(左から)桒原幹治、藤井登生、堀聖史、大野志門、パウロ野中

東京藝術大学の寮の一室での即興演奏から始まった4人組バンド、カブトムシ。メンバー全員がボーカルを執り、ロックから現代音楽、ヒップホップに即興、さらにラジオドラマまでを縦横無尽に横断する彼らが、DOMMUNEにまさかの降臨! 占い師・パウロ野中の怪しげな進行のもと、ニューアルバム『Panorama Pig』の秘密や、衝撃の3か月連続でリリースされるベスト盤『ハクブツシ』の全貌が明かされた。

※この記事は2026年4月7日にDOMMUNEで放送された番組「カブトムシ Presents「カブトムシの博物誌」」のトークの抜粋です


 

4人全員が歌うバンド

パウロ野中「うお〜〜! おれが占い師のパウロ野中だあ! 今日は2000年前に神々に封印されたバンド、カブトムシが復活する! カブトムシ、出でよ!」

カブトムシ「よろしくお願いします!」

大野志門(キーボード/ボーカル)「2000年前に封印されていたんですね。さっき復活した感じかな?」

野中「今日はカブトムシのニューアルバムが出るということで……」

大野「先月(3月)ニューアルバムが出て、プラス、ベスト盤がこれから出るということで、今日〈カブトムシの博物誌〉という会が緊急開催されたんです。先週の金曜日にオファーが来て決まりました。そのために復活しました」

野中「まずお前は誰だ!」

大野「僕は大野志門(読み:おおのしもん)と申します。カブトムシのキーボードとボーカルを担当。Massage Attackというバンドでも活動しています」

堀聖史(ギター/ボーカル)「僕は堀聖史(読み:ほりさとし)。ギターとボーカルです。絵も描いています」

藤井登生(ベース/ボーカル)「僕は藤井登生(読み:ふじいとい)。ベースとボーカルです」

桒原幹治(ドラムス/ボーカル)「ドラム/ボーカルの桒原幹治(読み:くわはらかんじ)です。打楽器奏者としてソロもやりつつ、最近はカブトムシにがっつり入って頑張っています」

野中「みんな〈ボーカル〉って言ってなかった? 全員歌うの?」

大野「そうですね」

桒原「4人同時はないですね」

藤井「前はあったけどね」

野中「曲ごとに歌う人が違う?」

藤井「基本はそう。でも僕や堀が、志門が歌う前提で作る曲もある」

大野「クラシックでいう〈献呈〉みたいな感じで、僕に捧げられて歌わされるんですよ。頼んでもいないのに」

堀「僕は捧げるつもりで作っています」

 

観客が帰った伝説のライブ

桒原「最初は大学の寮で、堀・藤井・僕の3人が夜な夜な集まって遊んでいたのが始まり。バンドって感じじゃなかったんです」

野中「大学では何をしていたんですか?」

堀「油画科で絵を描いていました」

藤井「僕は作曲。前衛的なやつです」

野中「前衛ってどんな?」

藤井「……説明できないんですよね。志門が泣くだけの曲とかを作っていました」

大野「伝説のコンサートね。僕が泣き叫んだ瞬間、おじいちゃんおばあちゃんが20人退場したやつ」

藤井「取手市民会館でやったんですけど、志門が泣いた瞬間にスッと立って帰っていった」

大野「15〜20分ずっと泣きそうで、1回だけ爆発的に泣くんですよ。その瞬間にスッと……」

藤井「16分我慢してたのにね」

桒原「最初に学祭へ出演した時は〈カブトムシ feat. Shimon Ono〉名義。志門はゲストだったんです」

大野「ラップをやって、めっちゃ楽しくて〈入れてくれへんか〉と頼んだら拒否されて」

藤井「タバコを吸いながら〈俺がいねえと売れねえよ〉って言ってたらしいです」

大野「1年くらい待ちましたね。コロナ禍で『忘れないで未知子』※を一緒に作るようになって、だんだんフェードインしていった感じです」

※編集部注 〈第33世界(観測不可能な宇宙領域)の無形な存在が繰り広げるアルティメットフィクションラジオ〉として制作、YouTubeで配信されている作品で、アルバム化もされている

桒原「2週間に1本ペースでオーディオドラマを制作する活動を1年続けていて、劇中歌やCM音楽も全部自分たちで作っていたんです。それで全員が曲を作るスタイルが自然にできました」

