Photo by 有本ゆみこ(SINA SUIEN)

2023年に発売した5thアルバム『ひかり』の制作時からコツコツと日常のスケッチを曲にしてきた川本真琴。以前からの音楽仲間、また新しく知り合ったミュージシャンと共に作り続け、約1年半の間に形となった曲の数々がカセットアルバム『Lovely』として2025年7月2日(水)にリリースされる。yagi hiromi、大野志門(カブトムシ)、テライショウタ(GOFISH)、松永天馬(アーバンギャルド)、植野隆司(テニスコーツ)、写真家の佐内正史、横沢俊一郎、リれんなどが作詞・作曲・演奏で参加している本作について、制作担当の金野篤が川本に話を訊いた。 *Mikiki編集部

川本真琴 『Lovely』 MY BEST!(2025)

 

1日1曲作る勢いで制作したカセット作品

――このカセットは、2年前のアルバム『ひかり』の制作途中から始まっています。

「はい。確か次のアルバムを作ろうとか、そういう感じではなくて」

――カセットテープ『18才』のB面を作ったときのイメージがありました。あれは『新しい友達』(2019年)の副産物で、勢いのままあっという間に短時間で出来て、しかも面白かったからです。とにかく曲を作っていこうって。

「そうです、そうです」

――曲が出来たら録音していこうと。

「コロナの頃、テライ(ショウタ)さんが毎日毎日曲が出来たら配信をしてたときがあるんですよ。1日1曲配信、みたいな。そのときに、私もそういうのをやってみたいなと思って」

――出来たらすぐに出すと。

「出来ても出しはしないんですけど」

――溜まったら形にしましょうと話しましたね。

「1日1曲作るみたいな感じでやってました。って言っても、1日で出来た曲はほとんどないんですけど」

――全く進捗報告なかったけどね。ボツにした曲もありましたが、OKにした曲の決め手は何だったのでしょう?

「やっぱり面白さ、ですね。退屈じゃないっていうのが、私の中では基準でした」

――『ひかり』の後にあるものとして、良かったと思います。

「次の作品をどうしようかなっていうのはあったんですよ。ずっと迷ってたんですが、テライさんに影響されて作ってみて、それがこうやってカセットになって、なんか不思議です」

 

ジョン・ボーダン レディーボーデン ジャン・バルジャン トム・ペティ

――では、それぞれの曲を聴きながら話しましょうか。

A1 “Radio”

――こちらの記録では、2024年2月に川本さんから歌メロのデモをもらってますね。それで曲が出来て、誰かに伴奏でギターを弾いてもらおうということになり……。

「そう、yagi(hiromi)さん」

――yagiさんのギターは伴奏じゃないというか、かなり工夫されていて。

「もう出来上がってるなって思って。すごく面白いフレーズ入れてくれてるし。それに雰囲気も作ってくれてる感じがあって」

――この曲、去年の10月にライブでyagiさんと一緒にやったよね(2024年10月8日に東京・青山月見ル君想フで開催された武田理沙のレコ発ライブに佐藤優介、yagi hiromiとの〈着いてすぐ帰ることを考える観光客ズ〉として出演)。

「そうでした」

――歌詞にミュージシャンの固有名詞がいっぱい出てきますが、ジョン・ボーナムが〈ジョン・ボーダン〉になっていたりと面白いですね。

「小学校6年生の時にFMラジオを聴いていて、土曜日の12時からは日本の音楽で、(午後)1時からは洋楽のトップ10がかかっていたんです。そんなに好きじゃなかったんですけど、何となく聴いてたんですね。眠いじゃないですか、この時間って」

――土曜は午前中が授業なので、家に帰ってきて昼飯を食べると眠くなりますね。

「このぼんやりしている時間が、今思うと暖かくて楽しかったと思うんです。だから、そのときのことを歌いました」

――ラジオのディスクジョッキーが言っていたバンドやミュージシャンの名前が歌詞になったんですね。

「2番の歌詞については、(高校の)受験勉強しているとお母さんが梨を持って来てくれたんですよ。この頃って、おしゃれに目覚めたときだったんで、梨を食べながら〈明日学校に行ったら可愛い髪形にしよう〉とか、そういうことを考えていたときの歌です」

――yagiさんのギターについては?

「すごい才能ありますね」

――以前は、ギターでのインプロが多かったけど、最近2回続けてライブ見たときは、歌うようになってきて。

「それは非常にいいですね。1人でもやっていけるでしょうね」