの作品の中でもカラフルかつポップな印象も受ける作品です。これをフェイバリットに選ぶのも興味深いです。
「確かにそうだね。でもあの作品は本当に多彩で深みのある素晴らしいアルバムだと思うよ」