大野「『忘れないで未知子』はYouTubeで全部聴けます。総集編の『Side A エメラルド』と『Side B コスモーラ』はサブスクでも配信しています」

藤井「初期曲の“こっちにおいで”もその頃に出来た曲ですね」

 

歌と即興をコンバイン

(『Panorama Pig』収録曲“Trip Trip”を再生)

野中「めちゃくちゃいい曲! でも何がいいか分からないから説明して?」

大野「歌と即興演奏をコンバインした曲で、歌も即興で宅録しています。家での録音だから大声を出せなくて、抑圧的な歌い方になったことが新しい発見でした」

藤井「ミックスしていて〈なんでこんな声なんだ〉と思ったら、家録りだった」

野中「エロ……いや、抑えた声のニュアンスがあるね」

大野「〈エロボイス〉と言われましたね」

野中「ジャケットもちょっと……エロい?」

堀「いや、地球のことを考えて描きました。遠近法で〈有限の画面に無限を描く〉という発想があって。この場合は乳房ですけど」

野中「乳房で無限を……?」

堀「はい。豚の身体も地図のようにループしていて、〈全部を見ようとすると歪む〉というテーマにもつながる絵なんです」

藤井「メルカトル図法みたいにね」

 

CD、LP、カセットの3形態でリリースされる『ハクブツシ』

大野「アルバムは全12曲を収録。そして! 僕らは、ベスト盤をリリースすることが決定しました! 3形態のフィジカルで、CDが4月22日、カセットが5月20日、LPが6月24日という、1か月ごとに連続リリースします!」

野中「3形態、全部ベスト盤なんですか?」

大野「全部ベスト盤です。ただ、それぞれ内容と色が全然違っていて。まずCDのタイトルは『ハクブツシ「感覚」』。2枚組で、収録可能なギリギリまで曲を詰め込んでいます」

カブトムシ 『ハクブツシ「感覚」』 MY BEST!(2026)

藤井「2枚目も74分を超えていまして、マスタリングの時に幹治の音源を独断でカットしてギリギリに収めました(笑)」

大野「ソロの演奏や、先ほど話した取手市民会館での伝説の〈泣き叫び演奏〉も収録されています(“DON’T CRY ANYMORE -part I-”)。僕がピアノソロで演奏した高橋悠治さんの“指灯明”という曲も入っています」

藤井「そして5月20日に出るカセットは『ハクブツシ「遊び」』。子供が自由研究で昆虫採集する虫かごや、アリの巣観察キットのような遊び心をデザインにも取り入れています」

カブトムシ 『ハクブツシ「遊び」』 MY BEST!(2026)

桒原「カセットの方は、自分たちはマジで名曲だと思っているけど、あまり聴かれていない曲とか、『忘れないで未知子』の時期に生まれたアブストラクトな曲とかがいっぱい入っています。通販番組の音声が入っていたりね」

大野「そして最後の6月24日に出るLPは『ハクブツシ「わざ」』。こちらはベスト・オブ・ベストで、超厳選した歌物10曲を収録しています。ジャケットは星座早見表がモチーフになっています」

カブトムシ 『ハクブツシ「わざ」』 MY BEST!(2026)

野中「どういいのかやっぱり分かんないからさ、ちょっとレコードを聴かせてよ!」

(LPのラッカー盤を再生)

野中「うわ、めちゃくちゃいいね!」

 

共同体的な創作が未知の音楽を生む

(ここでお客さんからの質問コーナーへ)

客1「新作の1曲目の“Trip Trip”は、初期の仮音源では志門君が〈お腹が痛いよ〉と叫んでいたのに、本番で〈頭が痛いよ〉に変わった理由を教えてください」

大野「……え? ああ! 当時、僕、金縛りがすごくて(笑)。そこから抜け出した時に、お腹じゃなくて頭の方が痛かったんですよね(笑)」

藤井「〈お腹が痛いよ〉の方が僕は好きだ(笑)」

客2「カブトムシは最初、バンドとして始まったわけじゃないのに、今あえてバンドをやっている理由、バンドでやりたいことは何ですか?」

藤井「いい質問ですね。パソコンでの制作って結局一人で操作するものなんですけど、今の興味は、もうちょっと流動的なものを共同体的に作っていくことなんです。誰か一人の理想を忠実に再現するんじゃなくて、それぞれの意志がぶつかり合った結果、誰も予測してなかったものがポロッと生まれる。それに今、まだまだ飽きていないという感じです」

