メタル界で唯一無二の輝きを放つギタリストがソロ・ファースト・アルバムを完成! インストで感情のうねりを綴った〈雨女〉の物語に待ち受ける、感動的な結末とは?
フラットに出てきたもの
大学在籍中にmixxの一員としてバンド・キャリアを始動させ、Mary’s Blood~NEMOPHILAと渡り歩き、ガールズ・メタルのシーンを牽引してきたギタリスト、SAKI。昨年デビュー15周年を迎えた彼女は現在、L’Arc-en-Cielのtetsuya率いるLike-an-Angelに参加する一方、2024年からソロ活動を開始。今年2月には自叙伝「サキノオト。」を刊行し、生い立ちから音楽活動までを赤裸々に綴った内容に驚きを覚えた人も少なくないだろう。そしてこのたび、初のメジャー・ソロ・アルバム『PLUVIA』を完成させた。
「自叙伝も大きかったのかもしれないですね。執筆中にメタル・ギタリストとは?と背伸びしながら悩んでいた時期も思い出したから。でも、いろいろやっても結局自分にしかならない。ハード・ロック/ヘヴィー・メタルという出自を保ちつつ、いろんなスタイルを出したアルバムになりましたけど、自分からフラットに出てくるものを大事にしました」。
歩みを振り返ることで、心の整理ができたに違いない。アルバム制作の経緯についても訊いた。
「去年の夏にレーベルから話をいただきました。私は勝手に、いろんなゲストを呼んだお祭りっぽいアルバムを提案されると思っていたんです。ところが、ギタリストとしてインストゥルメンタルで勝負するアルバムを作りませんか?と言われて、意外でしたね。自叙伝の執筆依頼もそうでしたが、あなた一人でどんなことができますか?と問われている気がしたんです」。
全編インストとなった『PLUVIA』は、彼女にとって新しい挑戦だっただろう。
「インストは取っ付きにくいイメージがあると思うので、聴きやすいものをめざしました。テクニックの面では、世界中にとんでもないギタリストがいるから、違うところに向かわないとダメだなと。ジョー・サトリアーニやアンディ・ティモンズのインスト作品はメロディーが良いので、歌モノみたいに自然と何度も聴けるから、そういう作品にしたいと考えました」。
メタル特有のエッジ感やアグレッションを備えつつ、メロディアスな要素も満載の『PLUVIA』は、幅広い層にリーチできる内容だ。SAKIのギターは途轍もない表現力で聴き手に迫り、魂の奥底から汲み上げたようなエモーションの濃さを感じさせる。もっと言えば、作品を覆うダークな色合いにこそ彼女の本質的な魅力が表れているのではないか。
「今回はすべて自分が作った曲なので、根の暗さが反映されているのかもしれない(笑)。とある先輩ミュージシャンと話したときに、子どもの頃の喪失感がずっとあり、それが曲を作るうえでの原動力になっていると言っていたんです。私も母親を早く亡くした経験があるので、それに似た喪失感を持っていて」。
制作においては曲名からイメージを膨らませたものもあるという。脳裏に情景や映像の浮かぶ楽曲が多いのは、そういう制作プロセスも関係しているはずだ。
「そこは意識しましたね。“PLUVIA”は〈雨〉だし、“Dezerted Zygos”は〈砂漠〉〈荒野〉のイメージでした。バンドの歌モノだとAメロ~Bメロ~サビみたいな定石の展開でも、歌声や歌詞が違うだけでヴァリエーションを出せるけど、インストはそこが難しいんですよね。同じフレーズを繰り返しても飽きるから、曲の流れをちゃんと作りました」。
雨が降り、やがて芽吹く
表題曲の“PLUVIA”は、オープニングとしてこれ以上ないナンバーだ。下を向いていた主人公が前へ進みはじめ、楽曲の後半では、ありったけの感情を爆発――そんな絵が浮かばずにはいられない壮絶な一曲である。
「以前からこの曲のクリーン・アルペジオの部分をライヴのSEとして使っていたので、そこから広げたいなと。それを元に岡ナオキさんとの共作で、ドラマチックに仕上げました。私はめっちゃ雨女なんですけど、そこから去年のツアーを〈Autumn Rain〉という名前にしたんです。それくらい私にとって〈雨〉は大きなキーワード。中盤過ぎのリードは悩んだ結果、自分の感情がストレートに乗るメロディーとフレーズになりました。リードの録音だけで丸一日かかったんですよ」。
