©Yuji Oku

肉塊がヴァイオリニストに育つまで

 〈肉塊をヴァイオリニストに育て/調理していくレクチャー・パフォーマンス〉という説明を読むと現代音楽のパフォーマンスかな?と思うが、そうではない。金沢21世紀美術館の芸術交流共催事業〈&21+〉に採択され、かながわパフォーミングアーツアワード2026では〈MVP賞〉を受賞した「アイム・ミート!」は、音楽よりアートや演劇といった分野で捉えられる作品である。では〈レクチャー・パフォーマンス〉とはなにか? 作者であり演者である加藤綾子は「舞台に立つアーティストが、アーティストみずからのことばで語る作品」と説明している。

 「アイム・ミート!」で加藤が語るのは、クラシックのヴァイオリニストとして生きてきた自身の半生。〈女の子には音楽をやらせてあげたい〉という両親の希望でヴァイオリンをはじめ、ドレスを着てステージに立ち、バッハやモーツァルトを奏で、口元には笑みを絶やさず、女性らしく美しい立ち居振る舞いを求められる――加藤はそんな自分をひとつの〈肉塊〉に投影し、徹底してメタ的に捉え直していく。

©Yuji Oku

 筆者がはじめて加藤に会った5年ほど前、加藤は〈即興ヴァイオリニスト〉と名乗って活動していた。その後、リサイタル「形式(かたち)を呼吸する」(2024年)ではクラシック音楽の〈かたち〉を溶かして自由な呼吸を手に入れ、パフォーマンス「ヴァイオリニストによる(メタ)フィクション」(2025年)ではヴァイオリニストの身体と動きを通して再現芸術たるクラシック音楽を捉え直し、俳優の岡本唯との協働企画では言葉と身体を使った新たな表現を拡張してきた加藤。それは〈ヴァイオリニストの身体や振る舞いはなにを意味するのか〉〈クラシック音楽とはなにか〉といった問いを鑑賞者に投げかける。ときにジェンダーへの問題意識を呼び覚ましながら。

 そうした実践の延長線上にあるのが、「アイム・ミート!」である。この作品において加藤は、自身の存在をひとつの肉塊となるまで解体し、周囲の人々からかけられた言葉をひとつひとつ付箋に書きつけて肉に突き刺し、それらが〈ヴァイオリニストたるもの〉をかたちづくり、自我をもって育っていく過程を、舞台上で観客とともにリアルタイムに描き出していく。これまでのパフォーマンスは毎回、言葉も演出もかなり異なる内容だったとのこと。満を持しての東京公演で、肉塊はどのようなヴァイオリニストに育つのか。ぜひ一緒に見届けてほしい。

 


LIVE INFORMATION
アイム・ミート! 東京公演

2026年5月20日(水)東京・三鷹 SCOOL
全2回公演
開場/開演:13:30/14:00
開場/開演:18:45/19:15
https://ayako-kato.com/immeat26tokyo/