堀「それを〈抜け感〉と呼んだり、〈許容していく〉と言ったりしているんだよね」

大野「ベスト盤の3タイトルとニューアルバム『Panorama Pig』は全く違う質感になっているので、対比的に聴いていただくのもすごく面白いかなと思います。今のカブトムシはすごいです」

 


RELEASE INFORMATION

カブトムシ 『ハクブツシ「感覚」』 MY BEST!(2026)

リリース日:2026年4月22日(水)
品番:MYRD166
仕様:2枚組CD
価格:4,400円(税込)

TRACKLIST
DISC 1
1. 虹の出る噴水
2. パンジー咲かない
3. やまびこ
4. ゆめひろば
5. I wanna be your brother
6. パワーストーン
7. 忘れないで
8. Q(feat. 川本真琴)
9. タイムシフト
10. ゆめないで
11. 未知コ唄(Adrenaline Ver.)
12. 内奥Party
13. 愛の奴隷
14. Ziba Blade
15. ファンシー
16. 飛天説法・夏の波頭
17. 可愛い君の羽根
18. 青水
19. キッズ・ノクターン

DISC 2 
1. 即興演奏(ユーマ、待機線 at 千葉市美術館さや堂ホール)
2. DON’T CRY ANYMORE -part I-
3. 指灯明(高橋悠治作曲)
4. Practice of PEE
5. “Afterimage” BGM
6. Play in the Pool
7. gomenyo
8. 異邦人

 

カブトムシ 『ハクブツシ「遊び」』 MY BEST!(2026)

リリース日:2026年5月20日(水)
品番:MYRD168
仕様:カセットテープ
価格:3,025円(税込)

TRACKLIST
SIDE A
1. 私の行進
2. Pansy(合唱 ver.)
3. National Anthem for Southpow
4. Gomi Song
5. rapid
6. ジャーニー
7. DIEJOB
8. Tobas Memory

SIDE B
1. 伝統的な発声
2. 青くて自由な花
3. ドラゴンブレード(feat. 川本真琴)
4. 未知コ唄
5. 洗脳されたい
6. Tawawar
7. 通販番組 - キャピタルショッピング
8. 蒼い星(Short ver.)
9. 即興音旅2 - はなびら

 

カブトムシ 『ハクブツシ「わざ」』 MY BEST!(2026)

リリース日:2026年6月24日(水)
品番:MYRD169
仕様:LP
価格:4,730円(税込)

TRACKLIST
SIDE A
1. 飛天説法・夏の波頭
2. homecoming
3. Time Break
4. Tobas Memory
5. 荒野にて

SIDE B
1. Flower
2. ベッドタウンの神様
3. 哀哀愛
4. こっちにおいで
5. U.F.O.

 


PROFILE: カブトムシ
2019年結成。活動初期はラップトップを複数台使ったライブエレクトロニクスパフォーマンスや即興演奏、アルティメットフィクションラジオ「忘れないで未知子」の制作を中心に据え、未知のバイブスを開拓した。アルバム『色即ラグーン』『飛来者』ではバンド編成によるポップミュージックの新たな可能性を追求。2025年からは即興演奏の新作をライブごとにリリースするシリーズ〈Unity, Apart〉を開始した。2026年3月25日、ニューアルバム『Panorama Pig』を発表。

PROFILE: 大野志門
ピアニスト。6歳からクラシック音楽の演奏を始め、21歳でバンドを始める。Massage Attackでも活動中。

PROFILE: 藤井登生
10歳から音楽を楽しみ始める。芸大の作曲科に進学し、カブトムシを結成。大学院修了時に取手市長賞を受賞。若手前衛作曲家。

PROFILE: 堀 聖史
画家。遅れやズレ、忘却や諦めを含んだ幅としての〈今〉を手がかりに、そこに留まることで立ち上がる〈不在〉を描いている。自由が意味へ回収されない場所・機会として作品制作を行う。

PROFILE: 桒原幹治
打楽器奏者。リズムを出来事の形成原理として考え、その思索や探究をもとに〈ただごとではない瞬間〉を追い求める演奏活動や作品制作を行う。