2026年9月19日(土)と20日(日)の2日間、埼玉・ベルーナドームにてザ・ウィークエンドの来日公演が開催される。また、同公演の開催にあわせて、『After Hours』『Dawn FM』『The Idol』『Hurry Up Tomorrow』の4作品が日本独自企画〈AFTER HOURS TIL DAWN COLLECTION〉としてリリースされた。今回の来日公演を前に、ライブを見る上で重要な4作品をライターのノイ村に改めて解説してもらった。 *Mikiki編集部


 

リスペクトする天野喜孝や亜蘭知子とコラボ、ザ・ウィークエンドの物語は最終章へ

Take off my disguise(変装を脱ぎ捨てろ)
I’m living someone else’s life(俺は別の誰かの人生を生きている)
Suppressing who I was inside(内なる自分を押さえつけながら)
(“Alone Again”/『After Hours』収録)

2020年にリリースした『After Hours』で幕を開けた、ザ・ウィークエンドの長い旅路。3枚のスタジオアルバムと前代未聞の規模を誇るワールドツアー、複数の映像作品によって構成されたこの物語は、端的にまとめるのであれば、〈ザ・ウィークエンド〉として世界屈指の名声を手にしたエイベル・テスファイが、地獄に堕ち(『After Hours』)、煉獄を彷徨い(『Dawn FM』)、天国へと向かい(『Hurry Up Tomorrow』)、本来の自分自身を取り戻すというものだ。これは比喩ではなく、『Hurry Up Tomorrow』を制作していた当時のインタビューで、同作がザ・ウィークエンド名義による最後の作品となることを本人が示唆していたものである。

「今作っているアルバムは、おそらくザ・ウィークエンドとしての最後の作品になると思う。これは僕がやらなければならないこと。ザ・ウィークエンドとして、僕は言いたいことをすべて言い尽くしたんだ」。

破滅主義的かつ退廃的で、富と名声と快楽を求めてやまない。自己憐憫に溺れ、間違いなくナルシスト。決して近づくべき人物ではないが、圧倒的なショーマンとしての才能を誇り、その作品やライフスタイル、ファッションに魅了されてしまう人が後を絶たない。現代のポップシーンにおける、屈指のダークヒーロー。それがザ・ウィークエンドだ。

だが、コロナ禍の2020年に“Blinding Lights”がヒットし、同楽曲はSpotify史上最大のストリーミング数を記録。この記録が今も破られていないことからも分かるように、先行きの見えない時代に、人々は彼のような存在を何よりも求めているのだ。

自身のキャリアをアンダーグラウンドから一躍スターダムへと押し上げた2011年のミックステープ3部作(『House Of Balloons』『Thursday』『Echoes Of Silence』)以来となる今回のトリロジーは、ザ・ウィークエンドに対する大きな期待と、それに応えるためにさらに深い闇へと堕ちていくという負のループを断ち切るため、エイベル・テスファイ自身がザ・ウィークエンドに与えた〈再生の物語〉を描いたものと言い換えることができるかもしれない。

そして、来たる来日公演を前にリリースされた日本独自企画盤〈AFTER HOURS TIL DAWN COLLECTION〉では、ゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズのロゴやキャラクターデザインなどで知られる天野喜孝が新たにアートワークを手掛け、『Dawn FM』には亜蘭知子とコラボした“Out Of Time”の新バージョンが収録されている。両者はともにザ・ウィークエンドが尊敬してやまないアーティストであり、自身の物語がカーテンコールを間近に迎えた今、特別な瞬間を分かち合いたいという思いもあるのだろう。今回のコラボレーションでザ・ウィークエンドに興味を持ったという人はもちろん、これまで彼の旅路を追ってきたファンにとっても大きな意味のあるコレクションだ(日本独自企画のアイテムとあって海外のコミュニティからは羨望の声が寄せられているそうだ)。

 

地獄・煉獄・天国を辿るザ・ウィークエンドの新たな3部作

ここで、〈AFTER HOURS TIL DAWN COLLECTION〉の4作品を振り返っておこう。

『After Hours』(2020年)

THE WEEKND 『After Hours』 XO/Republic/ユニバーサル(2020)

言わずと知れた大ヒット曲“Blinding Lights”や、後にアリアナ・グランデを交えたリミックス版も制作された“Save Your Tears”など、すでに確かな支持を集めていたザ・ウィークエンドを頂点へと押し上げた記念碑的作品。本作のヒットがなければ、スーパーボウルのハーフタイムショーへの出演は実現しなかったかもしれない。一方で、同ショーの名場面である(未だにミームとしての人気も根強い)迷宮を彷徨う彼の姿は、孤独から逃げ出すために富や名声といった快楽に溺れ、(自覚症状があるにも拘わらず)さらなる破滅へと向かっていく〈当時のザ・ウィークエンド〉が陥っていた状況そのものでもあった。

