2022年に高校の軽音楽部で出会ったCoconaとUriは、初めて見かけたときからお互いが気になる存在だったという。
「見た瞬間に〈この子とバンドがやりたい!〉と直感的に思いました。Coconaがギターが上手だったので、私はベースに転向したんです」(Uri)。
「当時は薄い前髪と巻き髪が流行っていたのに、Uriは重い前髪の黒髪ストレートで、独特の存在感がありました。話してみるとすごく明るくて、自分とは真逆だからこそ惹かれるものがあったし、共通して好きな音楽も多かったのでどんどん仲良くなりました」(Cocona)。
両親がゴスペル・ミュージシャンのCoconaは、小学生の頃にギターを始めている。部活でコピーしたSuchmosやKing Gnu、Suspended 4thらの楽曲に、幼少期より身近な存在だったブラック・ミュージックの影響を感じ取り、ゴスペルやファンク、ジャズに改めて傾倒するなか、それらをCoconaから薦められたUriも、瞬く間にそのグルーヴに魅了された。
「ブラック・ミュージックに触れて、ベースがここまで楽曲を司っている音楽があるんだ!と衝撃を受けたんです。自分もこんなベーシストになりたいと価値観がガラッと変わりました」(Uri)。
ブラック・ミュージックと日本のロック・バンドの要素を掛け合わせた音楽性を模索するなか、高校2年生で初のオリジナル曲“Setelan”を制作。当時Uriが抱いていた感情を歌詞にし、それにCoconaが音をつけた。
「当時の私は、社会人に対して世の中の常識に縛られているイメージを持っていたんです。だからスーツ姿で出勤する人たちを眺めながら〈この人たちがこの姿でライヴハウスで踊ってたらめちゃくちゃいいな〉と妄想して、自然と身体が動き出す音楽にしたくてラップ調の歌詞を書きました」(Uri)。
「Uriから歌詞が届いて、その夜のうちに作ったのが“Setelan”です。人生初の曲作りで、好奇心と衝動のままに作ったからか、いま聴くと青臭さがありますね(笑)」(Cocona)。
同曲のMVが話題を集めるのと前後して、Coconaの母のピアノ教室の教え子であるRimaと、Coconaの妹であるNinaを正式メンバーとして招き、本格的に活動を開始した。初のアルバム『BAA, AS THE SHADOWS LOOM』には多彩なサウンドデザインが花開く。“Setelan”は再録によりサックスが加わり、ディスコ・ファンク色の強いアレンジに仕上がった。太宰治の同名小説をモチーフにしたソウル・ナンバー“斜陽”、カーク・フランクリンの影響を落とし込んだという“Dear B. Dash”、シューゲイザーにバッハの〈主よ、人の望みの喜びよ〉のフレーズを取り入れた“surrender”など、アレンジと歌詞の双方に彼女たちのルーツや、現在の素直な心情が反映されている。
「アルバム・タイトルやジャケットのモチーフを羊にしたのは、自分と似ているからなんです。羊は目が悪いから目の前しか見えなくて、私も目の前の楽しみに集中してしまって、他のいいものに気づかない。歌詞の端々にはそういう人間や自分自身の弱さが表れていると思います。“Hug”と“surrender”は歌詞に書いた気持ちや世界観がより伝わるアレンジをめざしました。〈愛〉や〈赦すこと〉という人間の本質から目をそらさずに生きて、バンドを続けていきたい。そんな気持ちも詰め込んでいます」(Cocona)。
受験のためライヴ活動を休止していたRimaもこの3月に復帰したばかり。海外でも通用するバンドをめざす4人は、大いに意欲を燃やしている。
「No.MENの曲が大好きなのに、自分のベースが全然理想に届かなくて悔しくて! だからひたすら練習して、音色を突き詰めています。Coconaの考え方も好きな音楽もどんどん広がっているので、皆さんにも私たちの成長過程を楽しんでもらいたいです」(Uri)。
No.MEN
Cocona(ギター/ヴォーカル)、Uri(ベース)、Rima(キーボード)、Nina(ドラムス)から成る名古屋の4人組バンド。高校の軽音部で出会ったCoconaとUriを中心に2022年に結成され、2023年8月に初音源の“翠雨”をリリース。学業と並行しながらライヴ中心に活動し、2024年に“GAME”、2025年に“Unlovable”“Hug”とコンスタントに音源を発表していく。このたびファースト・アルバム『BAA, AS THE SHADOWS LOOM』(Village Again)をリリースしたばかり。
