近作は自身による多重録音が中心だったが、この23作目は真壁陽平、隅倉弘至、玉田豊夢という気心の知れたバンド・メンバーと、高野勲のアレンジによるストリングスとの協奏で、また新たなスタートを切っている。ブルージーなロックンロールにロカビリー、ジャズなどを飄々とクールに鳴らしており、そこに重なる艶やかな弦楽器の響きは、後期ビートルズも想起させるもの。詞では世情への憂いや違和感を率直に綴るが、決して言いっ放しにせず、それとどう向き合うかが肝心だと教えてくれる。還暦を迎えた心境を呟く“Sweet Little Sixty”はチャック・ベリーへのオマージュだ。