ベックのニューアルバム『Ride Lonesome』が本日リリースされた。すべて新緑曲で構成された本作は、『Sea Change』『Morning Phase』といった名盤を共に作り上げたメンバーやスタッフが再集結。ベックの新たな金字塔とも呼べる傑作について、文筆家のつやちゃんがベック本人に行ったインタビューをお届けしよう。 *Mikiki編集部
自分の内側へ深く潜っていく〈黄昏時のアルバム〉
――前作『Hyperspace』(2019年)のリリースから約7年が経ちました。この間、他のアーティストの作品に参加したり、多種多様な形でのライブ活動もされていましたが、アルバムのリリースを急ぐのではなく、こうした多岐にわたる活動に注力していた理由を教えてください。
「僕は自宅にスタジオを持っているんです。他にやるべきことがない日は、たいていスタジオにこもっています。この20年間でその習慣が乱されたのは、おそらくコロナ禍の時くらいでしょう。でもその時でさえ、僕は常に何かを作っていました。ポール・マッカートニーと曲を作ったり、ゴリラズと共演したりもしましたね。あと、ハインズやナタリー・バーグマン、ラヒルといったアーティストの作品に客演したりもしました。
僕は常に音楽を作っているんです。毎週のようにスタジオに入って、いつも複数のプロジェクトが同時進行している状態なんです。そして時間が経つにつれて――それが数年かかることもありますが――作った曲が形を成して、アルバムになったり、シングルやEPになったりするんです。言うなれば、音楽の工場のようなものですね。
例えば、今年のバレンタインデーに『Everybody’s Gotta Learn Sometime』という作品をリリースしたんです。あれは僕が長年書き溜めてきたラブソングを掘り起こして、1ヶ月ほどで仕上げたミニアルバムでした。そんなふうに、プロジェクトをひとつ選んで、それが形になるまで没頭する。実際、今動いているプロジェクトや、やりたいと思っているプロジェクトは山ほどあるんです。結局のところ、特定の何かにどれだけの時間とエネルギーを注げるかだと思います」
――今作を聴いていると、〈喪失のあとも世界と関係を結び直していくこと〉がテーマのように感じて、最終的にはポジティブな印象を受けました。ご自身では、この作品を一言で表すとどんなアルバムだと思いますか?
「そうですね……〈黄昏時のアルバム〉でしょうか。自分の内面を見つめ、人生や今の立ち位置について考える、そんな時間帯のイメージです。一日の終わりである夜へと向かっていく時間のような、自分の内側へと深く潜っていく作品だと思うんです。
あと、これは適切な言葉ではないかもしれませんが、〈清算〉にも近いかもしれません。自分が今どこにいて、何を経験してきて、これからどこへ向かうのか。それらすべてを受け止める瞬間と言いましょうか。大激変のあとに、散らばった破片をすべて拾い集め、それらを元通りに修復できるのか、あるいはゼロからやり直さなければならないのかを確かめる……そんな感覚です。だから、とても内省的で、瞑想的で、エモーショナルな作品だと言えますね」
音楽は〈呪文を唱えるようなもの〉
――今作の曲名を順に並べていくと、〈逃げる→夜へ入る→言葉を失う→傷つく→別れる→愛を探す→終わりを受け入れる→愛とは何か問い直す→光の向こうへ〉と、まるでアルバム全体がひとつの物語のように感じられました。これは制作当初から、そのようなストーリーを描いていこうと構想していたのでしょうか。
「制作中、アルバムの幕開けにふさわしいと思う曲が何度か入れ替わりましたが、“Beyond The Light”を最後に置くことだけは決めていました。アルバムのエンディングが決まると、他の曲たちをそこへどう導けばいいかが見えてくるんです。
一貫性のあるアルバムとして作品を捉える時、1曲1曲がアルバム全体の雰囲気にどう寄与するかを考えます。それぞれの曲が、大きなムードの中に、新たな色彩や情緒をどう添えられるかを考える。そして、その大きな流れに寄与しないものは、少しずつ削ぎ落としていくんです。
レコードを作る時、特に今回のような作品を作る時にいつも考えているのは、音楽は〈呪文を唱えるようなもの〉だということです。もし音楽的、あるいは歌詞の面でその呪文を解いてしまうようなものがあれば、それは取り除かなければならない。逆に、その呪文を維持し、聴き手をその場所に留まらせ、音楽が作り出す世界に陶酔させてくれるものがあれば、それこそが残すべきものなんです。いいアルバムというのはひとつの呪文のようなもので、聴き手に〈その魔法にかけられていたい〉と思わせるものなのです」
――今作ではジョーイ・ワロンカーやスモーキー・ホーメル、ナイジェル・ゴドリッチといったこれまで長く信頼関係を築いてきた人たちと再び制作されています。人選にはどのような狙いがあったのでしょうか?