マックス・マーティンの手腕が発揮された珠玉のトラック群は、聴く者を虜にする驚異的な中毒性を誇る。“Blinding Lights”では、元恋人に執着する人物が(酩酊状態にも拘わらず)車で夜の街を駆け抜ける危険な光景が描かれており、そんな物語を含む作品がハッピーエンドで終わるわけもなく、アルバム本編の最後を飾る“Until I Bleed Out”でザ・ウィークエンドは血の海に溺れながら、何よりも己を苦しめる〈自分自身=ザ・ウィークエンド〉を消し去ることを切に願うのだった。

 

『Dawn FM』(2022年)

THE WEEKND 『Dawn FM』 XO/Republic/ユニバーサル(2022)

天国と地獄の狭間に位置する煉獄を彷徨うザ・ウィークエンド。そこから抜け出すためのガイド役を務めるのは、自身がショービズの世界を志すきっかけとなった映画「マスク」で主演を務めたジム・キャリーだ。EDM界のレジェンドとして知られるスウェディッシュ・ハウス・マフィアやカルヴィン・ハリスが参加した本作は、ザ・ウィークエンドのキャリア全体でも特にアップリフティングな作風となっている。

一方で、本作で主要なプロデューサーを務めたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの手腕であろう、アルバム全体を貫くどこか捻れたような音像は、どれだけ享楽に没頭しても逃れられない〈時間切れ〉の瞬間を想起させる。

“Out Of Time”では、1983年にリリースされた亜蘭知子の“Midnight Pretenders”が大々的にサンプリングされており、シティポップの幻想的なムードが切ない恋愛模様を彩る。だが、いつまでも過去のドラマティックな思い出に身を委ねているわけにはいかない。同楽曲のラスト、ラジオのパーソナリティを務めるジム・キャリーは、〈もうすぐあなたは癒やされ、許され、生まれ変わる/すべてのトラウマや痛み、罪、恥から解放される/自分の名前すらも、きっと忘れてしまうかもしれない〉と語りかける。

 

〈死〉を受け入れた『Hurry Up Tomorrow』で負のループを断ち切る

『The Idol』(2023年)

THE WEEKND 『The Idol (AFTER HOURS TIL DAWN COLLECTION)』 ユニバーサル(2026)

ザ・ウィークエンド自身が製作・主演を務めたドラマ「ジ・アイドル」も忘れてはならない。今回リリースされた『The Idol (AFTER HOURS TIL DAWN COLLECTION)』には、同ドラマ用に制作された“One Of The Girls - The Weeknd, JENNIE & Lily-Rose Depp”、“Popular - The Weeknd, Playboi Carti &  Madonna”といった楽曲が収録され、ファンにとって待望のフィジカル化となる。厳密には今回のトリロジーには属さない作品だが、マイク・ディーンをはじめとした一部制作陣が共通しており、偶像や名声といったテーマにおいても重なる部分が多い。触れる価値は間違いなくあるだろう。

 

『Hurry Up Tomorrow』(2025年)

THE WEEKND 『Hurry Up Tomorrow』 XO/Republic/ユニバーサル(2025)

地獄、煉獄の旅路を経てザ・ウィークエンドが辿り着いたのは、全22曲、約85分というボリュームを誇る大作だ。アルバムにはアニッタ、トラヴィス・スコット、プレイボーイ・カーティ、フローレンス・アンド・ザ・マシーン、ラナ・デル・レイ、ジャスティス、ジョルジオ・モロダーといった豪華ゲスト陣が集結し、「イット・カムズ・アット・ナイト」などで知られるトレイ・エドワード・シュルツ監督によるアルバムと同名の映画も制作された。まさに自身のクリエイティビティを限界まで解き放った、ザ・ウィークエンドの集大成と言える作品である。

そうした豪華な意匠とは裏腹に、本作を決定づけているのは3曲目に配置された“I Can’t Fucking Sing”だ。ザ・ウィークエンドが〈もう歌えない〉と吐き捨てるだけのこの短いトラックは、2022年9月に実施されたワールドツアーのロサンゼルス公演で、ライブ中に声が出なくなり、コンサート自体が中止となったエピソードに由来している。当時の出来事は自身にとってある種のトラウマとなり、やがて〈やるべきことはすべてやった〉と解釈するに至ったという。そんなザ・ウィークエンドの当時の混乱と、そこから抜け出すために再び快楽に身を投じるかのようなブラジリアンファンク“São Paulo”へとなだれ込み、“Baptized In Fear”では(それでも避けられなかった)死の淵を彷徨う恐怖と、限界状態で抱いた生への渇望を鮮やかに描き上げる。

