生誕150周年。巨匠ブルーノ・ワルター初期の全貌が、極めて状態の良い盤を使用し、最新の緻密な修復で甦る!

 今日から遡ること150年前、当時のドイツ帝国の首都ベルリンにてブルーノ・ワルターは生を受けた。彼が最初に指揮棒を握って群衆の前に現れたのは1894年、ドイツ西方の都市ケルンの市立歌劇場でのことだった。

 ワルターの録音について触れるとき、多くの場合はソニー、当時のCBCでの録音の数々をやはり思い浮かべる。コロンビア交響楽団とのステレオ録音による様々な記録は今日のクラシック演奏の中でも不動の地位を築いている。

 一方でこうした録音の多くはナチスの迫害を受け、米国へとその拠点を移して以降の時期に集中している。そのためそれ以前のヨーロッパでの彼の活動は戦後のそれと比して多く知られているとは言い難い。

BRUNO WALTER 『ブルーノ・ワルター・ワーナークラシックス・リマスター全集』 Warner Classics(2026)

 先般、ワーナー・クラシックよりブルーノ・ワルターのHMVと英国コロンビア・グラフォフォンでの記録を集めたボックス・セットの発売を発表した。ここに収められる20枚のCDに刻まれた音楽はいずれも、1924年から1939年までのSPレコード時代の響きを捉えている。

 中でも注目すべきは一連のグスタフ・マーラー録音だろう。1896年にハンブルク劇場に赴任した際、当時の音楽監督であったマーラーの下で活動を共にし、親交を深めたワルターにとって彼の作品を演奏することに特別な意味を見出していたことは言うまでもない。特にその後期作品である交響曲“大地の歌”と交響曲第9番の初演を、マーラーの没後に指揮者であった彼に代わってタクトを取ったことは象徴的だ。本ボックスではこうした関係性から例外的に1949年録音によるマーラーの“亡き子をしのぶ歌”が収録されている。

 こうした録音芸術の初期を彩ったワルターだったが1933年にドイツでナチスが政権を取ると、その血統を理由に極めて暴力的な妨害活動が彼を襲った。やがて米国へと逃れた彼はこの地でコロンビアとの録音を開始、その後の伝説的な数々の名録音を築き上げる日々を過ごすこととなる。