「彼らとは長い時間をかけて育んできた深い絆があります。この種の音楽を作るにあたって、彼らは最高峰のアーティストだと僕は思っています。僕たちが一緒にプレイする時に生まれる化学反応や繋がり、エモーションは、時を経てもずっと続いているんです。
僕自身、彼らと一緒に仕事をする時には〈今回は一体どんなものが生まれるんだろう?〉とワクワクします。彼らは、僕がやろうとしていることに心から共鳴してくれます。僕が目指している場所に曲をたどり着かせるために、その形を整えるのを助けてくれるんです。たとえ彼らが僕の予期しなかった方向へ向かっていったとしても、彼ら自身の卓越したセンスと美学が僕のやっていることに深みを与えてくれると信じています。
子どもの頃に音楽を始めたいと思った時、ザ・ビートルズでもニルヴァーナでもトーキング・ヘッズでも、憧れのバンドを見て〈あの中に入れたらどんなに素晴らしいだろう〉と想像しますよね。僕たちがバンドを組むのは、自分たちなりの〈魔法のような人々の集まり〉を求めているからだと思うんです。僕自身はソロアーティストですが、こうした長く続く音楽的な関係に恵まれてきました。
ジョーイなんて、僕の最初のアルバムが出たときからずっと一緒にプレイしています。僕の最初のジャパンツアー、確か川崎での公演だったと思いますが、あの時も彼がドラムを叩いていました。僕たちは一緒に試練をくぐり抜けてきたし、音楽的にも共に成長してきた。例えるなら、数本の木を植えたら、それらが寄り添うように育って、独特な形を作り上げていくような感じでしょうか。
長い時間をかけて変化していくそのプロセスは、本当に魅力的なものだと思います。みんな忙しいから、放っておけばあっという間に10年くらい経って、気づけば〈久しく一緒にアルバムを作っていないね〉なんてことになる。だからこそ、意識的にその関係を繋ぎ止めておくことも大切なんです」
日本は常にインスピレーションを与えてくれる場所
――キャリアを重ねた今、〈新しいことをやること〉と〈自分らしさを深めること〉の割合はどのように考えていますか?
「僕は常に新しいことに取り組んでいます。リリースしていない曲もたくさんありますし、あらゆるジャンルの音楽を作っています。みんなが想像もつかないようなことだってやっていますよ。
でも最終的にひとつのアルバムとしてまとめる時は、その作品を中心に作り上げたい宇宙、つまり音楽的な世界観をひとつ選ぶようにしています。それが表面的なスタイルだとしたら、アルバムの本当の核、魂となるのは〈曲〉そのものです。ですから僕は、スタイルがどうあるべきかといったことにはあまり固執していません。それよりも、その曲がいい曲であること、誰かに歌ってあげたくなるような、あるいは何度も繰り返し聴きたくなるような曲にすることに、より多くのエネルギーを注いでいます。
もちろん、毎回そんな曲が書けるわけではありませんが、人々にとって意味を持ち、人生の一部として吸収されるような曲があればいいと願っています。僕自身、他の誰かが作った曲が自分の人生における音楽の星座の一部になっていることがたくさんありますから。誰の人生にも、自分自身の人生に寄り添い、それを支えてくれるような自分だけの音楽の正典があるものです。
今作の曲に関しては、人間関係の複雑さや感情、そして誰かと繋がろうとすることの切なさや、その中で生まれる高揚感や喪失感を描きたいと思っていました。それは人類が何世紀にもわたって作り出してきた、音楽の最も本質的な部分だと思います」
――では、最後に日本のファンへのメッセージをいただけますか。
「もちろん。2年前、日本に行って僕1人でアコースティックライブをすることができました。ちょうどこのアルバムに取り掛かろうとしていた頃です。今回の曲たちは、ある種、瞑想的な性質を持っていて、深く自分を見つめ直し、言葉にするのが難しい感情を表現しようとしています。
僕はこれまでの人生で、その時々の異なるステージにおいて何度も日本を訪れてきました。日本にいる時、そして日本を去る時にも感じるのですが、自分の人生を何か澄んだレンズで覗き込めるようになったような、そんな清々しい気持ちになれるんです。
