ロックンロール・ファンに国境や言語は関係ない――打撃力に溢れた演奏と嘘のない歌で世界へ邁進する2人のニューEPには、最高にHAPPYな〈うるせぇ!〉が鳴り響いている!!
性急に突き進むビート、ラフに鳴らされるディストーション・ギター、そして怒りとユーモアがぶつかり合うような歌。ロックンロール本来のヤバさを凄まじいスピード感で響かせまくり、ライヴハウス・シーンでの存在感を高め続けている2人組バンド、板歯目。去年のカナダ・ツアー、台湾のフェスへの出演に続き、今年3月にはアメリカの〈SXSW〉でライヴをするなど、活動のフィールドは早くも国境を越えている。
「海外のライヴ、めっちゃ楽しいです。踊りに来てるようなお客さんばかりだし、酔っ払いも多くて(笑)。いいライヴをすれば反応がちゃんと返ってくるし、だからこそ〈今日はアゲられなかったな〉ということもハッキリとわかるんですよ」(千乂詞音、ヴォーカル/ギター)。
「お客さんによって盛り上がるポイントがバラバラで、新しい発見も多いですね」(庵原大和、ドラムス)。
今回リリースされたセカンドEP『なんてHAPPY LUCKY』は、「バンドの活動を〈やらなくちゃ〉ではなくて、〈やってりゃ楽しいでしょ〉みたいな捉え方になってきた」(千乂)という二人の現状をダイレクトに刻んだ作品だ。海外のガレージ・ロックの雰囲気を感じさせる“黄色い”、〈うるせえ!〉という叫びが痛快すぎる“スランプメーカー”が鳴った瞬間、このバンドの個性が爆発的に増幅していることを実感してもらえるはずだ。
「“黄色い”はギター・リフから作りはじめたんですけど、僕一人で作ったデモがそんなに良くなくて、千乂とサポート・ベースの髙島龍矢とスタジオに入って、その場で音を出しながら作っていきました。歌詞もそのときに書いたもので、あまり意味はないかな。ファーストEPの『もんくのひとつもいいたい!』が色でいうと赤だったから、次は黄色じゃね?と。そして、“スランプメーカー”は〈うるせえ〉と言いたいっていうのが始まり。曲に関してはいい意味でこだわりがなくて、あまり時間をかけないんですよね。アイデアがどんどん出てきてしまって、まとまらなくなるから、早めに正解を決めて進めていきます」(庵原)。
千乂が作詞・作曲した“心底心中したい”と“悪口”における、世の中のしがらみをすべて解き放つようなグルーヴにもぜひ注目してほしい。
「前作はすべて大和の曲だったので、スタッフに〈千乂も曲を書いて〉とケツを叩いてもらいました。“心底心中したい”は、小説を書いている親友と5時間くらい話した〈どんな死に方がいい?〉って話題がもとになってます。“悪口”は、スタジオで大和が叩いていたドラムに合わせてギターを弾きながら歌って作りました。〈その場にいない人の話をするのが嫌い〉というのが歌詞のテーマ。〈イヤです〉も〈好きです〉も、面と向かって言わないと意味がないと思うので」(千乂)。
さらに“FREEMAN”はメロディーメイカーとしての庵原のセンスが現れた楽曲。特にポップな広がりを持つサビは、今後のライヴでも大きな武器になりそうだ。
「2~3年くらい前に〈京都大作戦〉でいろんなバンドを観て、夏フェスで盛り上がる、モッシュが起きるような曲を書いてみようと思ったんですよね。ただ、最初は〈これは板歯目じゃなさすぎるだろ〉と思ってしまい、あまり好きじゃなくて……。スタッフに〈いい曲だからリリースしよう〉と言われてから、だいぶ印象が変わりました」(庵原)。
「でも、私は〈らしさ〉なんてなくていいと思ってるんです。めっちゃ好きな人ができたらラヴソングを書くかもしれないし、そのときのメンバーの状態が出たほうがおもしろいじゃないですか。なので〈板歯目らしさ〉も勝手に変わっていくものでは?と思ってるんですよね」(千乂)。
初期パンクのムードと〈HAPPY〉を連呼する歌が響き合う“HAPPY HAPPY HAPPY HAPPY HAPPY”を含め、圧倒的な突き抜け感もカッコいい『なんてHAPPY LUCKY』。シーンの動向やトレンドに囚われることなく、みずからの表現欲求を衝動的に掻き鳴らす。そんな真っ当な姿勢を貫く板歯目を、ロックンロールを愛する人間の一人として強く支持したいと思う。
板歯目の2025年のEP『もんくのひとつもいいたい!』(板歯目)
