弾き語りに始まり、昨年からはバンド〈岩崎桃子財団〉と共に制作に臨むようになったという彼女だが、歌は発せられた瞬間に聴く人のものにもなるといったような感覚をその過程でつかんでいったのだろう……と思うほど、この初フル・アルバムでの歌と演奏は控えめそうで実はコミュ力が高い。豆腐の賞味期限がどうこうといった些細な日常の1コマも、シニカルな世界も、切実な想いを込めた悲しい歌も、そのたび異なるアプローチで応えるバンドの音によって表情と浸透力を増す。レゲエ風情の“南の島”を聴いてパティ・スミスがふわっと浮かんだのだが、2人を並べて語るのも大それた話じゃないかも。