ドゥエニャス、〈ハイフェッツのストラディヴァリウス〉での好演も収録
2002年にスペインの古都グラナダで生まれたヴァイオリンの新星、マリア・ドゥエニャスの最新盤はグスターボ・ドゥダメル指揮シモン・ボリバル交響楽団と2025年8月、ロンドンでセッション録音した『ハイフェッツへのオマージュ』(ドイツ・グラモフォン)。ラロ“スペイン交響曲”とコルンゴルト“ヴァイオリン協奏曲”を組み合わせ、余白に小品4曲を収めた。いくつかの楽曲は20世紀のヴァイオリンの巨匠、ヤッシャ・ハイフェッツ(1901~1987)の〈十八番(おはこ)〉でもあり、巨匠が生前使用(1922~50年)した1731年製ストラディヴァリウスの名器(The “Heifetz, Piel”=ハイフェッツ・ピール=現在は匿名の個人が所有)を弾いている。
――ハイフェッツ自身の1951年録音(ウィリアム・スタインバーグ指揮RCAビクター交響楽団と共演)では初演者サラサーテ以来の慣習に従い、“スペイン交響曲”の第3楽章をカットしています。
「ラロの第3楽章は繰り返しが多い上に技術の難易度が高く、省く弾き手が多かったのは事実です。もちろん、私はカットせずに全曲を録音しました。1951年の時点では“スペイン交響曲”とコルンゴルトのカップリングは非常に珍しく、ハイフェッツにとっても大きな挑戦だったはずです。私はハイフェッツが2曲に流れる人間的な価値観(ヒューマンヴァリュー)の部分に目を向けたのではないかと想像しました。両者は何らかの〈優雅さ〉を共有します。コルンゴルトはウィーンの作曲家ですからエレガントでチャーミング、ラロもスペインに題材を求めただけで、実際はフランスの作曲家であることを忘れてはなりません」
――ドゥダメルとシモン・ボリバル響を指名したのは?
「ラロを録音すると決めた時、すぐにドゥダメルが頭に浮かびました。これまでの共演を通じて音楽的にも人間的にもお互いを本当に深く理解し、わざわざ言葉を交わさなくても、すべてがとてもスムーズに機能します。このアルバムに自分のルーツであるスペインへのオマージュもこめたいと願い、私と似たような文化の背景を持つドゥダメルと組めば、音楽にさらなる魂とインスピレーションをもたらしてくれるだろうと考えました。人間味にあふれた特別な共同作業の感触を保つために彼が率いる若者たち、シモン・ボリバル響が加われば、アルバムによりパーソナルな側面が加わるとも思いました。メンバー全員が音楽を心から愛し、ルーティンは一切なく、全力を尽くしてくれたのです」