その一方で、“HORIZON”のようにリズムを強調した楽曲も用意され、自然と体が反応してしまう。
「“HORIZON”は、海沿いにある後輩の別荘で書きました。本当に海が綺麗で、明るい気持ちになれた。ただ、ドラムは人間が叩くことを考えてなかったから、ライヴで叩いてもらうのは大変そうです(笑)」。
そして、“M.D.D.”は今作のなかでの飛び道具的な一曲。エレクトロなパーティー感が炸裂している。
「これはお客さんと盛り上がる曲にしたくて、ライヴハウスで録ったお客さんの声も入れました。自分としてはエレクトリック・コールボーイ、ビースト・イン・ブラックあたりのイメージだったんですが、周囲からは初期のB'zっぽいと言われます(笑)。私の根っこに80sテイストがあるんでしょうね」。
なによりのトピックは、オジー・オズボーンのギタリストを務めたことなどで知られるガスGが参加した“Flores a Flores”。彼とSAKIのギターが抜群の相性であることを示す必聴曲だ。
「私が〈Ozzfest 2016〉に出たとき、ガスGがオジーの名曲をそつなく弾く姿に感心したんです。今回は曲の世界観に添ったソロを弾いてくれました。一緒に弾いてもいいですか?とお願いして、王道のツイン・ハーモニーも入れています」。
また、90年代のヴィジュアル系を意識した“翠雨”は、意欲的な試みだったそう。ラストを締め括る“Redemption”と“GERMINANS”は、SAKIの真骨頂を刻むメタル・ナンバー。特に後者はプログレ感もある怒涛のメロスピ曲だ。
「“Redemption”は原点回帰を意識した楽曲で、私がギターを始めたときから好きな聖飢魔IIのような、激しくて仰々しさもあって展開が多くて、というイメージでやりました。hibiki(ベース:NoGoD)くんと影丸(ドラムス:-真天地開闢集団-ジグザグ)くんの演奏も素晴らしいです。“GERMINANS”は、私とAMAHIRUを組んでいるフィンランドのフレデリック・ルクレールに参加してもらいました。真面目な彼の人柄がベースに出てますよね。間奏については、NEMOPHILAでも一緒にやっていた秋山健介さんに〈もっと難しくしたい!〉とお願いして、アレンジしてもらったんです。こうした構築感のある曲も好きなんですよ。アルバムを通しては、最初の“PLUVIA”で〈雨〉が降って、最後の“GERMINANS”で〈芽吹く〉というストーリーを考えていましたね」。
なお、初回生産限定デラックス盤に付くBlu-rayには“PLUVIA”のMVやオフショット、ツアーでのライヴ映像を収録。フォト・ブックレットも封入されている。
「MVとアーティスト写真は家族の別荘で撮りました。昔はスケートリンクもあって、そこで母親が滑っていたんです。父親は、母との思い出の場所を使われるのが嬉しいと言ってましたね。フォト・ブックは4月に撮ったんですけど、すごく寒くて……。がんばって我慢したので買ってほしいです(笑)。あと、今回はタワーレコードさんでのイベントもあって、初めて福岡のお店でも実施します。父親の地元が福岡なので、ずっとやりたかったんですよね。サイン会や写真撮影があるので、気軽に来ていただけたらなと」。
SAKIの作品や参加作を一部紹介。
左から、2026年の書籍「サキノオト。~ギタリストSAKI自叙伝~」(シンコーミュージック)、2024年のEP『GERMINANS EP』(Deserted Zygos)、NEMOPHILAの2024年作『EVOLVE』(マスターワークス)、Mary's Bloodのベスト盤『Queen's Legacy』(徳間ジャパン)
『PLUVIA』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
左から、SABER TIGERの2024年作『ELIMINATED』(Walkure)、-真天地開闢集団-ジグザグの2025年のシングル“P0WER-悪霊退散-”(CRIMZON)、ガスGの2026年作『Steel Burner』(Metal Department)
INFORMATION
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