メタル界で唯一無二の輝きを放つギタリストがソロ・ファースト・アルバムを完成! インストで感情のうねりを綴った〈雨女〉の物語に待ち受ける、感動的な結末とは?

フラットに出てきたもの

 大学在籍中にmixxの一員としてバンド・キャリアを始動させ、Mary’s Blood~NEMOPHILAと渡り歩き、ガールズ・メタルのシーンを牽引してきたギタリスト、SAKI。昨年デビュー15周年を迎えた彼女は現在、L’Arc-en-Cielのtetsuya率いるLike-an-Angelに参加する一方、2024年からソロ活動を開始。今年2月には自叙伝「サキノオト。」を刊行し、生い立ちから音楽活動までを赤裸々に綴った内容に驚きを覚えた人も少なくないだろう。そしてこのたび、初のメジャー・ソロ・アルバム『PLUVIA』を完成させた。

 「自叙伝も大きかったのかもしれないですね。執筆中にメタル・ギタリストとは?と背伸びしながら悩んでいた時期も思い出したから。でも、いろいろやっても結局自分にしかならない。ハード・ロック/ヘヴィー・メタルという出自を保ちつつ、いろんなスタイルを出したアルバムになりましたけど、自分からフラットに出てくるものを大事にしました」。

SAKI 『PLUVIA』 キング(2026)

 歩みを振り返ることで、心の整理ができたに違いない。アルバム制作の経緯についても訊いた。

 「去年の夏にレーベルから話をいただきました。私は勝手に、いろんなゲストを呼んだお祭りっぽいアルバムを提案されると思っていたんです。ところが、ギタリストとしてインストゥルメンタルで勝負するアルバムを作りませんか?と言われて、意外でしたね。自叙伝の執筆依頼もそうでしたが、あなた一人でどんなことができますか?と問われている気がしたんです」。

 全編インストとなった『PLUVIA』は、彼女にとって新しい挑戦だっただろう。

 「インストは取っ付きにくいイメージがあると思うので、聴きやすいものをめざしました。テクニックの面では、世界中にとんでもないギタリストがいるから、違うところに向かわないとダメだなと。ジョー・サトリアーニやアンディ・ティモンズのインスト作品はメロディーが良いので、歌モノみたいに自然と何度も聴けるから、そういう作品にしたいと考えました」。

 メタル特有のエッジ感やアグレッションを備えつつ、メロディアスな要素も満載の『PLUVIA』は、幅広い層にリーチできる内容だ。SAKIのギターは途轍もない表現力で聴き手に迫り、魂の奥底から汲み上げたようなエモーションの濃さを感じさせる。もっと言えば、作品を覆うダークな色合いにこそ彼女の本質的な魅力が表れているのではないか。

 「今回はすべて自分が作った曲なので、根の暗さが反映されているのかもしれない(笑)。とある先輩ミュージシャンと話したときに、子どもの頃の喪失感がずっとあり、それが曲を作るうえでの原動力になっていると言っていたんです。私も母親を早く亡くした経験があるので、それに似た喪失感を持っていて」。

 制作においては曲名からイメージを膨らませたものもあるという。脳裏に情景や映像の浮かぶ楽曲が多いのは、そういう制作プロセスも関係しているはずだ。

 「そこは意識しましたね。“PLUVIA”は〈雨〉だし、“Dezerted Zygos”は〈砂漠〉〈荒野〉のイメージでした。バンドの歌モノだとAメロ~Bメロ~サビみたいな定石の展開でも、歌声や歌詞が違うだけでヴァリエーションを出せるけど、インストはそこが難しいんですよね。同じフレーズを繰り返しても飽きるから、曲の流れをちゃんと作りました」。