そういった意味で、日本は僕にとって常にインスピレーションを与えてくれる場所でした。数年前のライブの時も、『Sea Change』の曲を演奏しながら〈実は、これらの曲の多くは日本で書かれたんだ〉と話したのを覚えています。当時、僕は長いジャパンツアーの最中でした。あのアルバムの曲たちが持っていたシンプルさや透明感は、日本という場所が持つ空気が僕をそういう精神状態にしてくれたからこそ生まれたのだと思います。
また日本へ行って皆さんの前で演奏できる日を楽しみにしています。日本で自分の音楽を奏でることに、特別な繋がりを感じているんです。僕は日本から本当に多くのインスピレーションを受け取ってきました。この『Ride Lonesome』が皆さんの心に届き、安らぎやカタルシス、あるいは、皆さんが今必要としている何かを与えられることを願っています」
RELEASE INFORMATION
リリース日:2026年9月18日(金)
品番:UICC-10062
価格:3,300円(税込)
日本盤:ライナーノーツ by 後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)・歌詞・対訳付・日本独自紙ジャケット仕様
TRACKLIST
1. Ride Lonesome
2. Run Away
3. In The Night
4. Failed Words
5. Bleed
6. Disappearing Act
7. For Your Love
8. Slow Canyon
9. It Ends Right Here
10. Falling Through My Hands
11. If You Don’t Know What Love Is
12. Beyond The Light
■国内盤CD購入特典
ステッカー(サイズ:9cm × 5cm)
詳細ページ:https://tower.jp/article/feature_item/2026/07/17/0106
EVENT INFORMATION
ベック『Ride Lonesome』発売記念リリースパーティー
ベックのニューアルバム『Ride Lonesome』の発売を記念して、世界中で行われるリリースパーティーの東京開催が決定。当日発売となる商品をいち早くチェックすることができるほか、最新作を良質な音響環境でご試聴いただけるスペシャルなイベントとなっています。そしてイベント来場者には先着で〈オリジナルポストカード〉をプレゼント。さらに、当日会場にて対象商品をご購入いただいた方を対象に抽選で〈オリジナルトートバッグ〉をプレゼントいたします。
■開催日時
2026年9月18日(金)19:00スタート
※フリー入場
■開催場所
タワーレコード渋谷店6F TOWER VINYL SHIBUYA
■内容
ベック『Ride Lonesome』リリースパーティー
※来場者には先着で〈オリジナルポストカード〉をプレゼント。さらに、当日会場にて対象商品をご購入いただいた方を対象に抽選で〈オリジナルトートバッグ〉が当たる抽選会も実施予定
■抽選対象商品
2026年9月18日(金)発売 ベック『Ride Lonesome』日本盤CD(UICC-10062)
2026年9月18日(金)発売 ベック『Ride Lonesome』輸入盤LP(611-1769)
2026年9月18日(金)発売 ベック『Ride Lonesome』タワーレコード限定/Dark Green Vinyl(612-5777)
※輸入盤は入荷が遅れる場合がございます
■オリジナルトートバッグの抽選会について
イベント当日、抽選会開始時間までに会場にて対象商品をご購入いただいた方に、抽選会にご参加いただける〈抽選参加券〉をお渡しいたします。
※〈抽選参加券〉は1商品に付き、お1人様1枚お渡しします
※〈抽選参加券〉は数に限りがございます。無くなり次第配布終了となります
※〈抽選参加券〉はイベント当日に限り有効です
※〈抽選参加券〉はいかなる理由でも再発行出来かねます
※リスニングイベント終盤に抽選を行い賞品を差し上げます
※〈抽選参加券〉は店頭・電話・インターネットでの事前予約によるお取り置きはできません。入荷後のお取り置きもできかねますのでご了承ください