そんな本作の真のキーパーソンは、中期のイェ(カニエ・ウェスト)のサウンドに欠かせないマイク・ディーンだろう。彼のシグネチャーサウンドである、どこまでも沈み込むような音像は、本作の絶望的なムードをスピーカーの限界まで拡張している。

こうして長い旅路を経た先に待つのは、あらゆる闇から抜け出し、遂に本心から〈死〉を受け入れたザ・ウィークエンドの姿だ。アルバムの最後を飾るタイトル曲で彼は、〈死んだら天国に行きたい/変わりたいんだ/もう痛みは要らない、要らない、要らない〉と歌い、まるで憑き物が落ちたかのように穏やかな表情ですべての終わりを祝福する。

壮大な物語が終わりへと向かう時、デビュー作『House Of Ballons』収録の“High For This”へと繋がる予兆が見える。しかし、あと少しでループが完成しようとする瞬間、僅かな無音が訪れる。限界を超えて破壊と再生を繰り返してきた負のループは、ここで断ち切られるのだ。

 

日本で集大成を迎える〈After Hours Til Dawn Tour〉

今回の来日公演はワールドツアー〈After Hours Til Dawn Tour〉の一環として行われるが、当初は『After Hours』を発表したタイミングで開催される予定だったという。しかし、新型コロナによるパンデミックの影響でスケジュールの延期や会場の変更などが生じ、いつしかトリロジー全体を内包するものへと変貌していった。

その結果、150公演を超える規模へと膨れ上がり、史上最大のコンサートツアーとして歴史に名を残すことになる。ツアー中に新たなアルバムがリリースされたこともあり、ステージのプロダクションやセットリストについては幾度となく手が加えられているが、今回の来日公演を含む〈Live in Asia〉と銘打たれた一連のアジア公演は、約4年におよぶ壮大なツアーの最後のセクション、つまりザ・ウィークエンドにとって集大成というわけだ。

現代のショービズを体現するザ・ウィークエンドらしく、各地での公演の模様を収めた写真や映像からは、大人数のダンサーや巨大なLEDパネル、ありったけのパイロに都市を模した壮大なステージセットなど、大規模なライブならではの凄まじいスペクタクルが感じられる。

なかでも絶大なインパクトを誇るのは、2023年のヨーロッパツアーで導入された、ステージ中央に設置された空山基が手掛ける女性のロボット像だろう(2026年には約12mもの高さを誇る新たな像が導入され、世界中のファンの度肝を抜いていた)。ザ・ウィークエンドといえば、これまで数多くの作品で偶像をモチーフにしてきたアーティストだが、巨大な像を見上げながら歌う彼の姿は、まさに自身と偶像の関係を示しているように思える。

ツアーのネタバレにならないよう詳細は伏せるが、各地のセットリスト(いずれも約40曲近いボリューム)を見る限り、今回の来日公演も新たなトリロジーの楽曲を中心に、歴代のヒット曲も交えながらザ・ウィークエンドの〈破滅と再生〉が描かれていくような構成になるだろう。〈あのヒット曲を聴きたい〉というオーディエンスの期待に応えるのはもちろん、これまで長きにわたって描かれてきた壮大な物語が一夜に凝縮された、極めて濃厚な体験が待っていることは間違いない。

ザ・ウィークエンドがキャリアの約半分を費やして描いてきた物語が、まもなく終わりを迎えようとしている。〈AFTER HOURS TIL DAWN COLLECTION〉の4作品と今回の来日公演は、その遥かなる旅路の総括でもある。すべてが終わった後に、何が残っているのかは分からない。だが、ザ・ウィークエンドにとってはもちろん、現代のポップシーンにおいても、これが一つの大きな区切りになることは間違いないだろう。来たるその瞬間を、是非見届けてほしい。

 


RELEASE INFORMATION

THE WEEKND 『After Hours』 XO/Republic/ユニバーサル(2020)

■『After Hours (AFTER HOURS TIL DAWN COLLECTION)』

リリース日:2026年9月11日(金)
品番:UICU-1375
価格:3,300円(税込)
歌詞・対訳付

TRACKLIST
1. Alone Again
2. Too Late
3. Hardest To Love
4. Scared To Live
5. Snowchild
6. Escape From LA
7. Heartless
8. Faith
9. Blinding Lights
10. In Your Eyes
11. Save Your Tears
12. Repeat After Me Interlude
13. After Hours
14. Until I Bleed Out
15. In Heaven (Live) ※デヴィッド・リンチのカバー

 

THE WEEKND 『Dawn FM』 XO/Republic/ユニバーサル(2022)

