踊る阿呆には裸のSKRYUが王様に見える
――“グラスヲカカゲテ”は音域の広さに驚きました。
「この曲はトラックが良かったんです。最初はアルバムのラストソングとして書いていて、元のタイトルもアルバム名にちなんで“光を探して”でした。でも光を探すってことは自分が暗闇にいるわけじゃないですか。そしたら〈人の優しさすら雑音に聞こえる〉みたいな辛気臭いリリックになってしまって(笑)。〈こんな曲、誰が聴きたいんじゃ!〉と思って、リリックを全て書き換えました」
――意外!
「感性が赴くまま書くとそうなっちゃうんです。それに制作中は結構1人になることが多くて、飲みの誘いも断っていたんですけど、ある時〈これから先の人生で俺はあと何回乾杯できるかな〉と思ったんです。世の中には忙しくて乾杯できない人もたくさんいるはずじゃないですか。じゃあみんなが乾杯したくなるような曲を書こうと。
例えば、最近は父に会えてないですけど、何かのアワードとかでこの曲を歌ったら画面越しで一緒に乾杯できるかなって」
――“マッパ・ノ・オウサマ”のリリックはユーモア満載ですが、ラップはガチですよね。最初、客演を入れてマイクリレーしているのかと思いました。
「自分としては、内容に合わせて意識的に声色を変えた程度です。というか、この曲には紆余曲折ありまして……。実はレコーディング当日までリリックが書けず、ぶっつけ本番で挑むもクソダサいラップしかできなかったんです。スタッフさんも失笑みたいな。でもこの曲のプロデューサーであるNoconocoだけ〈BPMを20くらい上げればいけると思うんだよなあ〉と言ってくれて、その場でビートを作り直してくれたんですよ。僕としては〈こんなダサい曲、もう聴きなくない〉と落ち込んでいたんですけど、翌日にはビートを完全に仕上げてくれた。昨日録ったクソダサいラップがめちゃくちゃかっこ良くなっていたんです。ゴミ箱に捨てたラップをNoconocoが金のビートで光らせてくれた曲です」
――素敵なエピソード。
「あと、ずっと〈裸の王様〉というテーマでリリックを書いてみたくて。踊る阿呆には裸のSKRYUが王様に見える。〈裸のシャドウにキングのコスチュームが見えるだろ?〉は我ながらいいラインだと思います」