黄昏の空を見つめていると、2本のギターによる調べがどこからか聴こえてきた――穏やかな夜へと飛行する『Two Old Pilots After Twilight』は何を想う?

 快適音楽の案内人、結成48年目を迎えたゴンザレス三上とチチ松村によるギター・デュオ、GONTITIがついに帰ってきた。〈2人のパイロットによる世界旅行〉というコンセプトの下で完成した新作『Two Old Pilots After Twilight』は、約6年半ぶりのオリジナル・アルバム。2019年の前作『Assortment』以降、コロナ禍の影響によりライヴからも離れていた2人だが、その間にも曲を制作し続け、新作の構想を練っていたという。そんななか、一枚の写真をきっかけに本作は動きはじめた。

 「3年ほど前、今回のアルバムのジャケットになっている写真を松村さんに見せたんです。あれは僕が自宅の近くの夕暮れスポットで撮ったもので、この写真を起点にアルバムの方向性やタイトルが決まりました。〈After Twilight〉というのは、コロナ禍もありましたし、我々の人生の黄昏にもかけていて(笑)。黄昏を意味する英単語はいくつかありますが、そのなかでも〈Twilight〉はちょっと夢のある感じがするので選びました」(三上)。

GONTITI 『Two Old Pilots After Twilight』 Sony Music Direct(2026)

 〈Two Old Pilots〉とは、もちろんGONTITIの2人のこと。飛行機の離陸音をフィーチャーした1曲目“Departure”で飛び立てば、ギターを手にした気さくな老パイロットたちの操縦により、めくるめく快適音楽の世界が広がっていく。それぞれ7曲ずつを持ち寄り、90年代よりゴンチチ作品に参加している音楽家の菅谷昌弘を共同プロデューサーに迎えて制作された全15曲。三上がみずから打ち込みも行ったリラクシンな“Coffee Shop in Fresno”や、室内楽的なアンサンブルと共にコスタリカへと誘う昆虫好きの松村らしい浪漫が詰まった“Costa Rica Calling”など、国際空港の所在地名を冠した楽曲が並ぶなか、2人の繊細なギターが絡む“対岸からの眺め”は、菅谷アレンジのピアノが入ることで見違えたという。

 「当初は僕らのギターだけだったのが、もう一工夫欲しいなと菅谷さんに電話で相談したら、その日のうちにピアノを入れたデモを戻してくれて。彼は現代音楽もやっているので、間合いが絶妙なんです。幽玄な間の世界が築かれて、〈これは三途の川が見えるな〉と思ってこのタイトルにしました(笑)」(松村)。

 また、同じく気心の知れた羽毛田丈史が3曲を編曲。カナダのサックス奏者、ジョゼフ・シャバソンの楽曲のようなエレクトロニクスとの融合を狙ってアレンジを依頼したという“Good Will”、「僕のなかでは“夏の日の恋”(パーシー・フェイス)のイメージでデモを作っていて、アレンジが上がってきた瞬間〈よし〉と思いましたね」(三上)と語るバレアリックな“A Lovely Summer Day”などで旅に色彩を加えている。

 アルバムを締め括る松村制作の“Farewell, My Old Friend”の編曲は、折坂悠太(合奏)などで知られるピアニストの飯島はるかが担当。どこか幻想的な管弦楽とピアノが、2人の穏やかなギターを彩る。

 「僕の大親友で去年2月に亡くなった足立大輔くんに捧げる意味でこの曲名にしました。足立くんとは中学生の頃、大阪の飯盛山でバッタリ出会ったことがきっかけで仲良くなったんですけど、飯島さんの名前には飯盛山と同じ〈飯〉の字が入っていて運命的なものを感じましたね(笑)」(松村)。

 黄昏時を迎えても、決して感傷的にはならず、あくまでも飄々と心地良い音楽を紡ぐのがGONTITIの美学。だからこそ本アルバムも変わらず、素晴らしい音楽の世界へとトリップさせてくれる一枚になった。

 「いまは世界中が動乱で、逃げる場所がない感じがあると思うんです。だから心の中だけでも、そこに安住する場所を求めて逃げるのもいいんじゃないかと。このアルバムでそんな場所にお誘いできると嬉しいですね」(三上)。

GONTITIの作品を一部紹介。
左から、折坂悠太の選曲による編集盤『Paradise Shift ~ Eureka! by Orisaka Yuta ~』、2019年作『Assortment』(共にソニー)、2018年作『「we are here」-40 years have passed and we are here-』(ポニーキャニオン)、94年作『VACANCES』(ソニー)