■『Dawn FM (AFTER HOURS TIL DAWN COLLECTION)』

リリース日:2026年9月11日(金)
品番:UICU-1376
価格:3,300円(税込)
歌詞・対訳付

TRACKLIST
1. Dawn FM
2. Gasoline
3. How Do I Make You Love Me?
4. Take My Breath
5. Sacrifice
6. A Tale By Quincy (feat. Quincy Jones)
7. Out Of Time
8. Here We Go...Again (feat. Tyler, The Creator)
9. Best Friends
10. Is There Someone Else?
11. Starry Eyes
12. Every Angel Is Terrifying
13. Don’t Break My Heart
14. I Heard You’re Married (feat. Lil Wayne)
15. Less Than Zero
16. Phantom Regret (feat. Jim Carrey)
17. Out Of Time (with 亜蘭知子)
18. Moth To A Flame (with Swedish House Mafia)
19. Closing Night
*来日記念盤ボーナスソング

 

THE WEEKND 『The Idol (AFTER HOURS TIL DAWN COLLECTION)』 ユニバーサル(2026)

リリース日:2026年9月11日(金)
品番:UICU-1377
価格:3,300円(税込)
歌詞・対訳付

TRACKLIST
1. One Of The Girls - The Weeknd, JENNIE & Lily-Rose Depp
2. Jealous Guy - The Weeknd
3. Double Fantasy - The Weeknd feat. Future
4. Popular - The Weeknd, Playboi Carti & Madonna
5. Like A God - The Weeknd
6. False Idols - The Weeknd, Lil Baby & Suzanna Son
7. A Lesser Man - The Weeknd
8. Fill The Void - The Weeknd, Lily-Rose Depp & Ramsey
9. Dollhouse - The Weeknd & Lily-Rose Depp
10. Take Me Back - The Weeknd
11. The Lure (Main Theme) - The Weeknd & Mike Dean
12. Society - The Weeknd
*来日記念盤ボーナスソング

 

THE WEEKND 『Hurry Up Tomorrow』 XO/Republic(2025)

■『Hurry Up Tomorrow (AFTER HOURS TIL DAWN COLLECTION)』

リリース日:2026年9月11日(金)
品番:UICU-1378
価格:3,300円(税込)
歌詞・対訳付

TRACKLIST
1. Wake Me Up (with Justice)
2. Cry For Me
3. I Can’t Fucking Sing
4. São Paulo (with Anitta)
5. Until We’re Skin & Bones
6. Baptized In Fear
7. Open Hearts
8. Opening Night
9. Reflections Laughing (with Travis Scott & Florence and the Machine)
10. Enjoy The Show (with Future)
11. Given Up On Me
12. I Can’t Wait To Get There
13. Timeless (with Playboi Carti)
14. Niagara Falls
15. Take Me Back To LA
16. Big Sleep (with Giorgio Moroder)
17. Give Me Mercy
18. Drive
19. The Abyss (with Lana Del Rey)
20. Red Terror
21. Without  Warning
22. Hurry Up Tomorrow

■購入特典
先着:タワーレコード・コラボ スマホサイズステッカー(64 x 91mm)
詳細ぺージ:https://tower.jp/article/feature_item/2026/08/26/0103

 

LIVE INFORMATION
The Weeknd: After Hours Til Dawn Tour

2026年9月19日(土)埼玉・ベルーナドーム(西武ドーム) 
開場/開演:16:00/17:50
SPECIAL GUESTS:Creepy Nuts

2026年9月20日(日)埼玉・ベルーナドーム(西武ドーム) ※SOLD OUT
開場/開演:15:00/17:00
SPECIAL GUESTS:Creepy Nuts、¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U

■公演に関するお問い合わせ
LIVE NATION H.I.P. 03-3475-9999 https://www.livenationhip.co.jp/

主催・招聘・企画・制作:LIVE NATION H.I.P.
後援:J-WAVE/interfm
協力:ユニバーサル ミュージック合同会社/ぴあ

来日公演特設サイト:https://www.livenationhip.co.jp/all-events/the-weeknd-tickets-ae474869

 

EVENT INFORMATION
After Hours Til Dawn Tokyo Pop-Up Store

開催期間:2026年9月11日(金)~2026年9月21日(月・祝)
営業時間:11:00~20:00
※Visaカードをお持ちの方限定特別枠:10:00~11:00
会場:UNIVERSAL MUSIC STORE HARAJUKU(〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-20-6)
販売商品:ストアオリジナル商品、ツアー商品、コラボレーション商品ほか
特別協賛:Visa
〈After Hours Til Dawn Tokyo Pop-Up Store〉特設サイト:https://theweeknd.co/AHTDTokyo