素直に楽しんで作った結果できた曲
――では、EPから1曲ずつ紹介していただければと思います。まずは1曲目の“Moonlight”。イントロのスキャットがキャッチーですが、歌詞はどういった内容でしょうか?
「この曲の歌詞に出てくる〈君〉は、もう1人の自分というか、自分の中にある、素直になれない部分との対話ですね。心のどこかで嘘をついている状態が苦しくて〈忘れてしまえば〉と思うんですけど、2番、3番と曲が進む中で、最終的にはそんな自分も受け入れてあげたらいいんじゃないかっていう、そんな歌ですね」
――1曲の中で、心の揺れが変化していくんですね。“レイトショー”はどうでしょうか? ハネたリズムのラップがいいですね。
「もともと音楽活動を始めるきっかけとして、Rin音さんやクボタカイさんのようなラッパーの影響があったんですけど、改めてラップをやってみよう、と思った曲ですね。アルバムを作る上での〈自分らしさ〉を頭で考えることを一旦忘れて、ただ自分に素直に楽しんで作った結果、こういう曲ができたって感じですね」
――ラップのスキルについて、以前の自分と比べて変化は感じましたか?
「テンポよく韻を踏みつつ、自分の考えていることも乗せて……という両立が、以前はすごく難しくて。テンポを優先すると、歌詞に意味を持たせづらくなっちゃってたんですけど、今はわりと両方ができるようになってきた気がします」
――“Twilight”は、ちょっと懐かしいJ-POPっぽさがありますね。転調前のブレイクで秒針の音だけになるアレンジに、ハッとしました。こういう仕掛けはポップで面白いですね。
「ありがとうございます」
――アレンジの引き出しみたいなものは、意識していますか?
「自分の中にはあったけど出してなかったインプットがあって、それを出してる、という感じですね。この秒針のアイディアも、何かリファレンスがあるわけではないですね」
僕はこう思ってて、君もこう思ってるなら、こういう風にしない?
――既存の曲を参考にしたり、新たに研究したりしたというよりは、ストックしていたものを出していると。続いては“サーカス”という曲ですね。
「この曲は、1番は自分のことばかり歌ってますけど、2番になると、その歌を聴いてくれている人たちがいる、という展開ですね」
――『LIFE』収録の“To me”も、ファンに向けた曲でしたが、この曲も、アイディアとしては近いですね。
「そうかもしれません。〈僕はこう思ってて、君もこう思ってるなら、こういう風にしない?〉と、人に提案しているような歌ですね」
――“氷菓”は、久石譲とか、映画音楽的な雰囲気があります。以前の“サマーメイド”の時とはまた違う雰囲気の、夏の曲ですね。
「今回のEPは、夏の前にはリリースしたいなと思ってました。そこで、一足先にこういう夏の曲を入れておいて、季節感とともに聴いてもらえればと」
――〈かなわない〉というフレーズが2回出てくるけど、漢字が微妙に違うのも面白いですね。8月の終わりの〈日本の夏〉という雰囲気で、縦書きの歌詞字幕が似合いそうですね。
「確かに、そんなイメージですね(笑)。今回のEPの収録曲を見た時に、バラードが1曲欲しいなと思って。aikoさんの“KissHug”っていう曲があって、その曲がすごく好きなんですよ。ピアノのイントロで始まる曲なんですけど、自分なりにああいう曲を作ってみようと思ってできた曲ですね」
――最後の“夜のリズム”は、アコギ1本のシンプルなアレンジですね。
「これはEP制作の最後の最後に、振り返った時に出てきた言葉をそのまま歌にしていますね。『After』というEPのタイトルもそうですが、ここまで曲を作ってきたことの余韻みたいなものを、最後に表せたらいいなと思ったので。〈書いては消して〉みたいなことはせず、日記みたいに自然と出てきた言葉を綴っています」
――推敲していない、そのままの歌詞なんですね。
「冬の深夜の3~4時くらいの、除雪機の音だけが聞こえる、本当に歌詞のままの状況で作った曲です。その時の空間みたいなものを共有できたらなと思いました」