世間や自分へ向けて、痛快に文句を言い放つ2ピース!!
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、デフトーンズ、スリップノット、さらにスターリンなどがかかりまくる家に育ち、「子どものとき、いちばん〈これカッコいい!〉となったのはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」という千乂詞音(ヴォーカル/ギター)。一方、UNISON SQUARE GARDENをきっかけに〈バンド〉に惹かれ、「こんなやり方があるのかと思って、ドラムを始めました」という庵原大和(ドラムス)。そんな2人が都立高校の軽音部で結成したのが板歯目(ばんしもく)だ。コロナ禍の真っ最中も「ライヴをやりたすぎて、学校終わったら走って行ってました」(千乂)とライヴハウスに立ち続け、高校卒業後も活動を継続。2023年には全国10か所のツアーを開催し、〈SUMMER SONIC〉など大型フェスにも出演。怒涛の勢いで存在感を増している。昨年3月にベーシストが脱退し、2ピースになったことで、バンドへのモチヴェーションはさらに高まったという。
「実はずっとバンドを辞めるタイミングを探してたんですけど(笑)、メンバーが抜けたときに〈大和と2人でやるのはおもしろそう〉と思って。実際、この1年はいままで以上に楽しい。大和とも〈これからどうしようか〉みたいな話をよくするようになったし、積極的に動けるようになってると思います」(千乂)。
「以前は、曲作りに際しても〈なんかちょっと違うよな〉とか〈でも、こうしないと周りの人が納得しないよな〉とか考えてたんですよ。でも、この1年はそういうストレスがなくなりました」(庵原)。
鋭利にしてキャッチーなギター・リフ、感情の起伏とともに変化するビート、生々しい本音とロマンティックな希望が混ざり合った歌詞。このたびリリースされたEP『もんくのひとつもいいたい!』には、板歯目の音楽的スタイルがこれまで以上に強く刻まれている。本来は2人とも作詞・作曲を行うが、今回は庵原が全6曲を担当。
「私、大和の曲が大好きなんですよ。ギターのリフもめっちゃいいし、私が歌うことをちゃんと考えて作ってくれるので、歌ってて気持ちいい。しかもライヴ映えするんですよ。たびたび〈曲書かないの?〉って言われるんですけど、〈大和の曲が最高なんだよ!〉って言いたいです」(千乂)。
「よかった(笑)。今回はやりたいようにやれた感じがあります」(庵原)。
尖ったリフから始まり、途中でテンポを上げながらエモーショナルなメロディーを響かせる“超バカ!”、〈めんどくせぇ!〉と連呼する“親切”、〈イライラするだろ 私もあなたにしている〉と語りかけるバラード“カプセル”。洋邦オルタナのテイストを感じさせるバンド・サウンドのなかで放たれる言葉の根底には、世間、他者、そして自分自身への怒りがある。
「たぶんEPの曲を書いてた頃は、イラつくことが多い時期だったんでしょうね。ただ〈怒ってる曲を書こう〉とは思ってなくて。自然に出てきた言葉を使ってたら、怒りをぶつける歌詞が多かった。じゃあ今回はそういうテーマでまとめようと。僕は普段あまり思ったことを言うタイプじゃないんですけど、音楽だと溢れてくるのかもしれないです」(庵原)。
「キレるタイミングが同じというか、大和の歌詞を見ると〈私もそう思ってた!〉ってことがすごく多い。この感じは私と大和にしかわからない気がします。あと、あらゆる感情のなかで、怒りがいちばん憑依させやすいんですよ。だから今回のEPは〈キレながらライヴで歌える! やった!〉って感じ(笑)。私も過去に〈めんどくせー〉って叫ぶ曲(“Y(ワニ)”)を作ったことがあるんですけど、ずっとめんどくさいんですよ。ホントにバカばっかだし、私もバカだし、全員バカだなと思ってて(笑)。でも、それってたぶん、みんながちょっとずつ思ってること。バカ、アホ、カスとか、普段は言えないことも歌詞だったら許される気がするんです」(千乂)。
板歯目が楽曲提供した2025年のコンピ『Shimokitazawa SOUND CRUISING 2025』(Shimokitazawa SOUND CRUISING)