
ビールの味を伝える〈アートワーク〉へのこだわり
――Teenage Brewingを立ち上げたときは、どういうビールを作っていきたいと考えていましたか。
「バンドで初めて〈1・2・3・4・バン!〉で音を重ねたときや通学中にワクワクしながらニューアルバムを繰り返し聴いていたときに味わった感動を、ビールで生みだしたいと思ったんです。音楽に感動してテンションが上がったときって、誰かに話したくなっちゃうじゃないですか。それは、クラフトビールも同じ。飲んだ瞬間に感動して、誰かに広めたくなる味を作りたかったんですよね。
だからこそ、〈どういうふうに伝わるか〉を大切にしてきました。同じ音楽でもフジロックで聴くのか、都内のライブハウスで聴くのかによって、聴こえかたは変わりますし、アートワークによって受け取るイメージも変わりますから」
――たしかに、Teenage Brewingは洗練されたアートワークばかりですよね。
「僕自身、作者側が受け手のイメージを助長してあげるようなアートが好きなんです。たとえば、レディオヘッドの『Kid A』も、あのデザインだからサウンドトラックみたいに聴こえたりするんだと思っていて。自分で買ったCDはもちろん、SpotifyやApple Musicでも、アートワークは目にするので、自然と情報として刷り込まれる。
それは、ビールも一緒。暑い夏の日にビーチで飲みたくなるような、ウエストコーストIPA(ホップの香りとキレのある苦み、クリアな後味が特徴的な、アメリカ西海岸を中心に発展したIPA)というスタイルのビールでも、アートワークをオーロラのような星空にすることで、ふわっと広がるような宇宙を感じられる。音楽と同じようにアートと連動していてカルチャー感が強いのも、僕がビールを気に入っている理由のひとつなんです」
――樽生ビールだけでなく、缶ビールも制作しているのも、こだわりのひとつですか。
「そうですね。缶はレコードやCDのようにアートワークで表現できるのも魅力に感じました。缶でなく瓶という選択肢もあったのですが、瓶ビールよりも缶ビールのほうが、シンプルに品質がよかったんです。なおかつ、缶のほうが面積も広い分、デザイン性も優れている。僕がビール作りを始めた2020年代というのは、ちょうどクラフトビール業界で缶ビールがメインになっていたタイミングでもあったので、瓶ビールより缶のほうが初期投資はかかるけど、〈世界で一番感動できる、かっこいいビールを作りたい〉という想いがあったので最優先で予算を組みました」
――工場を地元の埼玉県に構えたのは、どういった理由があったのでしょうか。
「20代までは田舎者と思われないよう、東京人ぶろうとしていたところがあったんですけど、30代になると〈自分は埼玉県の人だ〉という意識が段々と芽生えてきて。ビールを始めるなら、ホームグラウンドの埼玉県だなと思ったんです。最初は大宮や宮原などで考えていたものの、漠然と〈田舎で作っているビールのほうが美味しそう〉というイメージがあり、自然豊かな地域で物件を探していくなかで、現在のときがわ町に出会いました。埼玉県の田舎で世界最強のビールを作りながら、都心で発信するようなスタイルでやっていきたいと思っています」
タワレコとのコラボに至った物語
――タワーレコードとのコラボレーションは、どういった経緯で実現することになったのでしょうか。
「最初のきっかけは、僕がサポートメンバーとして参加しているdownyのイベントですね。BREWDOGという〈PUNK IPA〉(グレープフルーツのような香りとキレのある苦みが特徴的なBREWDOGの代表的なビール)を出しているイギリスの会社と、フジロックや西武ライオンズのビールでコラボレーションしていた流れから、一緒にイベントをやることになりまして。〈PUNK IPA〉という名前の通り、音楽とすごく密接な会社でもあったので、〈やっぱり音楽イベントをやりたいよね〉と盛り上がり、〈タワレコ渋谷店の地下でビールイベントをやりましょう!〉という話になったんです。
そのときに担当してくださったタワレコの武田晃さんと〈いつかタワレコのビールを出せたらいいですね〉なんて話していたら、直後にタワレコ渋谷店でビアバーが始まることになって、〈コラボレーションできますか〉とご相談いただきました。うちのストーリーにもぴったりですし、〈ぜひ、やりたいです!〉といった感じでしたね」