※混雑が予想される場合、事前の告知なくご予約列の形成や整理券の発行をさせていただく場合がございます。予めご了承ください
■タイムテーブル
ニューアルバム『Ride Lonesome』試聴会&〈オリジナルポストカード〉配布開始:19:00~
特典抽選会:20:00~
※時間は前後する可能性がございます
■注意事項
※アーティストの出演はございません
※トラブルにより、やむを得ず中止・内容変更になる場合がございます
※イベントはどなたでもご試聴いただけますが、混雑の場合、入場規制をかけさせて頂く場合がございます。予めご了承ください
※イベント時にお渡しするノベルティなどの転売は固く禁じさせていただきます
※天候・災害や諸事情の理由により、イベントがやむをえず中止になる場合がございます
※ゴミは各自お持ち帰りいただきますよう、ご協力お願いいたします
※イベントの映像・写真が公開されることがあります。予めご了承の上、ご参加ください
※イベント対象商品の返品・交換はお受けできません。商品不良の場合のみ良品との交換を承ります
※イベント会場までの交通費、宿泊費等の諸費用の一切はご当選者のご負担となります。万が一、イベントが中止になった場合でも変わりはございません
※会場内にロッカーやクロークはございません。貴重品・手荷物の管理は自己責任にてお願いいたします
※イベント会場内外で発生した事故・盗難等には主催者・会場は一切責任を負いません。貴重品は各自で管理してください
※公共道路や店舗周辺への滞留は、通行の妨げや他のお客様にご迷惑となる場合もありますのでお控えください
※当日会場では、スタッフからの指示にご理解とご協力をよろしくお願いいたします。当日スタッフの指示に従っていただけない場合は、イベントの中止もしくはご退場をいただく場合がございます。予めご了承の上ご参加ください
■販売に関するお問い合わせ先
タワーレコード渋谷店 03-3496-3661
イベントに関するお問い合わせ先
ユニバーサル ミュージック・カスタマー・センター 0570-044-088
詳細ページ:https://towershibuya.jp/news/2026/09/09/233836
PROFILE: BECK
グラミー賞を8度受賞、音楽シーンを代表するシンガーソングライター、プロデューサー、マルチ奏者としてこれまで14枚のスタジオアルバム(うち3枚はインディーズレーベルから)を発売。1994年に発表した“Loser”では全米モダンロックチャートにて5週連続1位を獲得し、大ブレイクを果たす。フォーク、ファンク、ソウル、ヒップホップ、エレクトロニカ、オルタナティブロック、カントリー、サイケデリアなど幅広いジャンルを網羅し、4度のプラチナディスクに認定されている。1996年にはアルバム『Odelay』でグラミー賞2部門を受賞し、2014年には通算12作目のスタジオアルバム『Morning Phase』で最優秀アルバム賞を含む3部門を受賞した。
2000年代に入ってもコンスタントにアルバムをリリースしており、2019年にはアルバム『Hyperspace』を発表。2020年代に入ってからも世界各国へのツアーやフェニックスとのコラボシングル“Odyssey”のリリースなどコンスタントに活動を続け、直近でも2024年にはアコースティックセットでの来日公演、2025年には〈NANO-MUGEN FES. 2025〉への出演と、東京・大阪での単独公演〈BECK Live in Japan 2025〉で来日も果たしている。2026年9月18日にニューアルバム『Ride Lonesome』をリリースする。
日本公式HP:https://www.universal-music.co.jp/beck/
海外公式HP:http://www.beck.com/
Instagram:https://www.instagram.com/beck/
Facebook:https://www.facebook.com/Beck
TikTok:https://www.tiktok.com/@beck
X:https://x.com/beck
YouTube:https://youtube.com/@beck
