創設150年を迎えたワーグナー・オペラの殿堂、バイロイト音楽祭。そこに日本人指揮者として最も深く関わったのが、飯守泰次郎(1940~2023)である。本書は、指揮者としての彼の歩みを縦軸に、彼自身によるワーグナー作品の解説を横軸として、ワーグナーに生涯を捧げた姿を立体的に描き出す。自らピアノを弾きながら作品を語る姿は広く知られているが、その深い内容が一冊に結実した意義は大きい。加えて、米国留学中のコンクール挑戦がバイロイトでの音楽助手就任へと結びつく過程や、ペルレア、カラヤン、シュタインら巨匠との邂逅など、数奇にして運命的なエピソードの連続に、ページを繰る手が止まらなくなる。