
V系両A面シングル短歌
――今回はバンド初の両A面シングルになります。
tink「“魚~ホットドッグ~”ができた頃に、〈シングルを出そう〉という話になり、さらに〈両A面シングルってよくあるよね〉という話になり……」
dagaki「〈両A面でジャケ違いのCDを出したいよね〉って。自分たちも中学、高校の頃にそういう形態のCDをたくさん買って聴いてきたし」
――憧れがあったと。
tink「ちょうど、曲の雰囲気的に対となる“ミル~猩々紅冠鳥~”もあったので」
misuji「両極端な感じが面白いかなって」
――シングルに収録されている2曲がポップな曲、激しい曲というのは90年代のヴィジュアル系バンドのシングルでよく見られる形式でした。
dagaki「そう、文化ですよね、“-I’ll-”、“虜”……」(1998年にリリースされたDir en grey(現・DIR EN GREY)のインディーズ2ndシングル)
kikato「“クリア・スカイ”と“蜘蛛の意図”」(1998年にリリースされたPIERROTのメジャーデビューシングル)
tink「あれ、今一瞬、5・7・5みたいになった?」
一同「“-I'll-”、“虜”、“クリアスカイ”と“蜘蛛の意図”」

――すごく惜しいですね。今回のシングルの作曲はどちらもkikatoさんとのことで。
kikato「“魚~ホットドッグ~”をシングルにしたのは、この曲が明るくて異色というか、今まで全然やってなかった方向だったから、ここであえてこの曲を出したらめっちゃおもろいんじゃね?みたいな雰囲気がtinkを中心にありましたね」
tink「おもしろ優先はありました。今後のバンドの展開を考えても、今“魚~ホットドッグ~”を出したら色々な方向が生まれそうだなって」
――意表をつく感じの。
kikato「歌詞のギャグの雰囲気も今までと違う感じだよね」
tink「最初にメロが来た時に〈お刺身に興味ある〉っていう歌詞ができて。そこからどう繋げるかっていうのは迷ってたんです。そこから、最初のサビで〈アメリカに住んでいる〉っていう歌詞が降りたんで、もうね……」
――〈野球〉というモチーフは、〈ジジイ〉や〈ババア〉、〈お水〉などのように、色々な十字架の曲に頻出する要素です。
tink「いや、そこは意識していないです。ただ歌詞を作ってたときに自分の中で大谷翔平のブームが来ていただけです」
――例えば、“良いホームラン”の世界とは関係ない?
tink「はい、そのへんの歌詞とは関係ないです。あ、でもストーリーとしては一応“蜜”の歌詞とつながっています」
tacato.「“蜜”にも〈野球をやってみませんか?/勉強より〉という歌詞があるもんね」
tink「計算してたり、行き当たりばったりだったり、適当だったりがちょうど合わさった感じですね」

GLAYを知らない人の考えるGLAYっぽさと、GLAYを好きな人の考えるGLAYっぽさ
――色々な十字架は、90年代ヴィジュアル系をリスペクトした曲作りに定評がありますが、さきほどkikatoさんがおっしゃっていたようにこれまでとはリファレンス元が異なりますよね。端的に申し上げると、GLAYというか。
kikato「そうですね。“とまどい”だったり“春を愛する人”だったり……、でも特定の曲というよりは、自分の中に染み付いてたGLAY感というか、ミドルテンポのちょっと雄大な感じの、北海道〜!って感じのイメージですね」
――色々な十字架の曲の面白いところは、パロディ的なおかしみがあると同時に〈いい曲〉でもあるところじゃないですか。
misuji「いわゆる〈パクってくる〉とかっていうのとはまた違うんですよ。なんていうんですかね」
kikato「ぼんやりと、いい意味でぼんやりと、〈こういうのやりてえ〜!〉っていう気持ちを消化してるだけで」
misuji「〈こういうのやろう〉と思ったら、たまたまめっちゃ似てた、みたいなのとは違うん?」
kikato「たまたまでもない。それこそね、GLAYのエッセンスを、Bメロでこのメロディが来そうだよなとか、リズムの感じとかは意識してあったけど、でも直接似せることは避けているというか。被ってるメロディーがあったら、あえて取り除いて作り直したりしてますね」
tacato.「反対に、俺はそんなGLAYを熱心に聴いてこなくて。だから今回の曲を作るときに、1枚目から改めて聴き直したりして、GLAYの癖ってなんだろう?とか考えたりして聴いたりしてたんですけど。だから、ちょっとしかGLAYを知らない人の考えるGLAYっぽさと、GLAYを好きな人の考えるそれがちょうどいい感じに組み合わさったのかな」
kikato「〈あるある〉に頑張って寄せるっていうよりは、〈こうしたらかっこいいよね〉に従うようにしてるよね。〈あるある〉かどうかはライブに来てくれる人にはあんまり関係ないことだと思うし。お客さんはかっこよかったら満足すると思うし」

――面白くするためにあえてパロディで世界観を崩すというよりは、まずバンドとしていい曲、かっこいい曲を、という。
misuji「そうですね。それはめっちゃあると思います」
tink「だってGLAYをリファレンスしててカッコ悪かったら失礼じゃないですか」
kikato「おこがましいんですけど、90年代後半の、30年くらい前の曲を参考にするのだから、今の時代に合わせた音に昇華しないと。特にGLAYなんて最新アルバムも一昨年出たばっかりですよ。そこと真っ向勝負するぞ!くらいの気持ちで。実際に越えられたかはわかんないけど、常に越えるぞくらいの気持ちでやりたいなと思ってますね」
――志が高い。
kikato「志だけは(笑)」